益子一人旅 #2
「次に益子に来た際は、わたしが案内するからね」
演奏会で出逢った女性の、その言葉がずっと心にあったまま、
季節は秋になった。
ある日、貰った2冊の本を読んだとき、
「わたしはいま益子を訪れなければならない」
そう強く感じた。
本から感じたこの感覚を、
益子に行って確かめなければならない。
そんなふうに思った。
わたしはすぐに女性に連絡した。
人生で2回目、益子へ行くことが決まった。
ずっととどまっていたものが、動きはじめた瞬間だった。
何かが変わる、漠然と感じた。
二週間後、益子へ向かった。
お昼過ぎに到着すると、車で迎えに来てくれていた。
『まずはランチでもどうですか?』
わたしが行きたいと言ったことを覚えてくれていて、
その場所に連れて行ってくれた。
言葉に残すことを躊躇したくなるほど、素敵な場所だった。
場所は、人が、今生きている人が作り上げていくもの、そう強く感じた。
美味しい親子丼を食べながら、色んなお話をした。
ここを後にして、彼女の住む隣町へ向かった。
茂木に着いた。
彼女が、彼女の家族のような友人たちと作り上げた場所を、見せてくれた。
彼女は友人たちに、わたしのことを、
『わたしの新しい友人よ』と言って紹介してくれた。
その後は、演奏会の会場になった場所の日常の姿を見に連れて行ってくれた。
益子に戻って美味しいコーヒーと、クレームブリュレを頂いて、
古本屋さんに行った。
あっという間の一日、大切な一日。
わたしの、益子一人旅のお話。