フェミニストの敵は「男」じゃない
酷い記事を読みました。
https://m.huffingtonpost.jp/amp/entry/story_jp_5e8ed79cc5b6458ae2a45fb5/?__twitter_impression=true
この記事です。
中身を私の目線で要約すると、
女の苦しみを知らない癖にフェミニストを名乗る男は気に食わない! だけど、男らしくなくて、弱くて、女が傷付けられることが嫌いで、男の加害性を自覚してて、罪悪感に苛まれていて、でもその苦しさを女に押し付けずにぬいぐるみに話して消化する“優しい”男は素敵だよね!
という記事です。違いますか? 私の解釈が間違っているのであればそれでいいのですが、とりあえず私の解釈で、私が感じた憤りを書き連ねていきたいと思います。
まず、私はこの記事の中で取り上げられている男性(大前粟生さん)に対して怒っているのではありません。むしろ私自身が男らしくない弱い男で、女性差別に反対し、男性性を嫌っているタイプの人間なのでむしろ共感できるくらいです。しかし、その男性にインタビューしているライターの方の上から目線が非常に気に食わないです。
まず冒頭の、
「僕はフェミニストですが、何か?」と、てらいもなく言ってしまえる男性に対する、ネガティブな気持ちがどうしても消えない。
「女性差別に苦しめられてきた当事者」は、文字通り女性だ。男性としてこの社会で生きてきたあなたは、私たちの苦しみの何を知っているというのか。
この感覚はまぁその通りだと思います。なので私は男女差別に反対する立場ですが、フェミニストを自称しません。以前フェミニストに関する記事を書いた際にも述べたことであり、私の意見とも合致します。
しかし、その後の話の展開がおかしい。
僕は加害者に対して全力でむかついているし、許せない。でも一方で、その男性が育ってきたのと同じ社会で、自分も『男性として』生きてきたという事実に直面してしまう。女性を傷つけるさまざまな出来事の根っこをたどっていけば、加害者と自分に共通してしまう部分があるのだろうか。そう考えると、心が痛くて仕方なかったんです
という、男性の独白。被害者に同情する善良な人間が、同時に加害者と自分を重ね合わせて自責の念に駆られているのです。これは男女問わずケアすべき感覚です。しかしこの記事ではそれをむしろ肯定的に取り上げています。
僕は20代ですが、周囲の同世代の男性と話していて少しずつ聞こえてくるようになったのは、フェミニズムに共感する気持ちがあるからこそ、僕や七森のような罪悪感を抱いてしまうという声です。(中略)ただ、そのつらさのケアを女性に、マジョリティーがマイノリティーの側に求めるのは違うと思いますね
すべての『しんどさ』が解決される必要はないのだと思います。ただ、こうして僕のように文字や文章にしたり、あるいは七森たちのようにぬいぐるみという存在に向かって語りかけたりすることで、少し楽になれるかもしれない。自分より弱い誰かにケアを強いたり、消費して安心したりしなくても、抱えている『しんどさ』を自分の体の外に出す方法はある。しのぐ方法はある。それを示したかったです
これは、「男性はマジョリティで強者だから、弱い女に苦しさを吐いてはいけない」という偏見に基づいています。このような自罰的・抑圧的な思考はフェミニストの側から「差別をする男が悪いのであって、差別をしてない貴方は自分を責めなくていいんだよ。男だって弱くていいし、誰かに弱音を吐いていいんだよ」と呪いを解いてあげる必要があります。(男性側から解くとフェミニスト嫌いのミソジニストに転ぶ可能性があるので)
私は、「男は如何に男らしくない男だとしても強者であり、女性差別の罪を負っており、反省しなくてはならない」という考えには与しません。原罪のようなものを男性にだけ被せるのは差別です。もし、女性を差別する男性が多かったとしても、それを男性一般の責任にするのは間違っています。それだけには、断固反対します。
例えば、白人は歴史的に黒人を差別し搾取してきました。だからと言って、白人は生まれた時から先祖代々の罪を背負い、黒人に対し罪悪感を抱かねばならないのですか?
例えば、日本人は戦時中アジア諸国を侵略した歴史がありますが、だからと言って、日本人は生まれた時から先祖代々の罪を背負い、外国人に会うたびに詫びなくてはならないのですか?
例えば、日本で犯罪を犯す在日外国人が多ければ、罪を犯していないその他の外国人までが偏見を受け入れ、罪を償うべきなのですか?
「一人が悪いことをしたから、一族郎党詫びるべき」なんて、そんなの近代国家ですることではありません。あくまで罪はそれを犯した人の責任で償うべきものであり、同じ属性というだけで連帯責任を背負わせてはなりません。
私は女性差別に反対します。「女が悪い」という無根拠で雑な物言いには明確に不快感を覚えますし、絶対に反対します。
しかし、それと同時に男性差別にも反対します。「男が悪い」という物言いで男性のみに原罪を背負わせると男女対立を生みます。実際には差別をしない男性もいれば差別的な女性もいます。あくまで、「差別する人が悪いのであって、男が悪いのではない」と言わないと、「男は男として生まれ育っただけで罪がある」なんて言われたら、男に残された選択肢は「うるせぇぞクソ女!」とフェミニストにキレるか、もしくは大前さんのように無害な加害者として死ぬまで罪悪感に苦しめられるかどちらかです。
私は、男がフェミニストを嫌うのも、男がフェミニストにいじめられるのも、どちらも見たくありません。
とりあえず、女性が男性を「加害者の割には無害でええな!」と上から目線で評するような記事は、甚だ不快でした。
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