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書評『ミニスターリン列伝』
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本書はパブリブから2024年に出版された。著者は木村香織氏である。
構成は8章となっている。
第1章 ハンガリー
第2章 ブルガリア
第3章 チェコスロバキア
第4章 ポーランド
第5章 ルーマニア
第6章 東ドイツ
第7章 アルバニア
第8章 ユーゴスラビア
スターリンは歴史好きではなくても一度は聞いたことがあるソ連の指導者だ。第二次世界大戦の勝利に貢献する一方、国内外問わず粛清しまくったことはよくよく知られている。
第二次世界大戦後、スターリンは国際社会の秩序を形作った、特に東欧で。東欧ではスターリンの息がかかった指導者が生まれた。そして、スターリンと同様に、共産党体制に歯向かった、もしくは歯向かう可能性のある人を徹底的に粛清した。もちろん無実の人も含めて(むしろ無実の人が大半だったのだが)。
このような東欧の指導者を俗に「ミニスターリン」と呼ばれている。しかし、ミニスターリン個々の指導者に焦点を当てた本はあるようでなかった。
『ミニスターリン列伝』は指導者ごとに解説する。そして、コラムのような形で各国にあった収容所や共産党の学校も紹介。ようはかなりマニアックな本だ。
また、白黒とはいえ写真が豊富なこともうれしい。興味深い点は収容所やモニュメントは著者による写真があること。ようするに、実際に著者自らが訪れており、私も「行ってみたいな」と思った。欲を言えば、スポットごとにアクセス方法や住所なども明記してほしかった。
本を読むと、ユダヤ人迫害、チトー主義者を利用した粛清など、共産国共通の事柄があることに気づく。そして、人命軽視のサイクルが一旦回ると、雪だるまのようにだんだん大きくなる恐怖を感じた。
また、不思議なことにスターリンが死んだ後、ミニスターリンの何人かは病死している。これは単なる偶然なのだろうか。これは私の想像だが、ミニスターリンもスターリンを恐れ、そしてスターリン後の社会の変化を想像した際、体に変調をきたしたのだろう。
最後に地味だが、現在のウクライナ紛争の遠因にもなっている1990年代の指導者にスポットを当てた本も読んでみたい。いずれにせよ、紅いマニアックな東欧をこの本で楽しんで頂きたい。
タイトル:『ミニスターリン列伝』
著者:木村香織
出版年:2024年
出版社:パブリブ
税込価格:2,860円