ヘイ、カルロス
アメリカのサウナで僕に友達が出来た。
僕は自他共に認めるサウナ愛好家(サウナ狂いと言っても差し支えない)だが、実際のところ日本にいた頃にサウナで友達が出来たことは一度もない。
日本の有名所のサウナにはかなり行ったし、ホームサウナなんて言っても良い程に足繁く通っていたサウナもあったのだが、
基本的に日本のサウナ室はおしゃべり厳禁なので「いやー偶然偶然」なんて話しかけたことも話しかけられたことも無かった。
(上野北欧のカレーは確かに美味。)
僕はサウナは基本一人で行くのが好きである。
でも時には好きな仲間と一緒に行って、サウナ後にビールを、飲むのも最高だ。
それだけのことなのに何て幸せなんだと正直思える。
僕は時々アメリカから日本に帰るのだが、大学時代の友達や、仲の良い人達とはサウナで集合する事にしている。
何処で集まろうか?と毎度話題になるが、結局いつも後楽園にあるラクーアに落ち着く。
一緒にラクーアのサウナ室の静寂を楽しみ、その後のビールを一緒に楽しむ。
ただ、サウナ室ではいくら仲が良くても会話はしない。それがマナーだからである。
一方、僕の通っているアメリカのジムのサウナは日本と真逆の位置付けのようで、人々はサウナ室に歓談をしに集まってくる。
静寂を楽しむ場所では決してない。マナーなんて何処行った?状態のカオスである。
おしゃべりの声のボリュームはアドレナリンが出ているせいかかなりデカい。
他にもサウナ室でも筋トレしてる人とか、勝手に自作アロマ水をストーブにかけて皆に「良い香りだろ?」と同意を求めて来る人とか、結構な大音量のヒップホップをかけてノッている人とか、しまいにはスキンヘッドをT字カミソリで剃り上げてるオジサンとか、日本でこれやったら大ヒンシュク&強制退場確実、という人をあちらこちらで見かける。
僕も気にしない様にしようとしていたが、正直日本のサウナの静寂さが恋しくなってきてはいた。
そんな中、最近偶然発見してしまったのだ。
土日の朝7時頃にそのジムサウナに行くと人が殆どいない為、最高の時間を過ごせると。
僕の求めていた静かな時間がそこにはあった。
サウナ室で、自分の呼吸と滴る汗の音だけが響く。
その音の中で静かに瞑想する。
誰もいない静寂の時間が流れる。
最高だ。
これを発見した時は正直震えた。
自分で自分を褒めてやりたくなった。これでもう大丈夫だ。この国で僕は生きていけるというくらいに嬉しかった。
そんなアメリカの早朝サウナで友達が出来た。
彼の名前はカルロスである。
カルロスも日曜の朝7時にいた。
最初は会話もなかったが、少し注意して見ると、彼は10分位サウナにいて、その後部屋から出ていき、また数分すると戻ってくるではないか。
僕: お前、ひょっとして、水シャワーあびてるのか?
彼: そうだよ。ホットとコールドを繰り返しているんだ。
な、ん、だと!?
この国にも僕以外にこの技を実践している人間がいるのか。同志じゃないか。
何なら僕より先に早朝サウナを発見しているなんてなんてやつだ。友達になりたい。
僕: マジか、驚いたよ。僕もそれやっているんだよ。最高だよな。でも最近は水シャワーよりプールの方が良い事に気付いたんだ。
彼: なるほどな。だから君は水中ゴーグル持っているのか。すごい奴だな。新しい発見だよ。今度やってみるよ。
僕はこちらの国で見掛けることのない水風呂に飢えすぎて、サウナの後にプールを泳ぐという独自の技を発明して楽しんでいた。
アメリカのジムで日曜朝7時から海パン一丁の姿でサウナ室に入り、その後プールで一往復泳いでまたサウナ室へ戻る、それらの儀式を繰り返して恍惚の表情を浮かべている日本人を見掛けたなら、ほぼ間違いなく僕なので気軽に声をかけてみてほしい。変態の域の自覚はあるが決して変態ではない。
彼: お前の出身は何処だ?
僕: 日本だ。
彼: なんてこった。俺日本のアニメ大好きだ。
もう日本は世界ではアニメの国なのである。
僕: 君の出身はどこなんだい?
彼: コロンビアだ。カルロスっていうんだ。よろしくな。マイフレンド。
こうしてアメリカで僕に初めてのサウナ友達が出来て、週末の楽しみがまた1つ増えた。
ちなみに朝サウナの良さに目覚めてしまったので、これからは平日も朝5時から行こうか少し悩んでいる。いや、きっとすぐに行くことになるだろう。
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