夜間理学部という選択
どうも。fujiと申します。以前、「日本で唯一の夜間理学部から外部大学院へ進学して」という題で、大学院入試にフォーカスして大学生活を振り返りました。
多くの方に記事を見ていただき、思っていた以上の反応がありました。夜間学部という特性上、進学を不安に思う方も多いため、同じような悩みを抱えた新入生、在学生の力になれたら良いなと思い、筆を執った次第です。
はじめに
今回は、東京理科大学理学部第二部(夜間)での生活について私の経験を基に書いていきます。2部構成で、前半は私の大学生活について、後半はこの記事を書くにあたって行ったアンケートで他の卒業生の生活についても触れたいと思います。
少し説教臭い部分があるかもしれませんが、進路選択の助けになったら良いなと思っています。夜間であることを活かした例を挙げたつもりです。新入生の皆さんは、夜間学部ということを心配し過ぎずに自分の進路を描いていってください。
大学は様々な背景を持った人と関われる良い機会なので、危険ではない範囲で色々なことにチャレンジしてみてください。
[2022/03/22]よくある質問まとめを追記しました。
東京理科大学理学部第二部
本題に入る前に東京理科大学理学部第二部について触れておくと、
・国公立と同程度の学費で理学を学べる
・授業が夜間にあるため、昼間の時間を有効活用できる
このような場所であると言えます。参考:理科大の公式HP
個人的な感想
ここで、理学部第二部の新入生、在学生に聞いてみたいのですが、夜間学部進学に良い印象を持っているでしょうか。これはどのように学生生活を過ごせるかによって変わってくるとも思います。私自身も入学してすぐは「第一志望に落ちて、大学受験を頑張り切れなかった結果」という意味でコンプレックスではありました。しかし、この思いがあったからこそ、大学生活を死に物狂いで走り抜けたのかなと思います。プラスの思いでこれがしたい、あれがしたいという原動力も重要だと思いますが、より根底にあるコンプレックス(自分のマイナスな面)をバネにして前進することも大切だと思っています。
私が入学してすぐに見た知恵袋で「夜間学部というコンプレックスがなくならない」と相談されている卒業生の方がいました。実際に、私の同級生にも同様の理由で仮面浪人や転学部をする人もいました。
どのような選択をするにせよ、正解かどうかは自分で決めるものです。元プロゲーマーのはつめさんの発言を引用しますが、「その選択が正解になるように行動していくしかない」とも言えます。
進学理由
大学入試では他に日大理工などには受かっていましたが、理科大二部を選んだ理由は、「学費が安いこと」と「理科大であること」の2つでした。後者の理由には、実家から通える範囲にあること、ネームバリュー、授業内容などが含まれています。けっして裕福な家庭ではなかったにも関わらず、大手予備校で1年間浪人させてもらったため、親への負担を最小限にしたいという思いが強くありました。
東京での一人暮らしはお金がかかりすぎるため、1、2年次は実家から通っていました。1、2年次のアルバイトで初期費用分のお金を貯めて3、4年次はひとり暮らしでしたが、仕送りは月2万程度で、昼間に働いたお金と奨学金で学費と生活費を賄っていました。
夜間学部は、早起きをする必要もなく、夜型の私にとって最高の場所であったと言えます。
大学生活の話に入る前に、アンサイクロペディアの一文を引用しておきましょう。
私の大学生活について
前述していた通り、私は大学生活の前半を「実家から通い」、後半を「一人暮らし」をしていたので、新入生も参考になる部分が少なからずあると思っています。数学と理科の中高教員免許を取得しましたので、教職課程についても少し触れますが詳しく聞きたい場合は私のtwitterのDM(@torino_ph)に送った方がより詳しい内容を回答できるかもしれません。(就職のため、現在はtwitterアカウントを削除しています)
伝えたいのは、大学2年次が終わるまでに進学か就職かは決めておいた方が良いということです。教育実習と就職活動が被ってしまうので、学部卒で一般企業に就職しようと考えている人は教職課程は履修しない方が良いです。
私は教員免許を取得して外部大学院へ進学して、就職活動を現在しています。なので、進学を考えている人は教職課程を取っておくのもアリだと思っています。アカデミアに残れるかは博打なので、生きるための保険として持っておくと良いです。(100%ならないのに取るのは、教育実習先にも教職の先生にも失礼なので辞めましょう。)
(質問があったので追記)就活と教職の両立は一応可能ではありますが、圧倒的に時間が足らないのでオススメしないです。就職してから教員になるんだ!という人もいますが、相当の意志がないと続かないです。
1、2年次(実家暮らし)
私の大学生活(1、2年生次)の1日を円グラフで示しておきます。部活動は主に生物研究部での活動(動物への餌やり、健康記録)です。
1、2年次は、一般教養科目と関門科目の比重が高かったように思います。理科大生は教養科目を疎かにする人が多い印象があるのですが、かなり面白い授業が多いので自分の興味の赴くままに、昼間の授業も取ったりすると良いと思います。やはり興味を持てないと疎かになってしまいがちです。私は、歴史などを履修していました。(どこかのyoutubeで履修してはいけない授業1位に挙げられていましたが、授業内容は面白いですよ笑)
また、演習・実験科目では毎週レポートが出ていました。通学に片道3時間かかっていたので、すき間時間を見つけてレポートを行っていました。早めに大学に行って図書館で勉強をすることもありましたが、基本的には電車でPCを使ってレポートをこなしていました。
レポートの量は、理科大公式が実力主義とか言って広告にするくらいですから、確かに多いです。教職の課題(指導案や報告書)なども含めると、卒業時のレポートの量はこの広告の倍くらいはあるかなと思います。
ちなみに、使っていたPCはMicrosoftのSurface proでした。電車で作業をすることが多かったので、移動が多い方にはオススメできます。タブレットとして使い、電子ブックを読むときにも使いやすいです。
授業に関してもう少し言及しておきしょう。前回の記事で以下のように述べました。
教員側のサポートもありますが、友達と教え合ったり、図書館で黙々と勉強したりしても良いですね。私はどちらかというと黙々とやって、テスト前に友達と教え合ったりしてました。
後輩を見る限り、しっかりと授業を聞いていて過去問を解いていれば、単位を落とすことはないです。過去問は授業でくれる先生もいますし、学友会に所属したり、部活の先輩から貰ったりすると良いと思います。過去問を友人と解き合って解答集を作るだけで、テスト対策は十分だと思います。私はそれしかやってませんでした。
後述しますが、外部大学院受験を考えている場合は、授業だけでは試験範囲をカバーできない場合が多いので自分で勉強する習慣をつけておいて損はないです。
時間割
2部物理学科1年生の時間割に関しては以下のサイトにあるようなものが標準的ではないかと思います。これに教職科目が2個くらい追加されたのが私の時間割だったとイメージしてもらえると良いです。ほぼフルコマです。
毎年時間割は変わるので、自分の持っている履修の手引きを見て判断してください。
教職科目で印象的だったのは、初回の授業で「成績は基本的にSかAを取れ」と言われたことです。ただでさえ厳しい理科大の中で、教職課程を履修して、更に成績は1番上(もしくは2番目)を取れと言っているのですから、すごい世界だなあと思ったものです。結果的にそのように実行しました(GPA 3.17)が、成績にこだわりすぎる必要はないのかなと、今は思っています。
3、4年次(ひとり暮らし)
3、4年次は専門科目が重くなります。しかし、教職課程を取っていない人は、(単位を落としていなければ)3、4年次は空きコマがかなり増えて余裕が出てきて、遊べます。就職を考えている場合は、インターンに参加する人もいるでしょう。
教職課程履修者は、教育実習事前指導や指導法などの「実際に自分で授業を行う」授業が増えてくるので圧倒的に時間が足らなくなります。なので、私はひとり暮らしをしました。1日の流れはこのような感じです。
通学時間が1時間になったことで、1、2年次よりも時間に余裕ができましたね。相変わらず授業はフルで埋まっていましたが、今までの積み重ねがあるので実験レポートはパパっと作れるようになってました。
また、仕事は他大学の研究室で技術補助員をやっていました。友人の中にも同じような仕事をしていた人がいたので、大学内で仕事をするのは、夜間学部ではそれなりにメジャーな仕事だと感じます。
やはり、夜間学部であることを活かすには昼間の時間をいかに有効活用できるかが重要です。私は研究職に就きたかったため、このような仕事を選択しましたが、自分の就職先を意識してアルバイトを選ぶと良いと思います。ベンチャー企業では長期インターンを募集しているところが多いので、企業の内部から情報を得ることができれば就活をかなり有利に進められます。
人によって金銭状況は異なるので、思うように行動するのが難しい人もいるとは思いますが、現在考えうる選択肢の中で最善のものを選んで、その後の行動でそれを正解にしていくと良いと思います。
授業に関しても言及しておきましょう。数学の教員免許のために数学科の必修授業(代数学、幾何学、統計学)を履修したり、相対論や昼間部の光学の授業を取ったりしていました。
もともと数学が好きだったこともあり、数学科の授業は証明ばっかりでワクワクしました。幾何学と相対論は繋がりが深いので、同時に学習することで理解が深まりました。曲がった空間のベクトルを平行移動するだけで授業の大半をかけていたのは驚きです。
また、京都大学の入試説明会に参加して量子光学に対するモチベーションが高かったので光学を履修しました。担当の先生が実験の人だったからかわかりませんが、出されたレポートで実験と理論のギャップを感じて半期で辞めました。自分は理論の方が良いかなと思い、研究室選択では理論系にしました。
卒業研究
あえてどこの研究室かは言いませんが、理論系の研究室に所属していました。熱力学の成績はあまり良くなかったのですが、かなりハマってしまったためそのまま卒業研究になりました。「エントロピーってなんやねん」ってところから始まって、情報理論との関わりから情報熱力学も学習し、そこから飛んでホログラフィックなエンタングルメントエントロピーを研究しました。一応、今も勉強会に参加したり色々とやっています。
輪講では場の量子論の基礎をやりました。「ちょっとそこ証明できる?」と教授にツッコまれて、予習が不十分だったため恐る恐る式を書いた記憶もありますが、なんやかんや楽しい研究室でした。
国公立の大学院入試は、理科大の授業だけでは足りないので外部の院試を考えている人はその大学の学部の教科書を探して、その教科書と大学院入試の過去問を用いて対策をするのが良いです。過去問だけでも十分対策はできますが、大多数は内部進学する学生なので同じ土俵で戦うなら教科書を知っておく(できれば授業ノートやレポート内容も知ることができると良い)と安心して受験できます。物理学科なら、詳解演習か黄色い演習本とイギカワの量子力学あたりで良いと思います。
部活・サークル
生物研究部、アイドルマスター研究会、物理研究部(幽霊)に所属していました。生物研究部では実験教室を行ったり、学園祭に参加したりしていました。遊びという遊びはほとんどアイドルマスター研究会の活動(飲み会やライブ参加)でした。二部だとサークル活動が全然できないんじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、けっこうできますよ!
あまり言及すると身バレしかねないので、ここはこの程度にしておきますが、理科大にはいろいろな部活・サークルがあります。大学生活をより良くするために、どこかに所属してみるのも良いですよ。
他の卒業生の大学生活について(アンケートより)
この記事を書くにあたり、このような呼びかけを行いました。3名の方がアンケートに協力してくださいました。この場を借りて改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。
1.夜間学部を選択した理由
私の理由にもありましたが、やはり学費の安さを挙げる方が多いのは確かですね。
2.教職課程の履修に関して
3名中1名が履修していたとのことでした。私も教職課程は履修していました。今回アンケートに回答してくださった方は化学科と物理学科ですが、数学科は必修科目に教職科目が含まれているので、教職課程を取りやすいと思います。
3.行っていたアルバイト
新入生のアルバイト選びに、参考になるかなと思います。
4.自分の進路選択に影響を与えたこと
前回の記事でも書きましたが、意欲的な人が多いので刺激になると思います。
私の場合は、やはり技術補佐員の仕事で研究職を知ることができたことです。学生としてではなく職員として東京大学へ通う日が来るなんて思ってもいませんでした。
5.後輩へメッセージがあればお願いします
さいごに
コロナ前であれば在学中に卒業生と話す機会はたくさんありましたが、現在は卒業生と交流の機会というのは少なくなったように感じます。なので、この記事が後輩たちへ届いて進路選択の参考になったら良いなと思っています。
アンケートの回答でもありましたが、夜間であることを活かすべきです。
遊びや自分の趣味を極めるのでも、私のように就職を考えて行動するのでも自由です。どちらにせよ、大学生活に悔いを残さないように過ごせることを願っています。残ったとしてもそれを原動力にしましょう。
夜間といえど、授業内容は昼間部と同じです。無事に単位が取れて、卒業出来たら、素直に自分を褒めてあげてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。では、健闘を祈ります。がんばってください。
P.S.
卒業して時間も経つので、履修などは在学生の先輩を頼ると良いです。それ以外の進路相談などは、私で良ければDMまでどうぞ。
写真は理科大界隈のツイッタラー(twitterで有名な奴ら)で花火大会をした時のものです。なんやかんや言いましたが、大学生のうちは遊ぶことも大切です。友達をいっぱい作りましょう。
よくある質問まとめ
Q1.教職課程とアルバイト、サークルはどのように両立していましたか?
A1.1年生のときに4年間の履修や行事を把握しておいて、逆算して計画を立てていました。100%計画通りにいかないけど、自分の履修したい授業があるなら絶対考えておいた方が良いです。
Q2.外部の大学院進学について
A2.行きたい研究室の情報集めが最重要です。東大であれば過去問の解答を有志が公開してたり、進学してる人が多いので集めやすいです。 研究室見学をした際に、研究室の先輩から過去問や情報を得るのが確実です。研究室見学がzoomの場合はメールで。 また、2部の授業の内容だけでは院試の出題範囲をカバーできないため、独学が必要です。これは志望大学院の過去問を見てもらえればわかると思います。 東大院試サークルとかもtwitterにあるので活用してみてください。
新入生や2年生はまだまだ時間があるので、専門の勉強をしつつ自分の興味を探ってみてください。 京大や東大は学部生向けの研究室見学会のようなものをやってたりするので、行きたい研究室を見つけるために参加してみるのがオススメです。
Q3.今のうちにやっておいた方が良いことはありますか?
A3.社会人になったらできないことをやる時間にすると良いです。勉強でも遊びでも。
また、英語の勉強はやっておいて損はないです。研究では英語の論文を読むことが日常になりますし、海外旅行したときには必須ですし、すこしずつやりましょう。
英語に限らず独学は長続きしないと思うので、仲間を見つけて一緒に頑張ることが良いと思います。
Q4.留年と退学について
A4.授業をまじめに聞いてレポートをこなしていれば自然と力がつくので、心配はいらないと思います。関門科目は最悪再試験を頑張れば滅多に落ちません。落ちたのは寝坊した人くらいです。
また、留年するタイミングとして、研究室配属の段階で単位が足らないと留年します。しかし、理学部第二部は夜間ですので様々な事情で留年を選択する人がいるので、数字は気にしすぎないで目の前のやるべきことに目を向けましょう。
一応、理科大公式が出しているデータを添付しておきます。
Q5.内部推薦に必要なGPAは?
A5. 高ければ高いほど良いです笑
研究室見学等で同様の質問を教授にすると、このような答えが返ってくることが多いかと思います。研究室ごとにある教授の基準で内部推薦は決まります。ただ、内部推薦も試験ではあるので、教授も客観的指標をもって合格を出さねばなりません。そして、各研究室推薦枠はおおよそ1~2名(0名もありうる)です。なので、GPAは高ければ高いほど良いです。そうは言っても難しいかもしれないので戦略を1つ書いておきます。競争相手は同じ研究室の推薦を希望する学生になるので、なんとなーく聞き込み調査をしておくのが得策です。成績の良い学生が自分の興味のある研究室を狙っているのか、そしてその人が内部推薦を狙っているのか、自分のGPAは学年の中でどれくらいなのか、という情報ですね。