リテラシーを涵養しよう
そろそろ選挙の季節ということで、野党支持者がまた能天気な主張を始めている。
椿事件の時代
かつて、あるテレビ局のプロデューサーがどんな与太であっても野党の主張を持ち上げて報道し、与党はこき下ろしてやろうという秘密協定をマスコミ内で結んで実行した結果、自民党政権が崩壊して、野党政権が成立したということがあった。「椿事件」である。
野党にしてみればその夢再びと言いたいところであろうが、そんなことをして痛い目にあったのは多くの国民自身であったことは忘れてはいけないのである。もう民主党政権から10年近く経っているので喉元過ぎれば熱さを忘れている人もいるかもしれない。何しろ、今18歳で選挙権を得る人は当時はまだ小学生である。大人たちが体験した恐怖は遠景であったかもしれない。
まあ、民主党政権樹立時にも明らかに実現可能性のない薔薇色の未来が来ることを期待して多くの人は民主党に投票したわけで、甘い言葉にはみんな騙されやすいのである。
こういう記事も典型的であろう。この人も政権交代したい、野党を勝たせたい一心で色々書いていらっしゃるわけである。
軍事費、防衛費について
例えば、イージス艦の購入をやめようという話は非武装中立の平和主義を求める人には魅力的な提案であると思う。けれども、今の問題はある隣国が南シナ海で岩礁を埋め立てて人工島を作り、そこに軍事基地を作ってしまったことにある。これは領土問題を強大な軍事力で力による現状変更を試みているということに他ならない。
そんなの南シナ海の問題で、東シナ海は関係ないじゃないかというと、尖閣問題があるわけである。米国も海軍力として、某国の艦艇の数はもう米国を上回っていると報告しているわけである。今のところ、尖閣に領海侵入している船はコーストガードの船だけであるが、いつそこに正真正銘の軍艦が入ってくるかは誰にもいえないのである。
そういう状況で非武装中立の夢を追って軍事費削減をやっちゃうと領土を取られてしまうかもしれないのである。妄想の中で生きている人にとっては「別に領土を取られてもいいじゃない。平和でさえあれば良い」というかもしれないが、領土を切り取られるのは平和とは程遠い状況であることは認識しておいた方が良いのである。
医療費の問題、健康保険の自己負担の問題
また、医療費の問題は積年の課題である。令和元年で国民医療費は43.6兆円である。そのうち17兆円を75歳以上の高齢者が使っている。
もちろん、医療費負担が増えるのは誰でも嫌だからこのままで行って欲しいという気持ちはわかるけれど、何しろ、現役世代の医療費は一人当たり年間17万円であるのに対して、75歳以上の高齢者の医療費は一人当たり年間95万円である。
つまり、現役世代の支払う健康保険料は自己負担分を無視しても多くが高齢者医療に消費されているわけである。(現役世代は自己負担分3割負担)
今後ますますの高齢化と少子化すなわち現役世代の減少はもう確定事項なので、現役世代の負担は今後も大きくなってゆくことが確定している。
医者の算術からすれば高齢者の自己負担が増えて受診抑制が起こると収入が減るだろうから歓迎できることではないだろう。しかし、現役世代の負担限界を超えてしまえば健康保険制度自体が崩壊する危険だってあるのである。そうなれば米国の状況である。米国では低所得者はそもそも宗教団体が経営する慈善病院くらいにしか受診できないし、そこそこ資産のある人でも「家を売って病院にかかる」レベルの負担である。そうなることには非常な危惧を覚えるのだが、野党にとっては気にすることでもないのだと思う。あれを悪法とシンプルに言ってしまえるのが能天気ということである。
新自由主義
その上に消費税5%とかどういう新自由主義なのとしかいえないのである。そりゃ、法人税や富裕層の増税を厳しくやればいいじゃないと言い出すかもしれない。それをやるとどこに皺寄せが来るかというと雇用である。若者の求人を絞ることになるわけである。リーマンショックの後、民主党政権の時代、コンサルたちが何を言ったかというと「固定費の圧縮」である。固定費つまり給料である。給料を圧縮するということは、求人を減らしたり、正規職でなくてアルバイトで雇用するということになる。派遣さんが求められる時代ということである。パソナが大儲けした時代に逆戻りになるよ。竹中先生大喜びになるんである。
まあ、私は別にそれでもいいけれど、新自由主義反対と野党に票を入れて新自由主義を呼び寄せるならば有権者のリテラシーを疑うわけである。
あの野党万歳の主張をバラ色の未来に見てしまう人はリテラシーを涵養すべきであろう。