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続・なぜコロナ対策は「飲食店への要請」だけ? 〜最新の分科会資料から読み解く〜

先日、半年前の分科会資料に基づき、新型コロナウイルスの感染対策が飲食業向けに集中していることの妥当性/不当性を確認しました。

そのとき、

半年経っても(中略)飲食業への規制の妥当性を示す資料等は提示されていない

と書いていたのですが、それからわずか5日後に新しい資料(PDFの103ページ目以降が該当)が公開されました。
そしてこれは、(非常に怪しかった)前回の資料よりはかなり妥当性が高いものになっているように感じています。
そこで今回は、この最新資料をもとに、現在の飲食業向け規制の妥当性を考えてみたいと思います。

お酒のある会食2回以上で感染リスクが約5倍

これはすでに新聞記事などでも解説されており、認知度が高いデータになっていますが、あらためて見てみましょう。

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「会食参加なしまたは1回」のグループと、「お酒のある会食2回以上」のグループをくらべると、「調整オッズ比(陽性者に占める割合÷陰性者に占める割合を、年齢・性別・基礎疾患により調整)」は4.94倍となっています。

「お酒のない会食」のオッズ比が出ていないのは、このグループに感染者がいない(分母が0になる)ためです。
このため、お酒のある / ないの定量的なリスク比較はできていないのですが、お酒がない場合は「症状あり または 濃厚接触の8人のうち、感染者はゼロ」という事実からしても、お酒のある / ない によってリスク量に差があるということにはなりそうです。

(サンプル数が少ない、という点はこの資料の後半で申し送り事項として説明されています。が、仮にサンプルを増やしても、この結果が大きく覆ることはないような気はしています。)

他のリスクが高い行動と比べても、飲食のリスクは高い

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リスクが高いとされる行動のうち、「大人数や長時間におよぶ飲食」はオッズ比がとりわけ高く、重点的に警戒すべきであると言えそうです。

このページに関しては細かく見ると、怪しい点はいろいろある(以下に記載)のですが、それでも「飲食のリスクが高い」ことは否定のしようがない気はします。

■細かく見ると怪しい点(読み飛ばしOK!!)
・サンプル数の少なさからか、本当にリスクの高低を示しているか疑わしい箇所がある。たとえば、「マスクなしでの会話」の調整オッズ比はほぼ1になっており、ノーリスクのように見える。一方、「手の届く範囲で会話をする機会」の調整オッズ比は2.13であり、会話時にはマスクの有無より話者間の距離が問題であるというのは、これまで諸外国等でも得られてきたリスクの知見とは異なるのではないか。(マスク有りでも、会議や講義実習等のリスクが高いということになってしまわないか。)
・「換気の悪い場所にいた」の調整オッズ比が2.68と高い。これを元に考えると、飲食以外のリスク箇所も多いように思われる。
・上記に関連して意地の悪いことまで書くと、直後のページで調整オッズ比2.49の「会食2回以上」を赤文字で表現しているにもかかわらず、調整オッズ比2.68の「換気の悪い場所にいた」を赤文字で表現していないのは、どのような意図や基準によるものか?

不要な出勤も強く禁じるべき(リスク2.3〜3.7倍程度)

では、「今の規制は妥当」ということになるかというと、そんなことはないと考えています。

テレワークやオンライン授業の実施状況と感染リスクの関係を表したデータも掲載されていますので、こちらを見てみましょう。

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このデータの興味深い点は、「テレワークを行っていない」よりも「25%程度・50%程度テレワーク」の方が感染リスクが若干高くなってしまっているところです。

有意な差とまでは言えないのかもしれませんが、調整前オッズ比では1.44倍であり、無視もできないような気がします。
これについて原因を考えてみたんですが……

「25〜50%程度テレワーク」ということは「週に1〜2回程度テレワーク」ということです。……これ、意味あると思いますか?なぜテレワーク自体は可能な仕事なのに、それほど頻度が低いのでしょうか。
要するに、このグループは「本来テレワーク化が可能なのに出勤している(させられている)人たち」なのではないでしょうか?

一方「テレワーク行っていない」には工場や店舗での勤務など、出勤が不可欠な人たちが多く含まれているのではないかと考えられます。こうした職場では出勤が不可欠である分、距離の確保や接触の制限、消毒の徹底等の感染防止措置も強く講じられています。
「必要もないのに出勤している人たち」とこういう人たちを比べたら、それは前者の方が感染リスクが高そうですよね。

そこで「75〜100%程度テレワーク」の調整前オッズ比を1とした場合の「0〜50%程度テレワーク」のオッズ比を求めると、2.29となります。
「75〜100%程度テレワーク」の調整後オッズ比を1とした場合、必要もないのに出勤している「25〜50%程度テレワーク」の調整後オッズ比は3.67となり、先ほどみた「大人数や長時間におよぶ飲食」の3.30を上回ります

(サンプル数が少ない点には注意が必要ですが、それはこの資料のほかのデータにも言えることです。)

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この点について資料では「統計学的な有意差はなかった」と結論付けられてしまっているのですが、現に規制対象とされている側からすると「えぇ!?」ってなりますよね。この点は継続してデータを集めながら再検討を求めたいところです。

一方、同じページに「テレワークの遵守について、一定の割合を設けることが有用かもしれない」という記述もあります。
「不要な出勤」の感染リスクが「大人数や長時間におよぶ飲食」と同様に高いのであれば、こうした規制は必要不可欠でしょう。その際、飲食同様に強い措置を講じることが検討されるべきです。

そもそも生産に寄与しようがない飲食向けの営業制限と異なり、生産性向上に繋げられる可能性も高いテレワーク化には、もっとコストをかけてでも強い措置が講じられて然るべきなのではないでしょうか。

リスク低い「1人での外食」の制限緩和を

最初に見たデータを再び振り返ってみます。

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「1人での外食2回以上」はオッズ比1.06、調整オッズ比で0.83と相当リスクが低いです。

現在の規制では、1人での飲食も20時まで、飲酒も不可と強く規制されてしまっています。飲食業にとって厳しすぎる規制であるだけでなく、仕事後の夕飯の選択肢が少なくなり、困った経験がある方も多いのではないでしょうか。

リスクが低いことが判明した以上、「1人での外食」に関する規制の緩和があって然るべきです。会話のないバー等の業態についても規制の見直しを検討してもよいのではないでしょうか。

リスクレベルに応じた適切な規制で感染の収束を

前回の記事でも書いたとおり、現在の問題点は、緊急事態宣言やまん延防止措置に織り込まれた対策が
・的を射ておらず感染を十分に抑えられていない / 抑えるのに時間がかかる
・従って、一部の業種のみが長期間、重い負担を強いられている
・それに対する補償が基本的に十分と言えない
という点にあると思います。

今回のデータで、行動別のリスク量がある程度、明らかになりました。リスクレベルに応じて適切な規制が講じられることで、業種間の負担の公平性を高めるとともに、感染を早期に収束させることが望まれます。

最後に付け加えると、「なぜこの程度のデータが、最初の緊急事態宣言から1年2ヶ月以上も経たないと出てこないのか」という点にはあらためて強い憤りを感じます。
昨年4月以降、規制対象となった飲食業からは、エビデンスの収集や提示について強い要望が出ていたにもかかわらず、たったこれだけのデータ(作成元によると「迅速な情報共有を⽬的とした資料であり、内容や⾒解は知⾒の更新によって変わる可能性がある」)がこれまで一切集められないというのは、生活に影響が出ている規制対象業種をナメているとしか思えません。

業界を挙げて、テレワークの有効性をはじめ必要なデータの収集・分析を続けることも、強く求めていく必要性を感じています。

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Kohei Nito
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