アート業界の未来に栄光あれ
大阪中之島芸術センターで開催された「アートとキャリアを考える」という対談トークイベントに行ってきた。
友人がたまたま見つけて、面白そうだよと誘ってくれたのだ。
お隣の大阪中之島美術館にはよく行くものの、こちらの芸術センターは初めてで、ホームページを見るとなかなか面白そうなことが色々とありそう。
今回の対談も非常に興味深かった。
因みにカフェもおしゃれで美味しかった。
社会人になって通った通信制大学で学芸員資格コースを取った時に、なんとなく学芸員というのはブラックな労働環境な雰囲気を感じていた。
その後になんとなく求人を見た時も、求人数が非常に少ないばかりか、求められているものが高い割には給与面でも、安定性でも(2年のみの契約など)厳しく、会社勤めをしている当時としては、会社を辞めてまで就きたいポストとはあまり思えなかったことを記憶している。
今回の対談で、学芸員をはじめとしたアート業界の具体的な労働環境の話となって、改めて悪い意味ですごい環境だなと思った。
今回のイベントの趣旨としては、やりがい搾取になりがちなアート業界での労働環境について語るというものだったので、アート関連の仕事のいい面というよりも、悪い面が話題となっていたためかもしれないが。
それでも愛知県で開催された国際芸術祭「あいち2022」のプロジェクトでは三六協定が適応されず、年間の残業時間が900時間、1000時間超えていたと聞けば、人材が定着しないというのも不思議ではない。
やりがい搾取になりやすいというのは、予算が取りにくいということもあるのだろう。
そして予算が取りにくいというのは、アート関連事業に関して、日本では一定の理解が得られていないからと考えられるのかもしれない。
アートが好きな人からすると、アートの重要性が分かっている。でも好きではない人、アートに興味がない人にその重要性を伝えるのは非常に難しい。
お金に換算できるものではないし、文化を継承・形成していくことの意義を明確に言語化するのは、私はなかなかできない気がする。
芸術祭に経済効果が見込めるとしても、スポーツの大会と比べてしまうと分かりやすさが格段と落ちる。例えばヴェネツィアビエンナーレは国際的に非常に有名だけれども、オリンピックに比べると国内における認知度は下がる。知っていたとしても、オリンピックには熱狂しやすいがヴェネツィアビエンナーレに大衆が注目するというのは、ちょっと想像しにくい。
この分かりにくさがアートへの支持を得にくい、ひいては予算が取りにくいということに繋がる気がする。
まずは、アートの意義や、なぜ文化が廃れてはいけないのかといったことを、自分自身できちんと相手が納得できるような解釈を披露できるようになりたい。癒しとか、心が豊かになるだとか、そういう抽象的な表現ではなく、だ。
自分の発信力が大きいわけではないけれども、一人のアートに携わる者として、出発点はそこかなと思うからだ。