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『向日葵の咲かない夏』を読んだ感想

こんにちは。
向日葵の咲かない夏を読了しました。
感想を書き散らします。

⚠以下、ラストまでのネタバレを含みます。⚠






この作品を読んだ感想は「叙述トリックすごい」と「自分にはまだ半分も理解できない」だった。

こんなに複雑な話を一冊書き上げた道尾秀介はすごいと思ったが、なにぶん題材が難しく身の回りには滅多に起こらないことが次々起こるので理解に時間を要した。読んで考えたことを書いていく。

※私(新渡戸)は、読後に他の方の考察サイト等を見ておりません。見当違いなことを書いていると思いますが、ご了承ください。


疑問が残る点

・結局誰が人間として残ったのか

今のところ私は、人間として残ったのは恐らくミチオ君のみではないかだと考えている。何故なら、火事から一週間後、一家が家の焼け跡の前にいるシーンに、

関西に住んでいる親戚が、今夜七時に、僕を引き取りに来てくれることになっていた。N駅の、タクシー乗り場の前。そこが待ち合わせ場所だった。葬儀のあと何度も念を押されたので、場所も時間も間違いないはずだ。

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」462ページより

という記載がある。家族がいるなら、ミチオ君は引き取られずに済むはずだし、葬儀は父母のためのものだろう。

ただ、父母が死んでいるからこそ生まれる疑問もある。何故部屋から逃げなかったのかということだ。ミチオ君は焼け跡の前でこう言っている。

実際、あのときお母さんが部屋の窓をあけはなってくれなかったら──そしてお父さんが、僕たちをそこから投げ落としてくれなかったら──僕やミカは、いま頃どうなっていたことか。

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」460〜461ページより

窓を開けて、子供達を脱出させたのなら、自分達も一緒に出ればよかったのでは?と思う。今までの息子に対する行いの罪滅ぼしで逃げなかったのだろうか?
だとすると、両親は何らかの生き物に生まれ変わってミチオ君と喋っているのだろう。

実は、ミチオ君が人間であるとも自信を持って言えない。
意味深な、人間か虫かどちらでもとれるような表現が見つけた限りでは2つあるのだ。
1つ目は、ミチオ君はこの火事で死んだのではないかとすら思った文章である。

歪んで、ぼやけた視界の中で、お父さんとお母さんが、僕のほうに両手を差し出すのが見えた。お母さんの口は、そのときたしかに、僕の名前を呼んでいた。3年ぶりのことだな、と、最後に思った。

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」458ページより

最後???
そんな言い方する???
というか、この文章は両親もかなり謎だ。
ミチオ君曰く、“お父さんとお母さんが、僕のほうに両手を差し出すのが見えた。”そうだ。なら、そのまま感動のハグをして4人で逃げれば良かったのに。本当に何で逃げなかったんだ。

摩耶家は火事で死んでいて焼け跡で喋っているシーンはミチオ君の妄想ではないかとも思えてきた。

2つ目、「本当の終わり」に

十年と少し前──。
どこで、何が死んだのだろう。いまの僕として生まれる前、僕は、どんな姿をしていたのか。

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」430ページより

という文章がある。「え?ミチオ君は人間じゃないの??」と一瞬思ったが、その後にミカちゃんや泰造のご飯を捕まえてきたり(それだけなら大きめの虫の可能性もあるが)、そもそも学校に通っているのでミチオ君は多分人間だと思う。

人間だと、思うんだけれど、自信が無い!!!!!

・341ページ以降、S君が一切登場しないのは何故か

「もう一つの可能性」の後、出てこなくなったのは何故だろう。
というか、終盤では元々S君が入っていたジャムの空き瓶が泰造の部屋になっている。
じゃあS君はどこにいるんだ。逃げたか死んだかしたのか。

駄目だ。私の考察力が低いので全然分からない。

岩村先生

最初はS君の話を信じていたのだけれど、もう一つの可能性が出てきてからはマジの無関係で笑った。無罪でした。無罪じゃないか。未成年相手に性犯罪してたからね。そりゃ自分の生徒があんな本を警察に突き出そうとしてたらビビるわけだね。

叙述トリック

「あなた人間じゃなかったの?!」が3回位あったので、驚かされた。特にミカちゃん。3歳にしては言動が大人びているなと思っていたけれど、まさかトカゲだったとは。

この世界は生まれ変わりがナチュラルに受け入れられていてすごい。

めっちゃ色々忘れてるじゃん

ミチオ君はS君に自殺を促したことを忘れてるし、S君は自殺したことを忘れてるし、泰造はS君が自分のために自殺したのを忘れてるし。

忘れてるというより、見ないふりをしているのだと思う。

「本当の終わり」でのミチオ君の言葉が心に深く残った。

「みんな同じなんだ。僕だけじゃない。自分がやったことを、ぜんぶそのまま受け入れて生きていける人なんていない。どこにもいない。失敗をぜんぶ後悔したり、取り返しのつかないことをぜんぶ取り返そうとしたり、そんなことをやってたら生きていけっこない。だからみんな物語をつくるんだ。昨日はこんなことをした、今日はこんなことをしてるって、思い込んで生きてる。見たくないところは見ないようにして、見たいところはしっかりと憶え込んで。みんなそうなんだ。僕はみんなと同じことをやっただけなんだ。僕だけじゃないんだ。誰だってそうなんだ」

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」443〜444ページより

長い。

「だからみんな物語をつくるんだ。」の一言に共感した。私も、自分のした過去の失敗や後悔を人生のワンシーンとして見れるようにうまくストーリーをつけて落とし込んでいた。
自覚はなかったが私は幾つも物語をつくっていた。

ミチオ君、小学5年生にして的を得たことを言っていてすごい。これを言えるほどの人生経験があって、このように言語化できるのもすごい。

拙い文章でした。最後まで読んでいただきありがとうございました!!!

あと、読んだ後夜にお風呂に入っている時に湯船に蜘蛛が浮かんでいてS君かと思いました。🕷

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