恋した彫像
おそらくそれは
永遠が歩み寄る
彫刻である
幾度も陽が昇り
いくつもの月が落ち
数限りない星が巡る
冬の肌を纏う
大理石の裸体は
蠱惑の丸みの
双丘を永遠に保つ故に
亡国の王は
その白い腕に
抱かれたまま
老い朽ち果てた
恍惚の頬には
まだ仄かに熱があるままに
燃えていた乙女の瞳から
光が失われていく
恋人を失った彫像は
まるで
呪われた踊り子の影のように
柔らかに丸い形の
両腕の二の腕あたりに
まだ艶が光っている
諦めにも弛緩しない
若い腿の白さと
瑞々しさが
いまにも動き出すように
朽ちた神殿に
乙女の彫像が立っている
己の裸の腰を抱いた姿で
神の後ろを向いている