小さな小さな自己肯定感(違法ですけど)
テレビで某芸人二人が「ネットにテレビ番組のキャプチャ画像を載せているヤツは、関係者ヅラしている」、「サンプリングに命賭けている」、「自己肯定感の最下層」と言っていたと聞いて、びっくり仰天。
(あくまでテレビ画像のキャプチャは違法、よくないよ、という前提でこのテキストを書いています)
X(ツイッター)で「自己肯定感の最下層」で検索すると、今までテレビ番組キャプをやっていて落ち込んでいる人がけっこういたり、一方で「もともと違法なことをやっていたのにそれを指摘されたら落ち込むなんてメンタル弱すぎる」と書いている人もいた。
しかしX(ツイッター)を観て思ったのは、「キャプ画像を張り付けて番組感想をネットに投稿し、なおかつ『自己肯定感の最下層』と言われて落ち込んでいる人」は、かなり純粋な、無邪気な人なんじゃないかと思う。
本気で「面白い番組を広めたいから」と思っている人は案外多いんじゃないですかね(何度も言っときますけど違法は違法です)。
私は「違法だ」と思いつつも、ユーチューブにあがっているテレビ番組の切り取り動画をついつい観てしまうんですが、かなり編集に手間かけてますよね。
ラジオの「くだり」をまるまるアップしているような人もいるんですが、全語りにテロップを入れたりして。
相当な手間ですよ(自動で音声を拾って文字化してくれるソフトがあるのかもしれないが、それにしても手間は手間でしょう)。
どうなんだろうなー、再生回数目当ての人も確かにいるのかもしれないけど、やっぱり「おもしろ」を他人と共有したいとか、このくだりが面白いからぜひ見てほしいとか、念入りに編集、サンプリングしている動画はそういう気持ちの方が強いと思います(と、私が「金目当て」のみの動画にだまされている可能性もあるが)。
とくにキャプ画像に関しては、(繰り返すが違法です)「そのくだりだけを観て満足」で済んでしまうことより、番組の宣伝にひと役買っている方が大きいことは否定できない。番組では「それでもなお……」ということだと思うのだが、私はこの「自己肯定感の最下層」発言は相当問題だと思ってますね。
でも、それと同時に、忘れ去られていくかもしれないとは思う。
世論にあまり期待はしてません。
今回は「キャプチャは違法だから」という観点から「キャプチャをする人」を叩きのめしたわけですけど、この論法だと、コミケとかで売られているエロパロ同人誌とかもぜんぶ「自己肯定感の最下層」ってことになりますよね。
(それが理解できない人は、もうこのテキストは読まないでいいです。)
エロパロ同人に関しては、40年間ぐらいの議論が積みあがってます。
「エロパロ同人を出すヤツはドロボーだ」と断言していたマンガ評論家もいたし、エロパロ擁護の論陣を張っている人も大勢いる。
マンガ家でも「自作のエロパロ」に不快感をあらわにしている人もいる(していない人もいる)。
特定のマンガやアニメのファンで、エロパロが気に入らない人もいるでしょう。
エロパロの場合は「公式のお目こぼし」が大前提で、確か「エヴァ」のガイドラインが変わったので、綾波のエロ同人を何十年も続けてきた人がキャラクターをちょっと変えた、なんてことも起こりました。
こういうことはテレビのキャプチャ画像や、ラジオの内容を一言一句、書き起こすケースとはちょっと違うのだが、「元ネタがある」という点では同じだと思います。
しかしエロパロ同人において、テレビの深夜番組で、だれだろうな、今、影響力のある人。だれでもいいけど、ジャンプとかヤンマガとかに連載している超人気マンガ家が、
「エロパロは自己肯定感の最下層ですよね」
って言ったら、とんでもない議論が巻き起こると思うんですよね。
「キャプチャ動画は違法だから、ブッ叩いても影響はないだろう」って根性、いかにも(その番組の)テレビマンっぽい発想だな、と思ってしまいました、はい。
永野は(あ、「某芸人」って書いておいて結局名前を出しちゃった)とにかくお笑いファンの批評とか「自分を出してくるところ」が大嫌いみたいで、別の番組でも「はがき職人が『自分たちがラジオをつくっている』みたいな感じを出しているところが嫌い」とか、さんざん言ってましたが、意味がぜんぜんわからないですね。
そもそも、ふだん「私ははがき職人です」って看板ぶら下げている人に会わないし、ラジオのコーナーにはがき(メール)を送ってくる人が、「おれたちでこの番組はもっているんだ」って感じを出してくる、ってよくわかんないですね。どうやったらそういうのが出るんですか? メールのはしっこにでも書いておくわけ? いわゆる「ふつおた」で送られてくるの?
ンなわけないと思うんだけど。
サンプリングの問題もむずかしいんですよ。高名なアーティストとか、超人気のファッションデザイナーがパクリに近いサンプリングをしても、パクられた側も注目されるので何十年も放置されていたのに、なんらかのバランスが崩れたら突然、訴訟問題になったり。
「テレビ画像のキャプチャ」でテレビ界にどれだけの損失があるかわかりませんけど、ファッション業界だと何十億単位の話になってしまい、結局はその「何十億単位」の問題も、「訴える側」のさじ加減だったりするらしいので。
私、もう昔の話なので徹底追及する気はないんですが、中田のあっちゃんの「パーフェクトヒューマン」って完全に「江南スタイル」のパクリだと思うんですよね。
しかも「パーフェクトヒューマン」って歌詞が「おれが一番だ!」って内容なんですよ。あれだけあからさまにパクっておいて、「おれが一番、おれがオリジナル、おれを崇めよ」っていう歌詞は、相当問題だと思ってますけど、永野はそういうのはどうでもいいんですかね。
ちなみにアップアップガールズ(仮)の「リスペクトーキョー」って曲も「江南スタイル」のパクリというか本歌取りなんですが、こっちは「江南」に対応させて「トーキョー」って言っているわけで、かなり「江南スタイルを意識している」ってことは明確に打ち出しているんですよね。
キャプチャ動画をアップしてた人が落ち込んでいてメンタル弱すぎ、とか書いている人がいたけど、本当に無邪気に番組の面白さを伝えたい、と思ってやっていたら、そりゃサンプリングは真剣にやるし、「お目こぼししてもらってる」って意識もあるからずばり「自己肯定感の最下層」って言われたら落ち込んで当然でしょ。
くるまはどうだかわかりませんが、永野は自分が立場的に、「テレビを見ている側」の人間よりもずっと上だ、ということを理解していませんね。
被害者意識しかない。
というか、芸人であんなに被害者意識のある人って永野だけでしょ。
キャプチャは違法だから言いたい放題で済んでいるけど、永野やくるまは、たとえばド貧乏で決してかわいいとも言えない少女が、少ない小遣いをやりくりして「自分なりのおしゃれ」をしていることに対しても「自己肯定感の最下層だね」って言うんですかね。
でも要はそういうことでしょ。
何度も言うけどキャプチャは違法ですよ。だからよくないです。
でも「一般人が自分自身の個性を出すこと」なんて本当に小さなところにしかないんですよ。
とくに永野なんですけど、おそらく「視聴者の自意識が肥大化している」っていう被害者意識をずーっと抱えている人なんだけど、
おまえが相手にしているのはかなりタチの悪い客にすぎず、大半の人たちは、フルタイムで働いて、夜中に家にたどりついて、やっとお笑い番組が観られる、やっとお笑いライブに行ける、って思ってやってんだよ。
まあ昔からテレビとかでもよくあった「匿名掲示板」の悪口を今さら言ってもしょうがないと思って、永野にしても番組スタッフにしてもキャプチャ画像について「いいところに目を付けた」くらいにしか思っていないんだろうけど、自分たちが気づいてないところでパンドラの箱を開けましたね、とは個人的には思ってますね。
「客側の創造性」を送り手が奪ったらどういうことになるかというと、だれもアホらしくてエンタメなんか見なくなるよ、ってこと。うざいくらい繰り返し言うけど、あくまで合法の範囲でですよ。
でも永野は「合法」なはがき職人まで批判しているわけだから、くるまは知らないけど永野の批判の意図は明白でしょ。
「素人は黙っておれらを観て笑ってりゃいいんだよ」
って言いたいんですよね。
おしまい