春を待ちながら
12/23より箱根のポーラ美術館にて、年末年始の特別インスタレーション「春を待ちながら」が公開となりました。
この企画は今年夏頃から準備を進めました。外出に諸々規制のかかる昨今ではありますが、強い思いと願いを込めた作品が箱根にある、と思っていただけるだけでも嬉しいです。
写真と、作品のそばに添えたことばを掲載します。
「しあわせな犬」冬季 インスタレーション
春を待ちながら
2017年から、彫刻「しあわせな犬」をベースに期間限定でインスタレーションを制作してきました。屋外への設営は、近隣の自然への配慮、天候や太陽、風、虫、災害や安全への対策など…留意すべき点が多くあります。ただ頑丈に、壊れにくいものを作り続けるだけでは、膨大な廃棄物が出ます。なんとか「再利用したい」と保存しても、スペースには限界があります。回を重ねるうちに、廃棄物を増やしたくない、という思いだけではなく、根本から廃棄物を減らす方法を模索するようになりました。
先回2019年末年始の展示では、制作した100体のオブジェを台風被害への寄付をしてくださった方々に差し上げるというキャンペーンを企画しました。
前々回の展覧会とのコラボ「海のいろの記録」ではシンプルな構造で廃棄物を減らし、保管及び収納もなるべくコンパクトにしていく試みをしました。
今回の展示でも廃棄物を減らす工夫をしたほか、過去の制作物のリフォームによる再利用、新しく制作したものについては再利用しやすい形状であること、また、指定有害廃棄物を含まない環境に優しい染料を使用するなどの配慮をしています。
彫刻やインスタレーションを見てくださる方に、自由な気持ちになって欲しい。元気になって欲しい。その思いと、子どもの頃に野山を駆け回り、親しんできた愛おしい自然への気遣いを出来る限り両立させていきたい。例え全体から見ればごくささやかなことでも、制作者としてその意識を持ち続け、何らかの形で取り組みを続けたいと思っています。
2020年はコロナという脅威に、世界中が震えた年でした。今回の展示では、「しあわせな犬」たちが元気に笑いながら春を待っているイメージ。そして、長く暗い冬が続く北欧・フィンランドで太陽へ思いを馳せる光の象徴として飾られる「ヒンメリ」のイメージでオブジェを制作しました。
どうか笑って、何があっても元気でいることを何よりも大切に。長く暗い冬があるから、きっと春の光がより眩しく、美しく感じられるのだと私は思います。
2020年12月 アーティスト niŭ(にゅう)
館内より。犬たちは雪合戦。
3mの巨大なヒンメリのオブジェ。中の小さなヒンメリは風を受けてゆっくりまわります。
内側の小さなヒンメリは、1/6まで新年を寿ぐゴールド。それ以降はホワイトになります。
柔らか素材の犬たちのマフラー。長い方は全長3.6mもあります。指定有害物質を含まない環境にやさしいと言われる染料で染めました。
雪は遊具や屋外装飾のエキスパート、腕利きの職人さんたちが作ってくれています。少し溶けかけた雪の表現、見事です。
本展示は箱根のポーラ美術館の彫刻「しあわせな犬」とその周りに設営。館内チケットカウンター横の大きな窓と、遊歩道への外周から見ることができます。2020年12/23〜2021年2/1まで。