【レポート】初めて遠征して、本屋さん主催のイベントに出店する話(準備編)
先月、サイボウズ式ブックスと散歩社共催のブックマーケットに出店させていただいたところ、とても楽しく、「もし参加させていただける出店イベントがあれば、これからもどんどん参加していきたい」と書いたのだが、ありがたいことに、さっそく機会をいただいた。
それは、11月9日(土)、10日(日)の2日間、高知蔦屋書店と高知県長岡郡大豊町が、廃校を活かした書店による「地域密着&コミュニティ形成」を目指して共催される、『出張高知 蔦屋書店 in おおとよ小学校』。
より詳細な出店情報はこちら。
東京の出版社なので、「なぜに高知!?」と思われた方もいらっしゃるのではないだろうか。
そもそも倉貫書房は、お客さまのパートナーとなり事業開発や業務改善をソフトウェアで支援する「納品のない受託開発」を主業とする株式会社ソニックガーデンという会社の出版事業のレーベル名なのだが、副社長のフジワラさん(バリバリのプログラマ)と、長らく生活支援サービスに携っていた私は、まちや福祉についての関心が強いという共通点があり、度々、話をしていた。
そして、今回、フジワラさんから「高知の廃校でなにかやりませんか?」という話が。詳細も聞かず、「やりましょう!」と返事をしたのである。笑
まず初めに、「大豊町ってどこ?」から始まり、フジワラさんと地図を見ていると、なんと、四国の真ん中で、どの県の中心地からも車で1時間程度で来られる距離だった。
そして、50㎡以上ある教室をまるまる1室使わせてもらえるらしい。
となると、どちらからともなく発言し、即合意となったのは、、、
『せっかく使わせていただける教室1室を倉貫書房だけで使うのはもったいない。四国の真ん中という立地を活かし、本を愛する四国の方々と一緒に、本を楽しむ空間をつくれないだろうか。』
「ならば、ご相談できるかもしれない!」と思いつき、即、先月のブックマーケットで出会った、徳島県・美馬市の泊まれる本屋「まるとしかく」さんに、ご連絡したところ、すぐに四国全域のお声かけリストを作成いただき、1週間後には、素敵な方々に集まっていただくことができた。
私たちの教室の他は、コーヒーやビール、フードなどが出店されるので、食いしん坊の私はとても楽しみにしている。
また、高知蔦屋書店さんだけでなく、先月のブックマーケットに出店されていたライツ社さんが「この人が選ぶ本は面白い!」と思う書店員さんとして紹介されておられた「TSUTAYA中万々店の山中さん」のTSUTAYA中万々店も出店されるので、山中さんがいらっしゃったら嬉しいな、と密かに思っている。
さて、今回のイベント出店にあたり、私には気になっていることがあった。
今年に入って、四国の本に関する話題を目にすることが多い気がする、ということだ。
高知市土佐山を拠点とし、地域課題を資源と捉え、学びの場を生み出す関係人口創出エンジン「土佐山アカデミー」も本を使ったワークショップや著者を迎えたライティング講座・イベントをしているし、今年から文学フリマ香川もスタートした。
そして、今回、土地勘のない我々に代わり、素敵な本屋さん・つくり手さんにお声かけいただき、良いイベントになるよう全面協力いただいている徳島県・美馬市の泊まれる本屋「まるとしかく」さんは、鳥羽和久さん、夏葉社・島田潤一郎さんと秋月圓・秋峰善、といった話題の著者を迎えたイベントを開催されている。
オンラインではよく見かけていたものの、行って見てみたいという欲求があった。そして、何より、こんなに動いてくださっている「まるとしかく」さんには直接お礼が言いたい。
東京からだと、高松空港まで行ってレンタカー(約1時間)が最短ルートだと思うのだが、急ぎの仕事もあったため、今回は、新神戸まで新幹線、新神戸から徳島まで高速バス、徳島から穴吹までローカル線という陸路を選択した。機密情報を取り扱わない細かな作業が積んでいる時は、逃げ場がなく捗るので、陸路も好きなのである。
穴吹駅の周りは山で絶景。おー、と思っていると駅員さんに切符を渡すよう、声をかけられる。改札でなく、ホームで切符を渡すパターンだ。
「まるとしかく」に行く前に、お薦めいただいていた「うだつの町並み」に行く予定にしていたのだが、到着したのが16時だったので徒歩でなく、タクシーで10分弱とショートカット。美しい吉野川を見ていたかと思うと、意外にも(失礼)、大手チェーン店が並ぶ大通りを過ぎ、あっという間に到着。
まずは、入口付近にある築150年の古民家を改装し、建築設計事務所・雑貨店・古着屋・書店・カフェなどの機能を備えた複合施設「みんなの複合文化市庭 うだつ上がる」へ。
家具と古本があると案内され、2階へ。
本にばかり気を取られていたが、「graf」と書かれているのを見て、まさかと思ったら、10年ほどスタジオの近くにも住んでいたほど大阪出身の私には馴染み深い、あのクリエイティブユニットgrafの徳島の拠点だった。
ここには、素敵な家具に加え、兵庫県川西市の予約制の古書店「BOOKS+コトバノイエ」で選書された古本が置かれてあり、購入することができる。
いくつか気になる本があったのだが、まだ「まるとしかく」にもたどり着いていないので、後ろ髪を惹かれながら、1階へ。1階も雑貨や洋服など素敵なものが売っているのだが、「Phil Books」という本屋もある。
悩みに悩んでZINEを購入。
結局、「うだつ上がる」には1時間ほど滞在し、外に出ると、いい感じに夕暮れだった。
いい気分で歩いていると、「うだつが上がらない」の由来に出くわす。
このエリアでは、11/4に、「自分たちの日常は自分たちで面白くする」をモットーに「うだつのあがる古本市」も開催されるらしく、素敵な出店者さんたちが集まっているので、時期が重なれば行ってみたかった。
ぐるりと散歩して、特産のゆずドリンクで休憩後、のんびり歩いて、いよいよ「まるとしかく」へ。
日没間近だったこともあり、どこを見てもエモい。
思ったより、かなり住宅地で、子どもたちの声を聞きながら歩き進むと、「まるとしかく」が現れた。
「まるとしかく」に入ると、店主と猫ちゃんが迎えてくれた。
この猫ちゃんが賢く、自分で「外に出たいよー」と意思表示し、気が済めば、きちんと帰ってくる。かわいい。
お店は、またまた思っていたより広く、本の数も種類も多く感じられた。
翌日は高松にも行くつもりだったので、実は、ここで買うのは2冊くらいにしようと見積もっていたのだが、そんなことは全く無理で、すぐに7冊以上気になり、店主にも相談しつつ、なんとか4冊に絞れた頃には、2時間ほど経っていた。
「まるとしかく」は泊まれる本屋で、キッチンも付いているので、自炊して、朝まで読書に没頭することもできる。宿泊する個室には本を読みやすいチェアも置かれてあり、座りながら、布団に寝ころびながら、好きなスタイルで本を読める。
宿泊するお客さんには、心配になるほど部屋から出てこない人もいるらしい。今回泊まってみて、その気持ちもよくわかった。
個室だけでなく、ソファのあるリビングもあるので、キッチンに置いてくれている飲み物を飲みながら、広々と本を読むこともできる。
置いてある家具やアート作品も素敵だ。Wi-Fiも完備なので、数泊して、本を使ったチーム合宿や、本好きの友人たちと合宿に来るのも面白そうだと思う。
が、今回は、店主の好意で、地元の居酒屋に連れていってもらった。
私はお酒が飲めないのだが、つまみが大好きで酒処にも一人で行くことあるくらいなので、嬉しかった。大通りのマクドナルドのそばにある居酒屋へ到着。前に来られた方の言葉を借りると、「マックもあるし都会」である。
徳島の居酒屋は初めてだ。つきだしから、何かわからないがめちゃくちゃ美味いものが出てくる。聞きそびれたが、あれはなんだったんだろう。
私は、食に集中すると写真を撮るという概念を忘れ、このお店で食べたものの写真は1枚もないので、今や思い出す術はない。笑
主に黒板に書いてあるメニューを注文。さすが魚がおいしくて、刺身は分厚い。多分、これまで食べた中で一番分厚い。
初めて食べたものは、大根の唐揚げ。
出汁が沁みた大根が揚げられていて美味い。
大将おすすめのカツオのたたき。
これも普通のカツオのたたきより優しい味で美味い。
お店や宿泊棟にあるアートの話や、本屋の話など、いろんな話がとても楽しく、食べたものも全部美味かった。
本屋に帰って、風呂に入り、いくつかの雑務を片付け、東京の友人たちに説明なしに本屋の写真を送り付けて寝る。
私の他にも宿泊客はいたのだが、泊まれる本屋さんに泊まりに来ているという共通点もあるので快適に過ごせた。
翌朝。
いつもより早起きなのに、気持ちの良い光で、すっきりと目覚める。
広間のソファでくつろぎながら、高松でのランチは何にするか、限られた時間で本にまつわる場所にどれだけ行けるか、目星を付ける。
そして、名残惜しくも、「まるとしかく」を後にして高松。
昼前には、高松に到着した。
あいにくの雨天だったが、ほぼ商店街だったので苦ではなかった。
まずは、初めての讃岐うどん。選んだのは、「さか枝うどん南新町店」。
うどんだから腹にたまらないだろうと思い、サイドメニューを付けすぎた感は否めない。
食べ過ぎたと思いながら、「本屋ルヌガンガ」。
なるほど噂どおりのいい本屋さん。こちらも思ったより広い。
ハン・ガンを見つけて、すぐ手に取ってしまったが、結局1時間近くお店を何周も回って2冊。カバーをかけてもらったが、控えめなエンボス加工が良い。
最近、古本屋さんも気になりはじめたので、「古本YOMS」。お店は広くないものの、見るたび、「あれ?これもあったっけ?」と思い、ぐるぐるして、また2冊。
この2軒の情報量が多かったのふるで、近所のカフェでちょっとだけ休憩。
まだお腹がいっぱいなのに、うっかりケーキも頼んでしまう。
「うーん。たしかに四国の本界隈面白いぞー」と思いながら、時計を見ると、残る時間はもうあと1軒分くらい。焦って、一人、脳内会議をする。
違うタイプの本屋さんを見るなら宮脇書店、でも、東京の友人から薦められたところも気になる。
結局、選んだのは、友人に薦められていた「珈琲と本と音楽 半空」。
タイミング良く1席だけ空いたところに座れたのだが、土曜の昼なのに、本好きでいっぱいで、お客さんが帰ると、新しいお客さんが来て、常時ほぼ満席。
偶然にも、BGMは、新代田のライブハウスFEVERで開催されたブクサムのライブで見て、前日に「まるとしかく」の店主との話題に挙がった曽我部恵一。目の前には、これも「まるとしかく」の店主との話題に挙がった柴田元幸の翻訳。
お客さんの多さにインスタ映え狙いかと思ったが、写真を撮っている人は少なく、集中して本が読めたのが意外だった。
読みかけの本が面白くて、あとちょっとだけ、あとちょっとだけ、と引っ張り、店を出たのは、帰りの電車に間に合うギリギリの時間。
お祭りに気を取られつつ、商店街を速足で駆け抜け、なんとか岡山行きの電車に間に合った。
1泊2日だったけど濃厚で楽しかったなぁ、などと思っているうちに岡山に到着。
岡山には何度か来ており、まだお腹もいっぱいだったので、新幹線への乗り換えの構内で、数量限定のお寿司を買う。
あとはもう惰性で帰宅できるので、頭をからっぽにしてのんびりするか、と思うも、お寿司を食べた後、本屋ルヌガンガで買ったハン・ガンの『ギリシャの時間』が気になり、読み始めるのであった。
こうして、ほんの少しに過ぎないが、リアルに四国の本を愛する方々に触れてみて、11月の高知のイベントは多くの人に、本の楽しさをお伝えし、お集まりいただく出店者の皆様に喜ばれるものにしたい、と強く思うのであった。
つづく。