上半期ベスト・アルバム Top 100 Album : First half of 2023

2023年8月8日 19:01

「遠泳音楽」(Angelic Post-Shoegaze)をテーマにSleep like a pillowの鴉鷺さんと始動させたレーベル〈Siren for Charlotte〉もリリース第2弾を公開し、既に下半期も1ヶ月以上が経過、順調に時間が進んでいく中で、扱いに困っていたのが長年執筆できていない、私の10年来のライフワークこと年間（上半期）ベスト記事。すこぶる良くない体調的にも、仕事のキャパ的に限界でここ数年は書けず、「徹夜のハイテンションで長文を書かないならベスト記事は公開しない」という昔からの極めて個人的なポリシーも相まって、何年も仕上げられないでいたのですが、上半期はかつてない2000枚もの音源（大部分はバンドキャンプのデジタルではありますが）を購入したこともあり、さすがに紹介しないのも勿体なく、コメントは後日気分で追記ということで、4年ぶりの上半期ベストを100枚ほど、購入物中心に久々にリアルタイムで紹介することを決めました。

全てフル・アルバム。大部分はレコードやデジタルで買いました。「供養」と題して公開した昨年のベストや21年度ベストなどと同様、10年来の僕のエクスペリメンタル、アヴァンギャルドな音楽趣味に、ハイパーポップ以降の異常系音源が混ざったテイストになりました。

上半期のアンダーグラウンドな音楽の流れを軽く追ってみると、今年度も国内外のネットレーベルの勢いが尋常ではなく、昨年に引き続く形での〈Lost Frog Productions〉勢の破格なリリース群（毎度DLコードを100枚以上無料配布という太っ腹ぶり）、年明け早々規格外の話題を呼んだ衿『Animacy』、故やす子『ぼいすろいど結月ゆかり激情』などを始めとして、エクスペリメンタルなエッジに振り切れた邦人作家の作品をほぼ毎週のように送り出し、明らかに全盛期を更新しているYzox氏主宰の〈OMOIDE LABEL〉の動きが際立っていましたが、これは2023年のインターネットの聴衆には言うまでもないかもしれません。

Maltine Records、imoutoid、tofubeats、パソコン音楽クラブ、長谷川白紙といった、インターネット・レーベル以降のインディペンデントな音楽の系譜が巻いてきた種が、2019年（Hyperpopの誕生）以降、大きく発芽。quoree、Kabanagu、Telematic Visionsを始めとした先鋭的な面々を揃えつつ、明らかに全盛期をさらに更新している古株・Maltine Records、そして、それらに大きく刺激を受けた若手主導のトラックメイカー文化の興隆。これらの事実は多くのリスナーの間で共通認識にもなりつつありますが、今や、日本のアンダーグラウンドな音楽シーンは、インターネット以降の展開でかつてない活気を迎えています。

ちなみに今年は、東アフリカ版〈PAN〉と個人的に呼んできたウガンダのフェスティバル/レーベル〈Nyege Nyege Tapes〉とそのダンス部門的サブレーベル〈Hakuna Kulala〉のバックカタログが全作品name your priceになるという、〈Sacred Bones〉〈1080p〉〈Sahel Sounds〉〈Mississippi Records〉投げ銭化の時の衝撃にも匹敵する鮮烈かつ慈善事業的なイベントが発生したことも記憶に新しい。

さて、今回のベスト作品と被りもありますが、今年の流れを追う上で、上半期に勢いを感じたベストレーベルも幾つか挙げておきますので、是非チェックしてみてください。

・OMOIDE LABEL
・Lost Frog Productions
・KAOMOZI
・AD 93
・Guruguru Brain
・Smalltown Supersound
・造園計画
・RVNG
・Music Website
・EM Records

それでは、上半期ベスト、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです（アルバムタイトルをクリックすると作品リンクに飛べるようになっています。）