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放たれることなく


放たれなかった
槌音が消えたころ
主のない楼閣に
烏が止る

この薄れていく痛み
冬の訪れと共に
魂たちを眠らせるもの

例えまた虚無に落ち
凍えた土を噛みしめても
確かにそこに灯るもの

放たれることなく
ゆっくりと明滅しながら
糸杉の梢に宿る
青い照明