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兵法二天一流・体術の創出について

現在学んでいる兵法二天一流・武道剣術であるが、体系の中に体術的要素のある技もあるものの、それらを含めて全て剣術として統一された武技の体系になっている。

その剣術をさらに精妙化させると共に、剣を持たない場合の護身・戦闘を行える技を体系化したいという欲求が、兵法二天一流・体術を創出しようとする意図である。

理論および実践における先行者は2者いる。
一つは、南郷先生率いる武道空手団体。
もう一つは黒田鉄山氏が主宰する振武館道場。

まず南郷先生の流派から。
南郷先生の流派の大きな体系としては、空手→居合→合気という順序で修練が行われており、徒手空拳から武器術を通して徒手空拳へ至る「否定の否定」の過程をたどっている。

また、武技に注目すれば、まずは空手で五体そのものを強靭な武道体として鍛え上げ、そこから「触れれば斬れる」日本刀を媒介に一撃必殺の認識を創るために居合を学び、最後は一撃必殺の技を基に相手の技に合わせて「待の先」で最小限の労力で一撃で制圧する「合技」としての合気を学んで完成し、そこから空手の達人レベルへと至ると考えられる。

次に黒田鉄山氏の振武館道場について。
振武館道場は、師範の黒田家が江戸時代から連綿と伝承してきた駒川改心流剣術、民弥流居合術、四心多久間流柔術、椿木小天狗流棒術の四種類の武術を修練している。

本来的には同種の武術は併伝できないが、長い時間をかけて伝承されることで、本来は全く異なる四種の武術が、奇跡的に技の質を落とさずに一体化してきた(対立物の相互浸透)。

この中でも剣術と柔術は本来は全く異なる技の体系であったが、相互浸透を起こしていわば「黒田流」として一つの技に統合されていったものである。

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以上の先行者の実践してきた事実を踏まえて兵法二天一流・体術の体系の特徴は以下のとおりとなる。

1.兵法二天一流・体術は、兵法二天一流・武道剣術の体系から派生したものとして完全に新たに創出する必要があり、既存の徒手空拳の流派の技の寄せ集めであってはならない。

2.兵法二天一流・体術を修業することによって、武道剣術の術技の精妙化にも資するものであること(現在の基礎訓練である「前八(まえやつ)」の要素を内に含むものであること)。

3.体術それ自体でも空手、柔術を相手に互角に戦えるだけでなく、対ナイフから対銃器まで、現代の日常生活から戦場でも通用するものであること。

4.体術の修業を通して、武器を持たない場合の武道心を養成するのみならず、頭脳を磨くための学問的素養の基礎ともなること。

以上が現在考えているおおよその特徴である。

次に具体的にどのように体術を創出していくのかのプロセスを、少し過去にさかのぼりつつ、私の実践と今後の見通しをふまえて述べる。

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まず現在、ふとした縁で修斗(キックボクシング+レスリング)の練習をしている団体に誘われて、そこで格闘技の練習を重ねている。

修斗を練習し続けようと思ったのは、修斗がキックボクシングとブラジリアン柔術的レスリングの組み合わせであり、古代ギリシャのギュムナシオン(体育訓練所)で行われていたパンクラティオンと呼ばれる格闘技に近似しているからである。

つまり人類黎明期の打撃と投げ技や締め技が混在していた形態の徒手空拳での戦いに近似していると捉えたため、徒手空拳の体術を考察するための最初の一歩としてふさわしいと考えたから。

最近はグラップリング(レスリング的組み討ちから寝技で極めるサブミッション的格闘)を中心に練習しているが、まずは体力養成も兼ねて人間技的なレスリングスタイルで行っている。

そこで感じたのは、レスリング的人間技では相手を制圧するまでに非常に体力を消耗し(インターバルあり2分3ラウンドでもう立てなくなる)、その消耗の割には、なかなか相手との決着がつけられないことが多い。

ここから感じて考えたのは、古代においてもこのようなレスリング的格闘を繰り返す中で、消耗の度合いの激しいこと、その割に決着がなかなかつかないことから、これを克服すべく武技が生み出されていったであろうということ。

特に日本においては、こういった組み討ち的な戦闘術は、剣術を中心として成立しており、歴史的には剣術の一撃必殺的形態から、剣を持たない時にも剣を持っている時と同じく一撃必殺的に相手を仕留める技を模索していったはずである(なぜなら人間技的に組み討ちをすると私のグラップリング経験のように労多くして実少なし、だから)。

つまり、本来あるべき柔術は「剣を持たない剣術」であり、文字通りの一投必殺、すなわち剣で相手を一刀両断するのと同じ威力の投げ技や関節技で、一瞬で相手を締め殺すか関節を極めてしまうことにあった。

だからこそのあの合気道の原点となった大東流合気柔術(の武田惣角などの達人)の見事さであったといえよう。

なので、柔術的な技としては、日本刀で相手を一瞬で一刀両断するレベルでの投げ技や関節技こそが本来的な姿であり、さらに当身=打撃もそこから派生したものとして磨く必要があると言える。

以上が「柔術以前」の話であるが、次に体術の具体的創出プロセスについて述べる。

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まず具体的には、現在の修斗の練習をふまえて、その他に古流柔術の修業を行う予定である。

私が学ぶ予定の流派は岩手・盛岡に伝わる諸賞流和と呼ばれる流派である。

この流派を選んだ理由は、この流派は甲冑での戦闘を前提とした当身の技があること。そして柔術においても単に投げるのみならず、投げに対する返し技、そこからさらに返す技があること。
なによりも決定的なのは、投げ技が、いわゆる投げ飛ばす技ではなく、相手を真下に叩き落すタイプの一撃必殺の技であること(そしてそれに対する返し技も存在すること)である。

さらに、東京に行ってイスラエル軍で開発された軍隊格闘術であるクラヴ・マガを加えて学ぶことにしている。

これは言わずもがな、現代の軍隊での格闘戦の実相を学ぶためであり、クラヴ・マガは対刃物だけでなく、対銃器(それも拳銃だけでなくアサルトライフルなどの軍用銃も含めて)の格闘も練習体系に含んでいることからチョイスした。

以上の修練を通して学び得た技を、一度解体して、私自身の独自の体術として、兵法二天一流・武道剣術をベースにして再編成する。

このあたりは振武館道場・黒田家が長年の時をかけて自然成長的に行ってきたことと同一の過程を、私の場合は目的意識的・理論的に行っていくことで、私の代と次代あたりでほぼ完成をみるところまでこぎつけたい。

そして、基本的に武道剣術をベースとしているため、体術の修練を通して武道剣術を学ぶための基礎体力や身のこなしを養成し、現在の基礎訓練である前八と同じ効果をもたらせるようにしたい。

その上で、初心者には体術を学んだだけで護身にも直接役に立たせることができるとともに、中級者以上には、振武館道場・黒田流がそうであるように、体術を極めることでより体の遣い方を精妙化させ剣術の実力も増加させることができるような技の在り方を模索していく。

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以上が兵法二天一流・体術に関する現在考えている過去・現在・未来の姿の骨子である。

今後は実際に体術を研究するのはもちろん、理論的把握についても深めていき、その研究成果をnoteに記録していきたい。

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