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【菜なれ花なれ】海音寺恵深の考察 応援の苦しみと向き合う
なれなれキャラ考察第2弾。
今回はPoMPoMsのブレーン、海音寺恵深の考察記事。杏那に苦戦しすぎて恵深にスライドした(またですか?)。
恵深は心臓病の手術の影響でリハビリ生活を送っており、作中では最後までスタンツに参加しないキャラだった。他のメンバーから一歩離れた距離で見守る彼女にはどんな役割があるのか? そして、なれなれにおける彼女の物語とは? という部分に着目していく。
公式プロフィール
海音寺恵深
CV 伊藤未来
沼田のお寺、舒倫寺の娘。中学時代はチア部の部長だったが大会中に病気で入院することに。今はリハビリしながら自宅療養している。かなたとの約束の為、鷹ノ咲高校への編入を目指して勉強も怠らない努力家。責任感も強く、面倒見もいいけれど、かなたをからかう一面も。練習メニューや演目を考えるのが得意。
ポジション スポット
特技 チア
身長 158cm
学校 -(鷹ノ咲高校志望)
学年 -
誕生日 12月15日
好きな食べ物 カヌレ
嫌いな食べ物 落雁
趣味 チアの新技を考える、映画鑑賞
血液型 A型
作中での年齢は高校一年生相当。
「編入を目指して~」という記述やプロフィールから、通信制高校などには入っていないと考えるのが妥当(本編では明言されていないが)。6話「※温泉でチアはいけません」では夏休みの宿題をやっているような発言もあるが、通信教材などでも課題は出る。高校の編入学は年齢・学力が該当学年の水準に達していればよいケースが多く、恵深もそのパターンと推測される。
幼少期からのチア経験者で、かなたとは同じチームで約5年間一緒に活動していた(Blu-ray1巻の特典ドラマCD「渚とチア」を参照)。
ちなみに、作中で頻繁に登場する恵深の部屋はもともと応接間だったという設定がある。こういうことはTwitterじゃなくてインタビューとかで残してくれよ。
因みに恵深の部屋は元は庫裡の応接間だったのを、病床の恵深が庭を見たり過ごしやすいようにとご両親が融通してくれたという裏設定で、病気発覚前の部屋は2Fにそのまま残っています。
因みに恵深の部屋は元は庫裡の応接間だったのを、病床の恵深が庭を見たり過ごしやすいようにとご両親が融通してくれたという裏設定で、病気発覚前の部屋は2Fにそのまま残っています。#なれなれ #菜なれ花なれ
— 柿本広大 (@kamokohdai) July 29, 2024
作中での役割
本作における恵深の役割は比較的明確だと言える。
恵深は、かなたを導く妖精のような存在だ。かなたの傍に寄り添い、共に解決策を模索する。全体を通して二人の信頼関係は幾度となく描写されており、単なる友人の関係ではないことが分かる。
また、PoMPoMsでは動画の撮影・編集を担当し、チアの構成や指導も行う。実家の舒林寺をPoMPoMsの練習場所として提供しており、あらゆる方向で欠かせない人物だと言える。
かなた、ひいてはPoMPoMsという一つのチームにとって、恵深は単純な構成員の域に収まらない。同年代の相手ながら、恵深はどこか指導者・保護者じみている。少なくとも「チアのことは恵深に頼る」という認識が彼女達の間にあることは間違いない。ドラマCD「PoMPoMsアフター」では、杏那がチアの構成で恵深を頼ろうとする場面がある。
しかし、彼女は目的地に向かって真っすぐ進んでくれる機能的な存在ではない。恵深もまた悩みを抱えた一人の人間であり、その悩みは時に彼女を導き手から敵対者に変える。
誰かを支えるという行為は決して簡単ではなく、支える側の人間もまた自分自身と向き合う必要がある。恵深は、応援という行為の難しさ・険しさを描くためのキャラクターでもあるのだ。
恵深の物語
恵深の物語について、まずはその大枠を捉えたい。
彼女の物語は、主人公・かなたとの関係を軸に構築されている。
3話「いつもこの顔だから」で、恵深はかなたのイップスを初めて知る。5月の地区大会でミスをしたかなたはイップスに陥り、以降部活を休んでいる状態だ。しかし、恵深に心配をかけたくない思いから、彼女は自身の挫折を隠し続けていた。恵深はそんなかなたの苦しみに寄り添い、支えていくことを決心する。
かなたと恵深の関係は作中でも深く描写されるが、二人は物語の構造的にも深く結びついている。「イップスを克服できるか?」というかなたの物語に対し、恵深の物語もまた「かなたの復帰を支えられるか?」というところにある。二人は一心同体の関係であり、二人が支え合うことで初めて活路が開ける。
自分自身との戦い
かなたを応援する中で、恵深は自分自身とも向き合うことになる。
PoMPoMsでの活動を通し、イップスを少しずつ克服し始めるかなた。一方、恵深の中には確かな焦りと嫉妬が芽生え始める。
私は 頑張っても頑張っても 全然思うように動けないのに
かなたは頑張った分だけ 褒められたり感謝されたり
チアだって全国優勝して
私の欲しいもの全部 かなたが持ってっちゃった気がしたんだ
かなたは鷹ノ咲に行けた チア部に入れた
なのに 私は高校も行けてない
本当は 全中大会優勝って自分の夢を叶えてくれたかなたに感謝してるけど
時々 なんで私だけこんな目に、って
恵深の役割を語る際、私は彼女を「妖精のような存在」と述べたと思う。当初の彼女は、まさに「妖精『のような』」キャラだ。かなたを支えようとする気持ちの裏に、マイナスな感情を隠している。そんな彼女が自分自身と向き合うことで、正真正銘の妖精になろうとする。
なれなれは「応援」という題材を扱いながら、他者だけでなく自分にも寄り添っていくことの大切さも描いている。恵深はその象徴のようなキャラクターだ。
支えようとする気持ちが焦りを生み、焦りは「支えたい」という気持ちそのものを蝕む。誰かを応援するためには、自分自身も強くならなければならない。かなたへの応援は、恵深が自分自身を乗り越える戦いでもある。
9話「雨とチア」を読み解く
自分自身を乗り越えるという恵深の物語の中で、欠かすことのできないエピソードがある。それが9話「雨とチア」だ。
この回は恵深にとっての一つの集大成でありながら、始まりでもある。恵深の行動に込められた意味、そして恵深のこれからがこのシーンには詰まっていると言える。
かなたとの対話
団子坂で無謀なジャンプを敢行し、病院へ運ばれたかなた。かなたの下へ駆けつけた恵深は、開口一番かなたへ謝罪した。
このシーンは、二人の間に生じた決定的なすれ違いを表している。かなたへの嫉妬心に苛まれる内、かなたの苦しみから目を背けていた恵深。そして、そんな恵深を不安にさせまいと、気持ちを閉じ込めるようになってしまったかなた。かなたの気持ちに寄り添える者がそこには居ない。
恵深の必死の呼びかけにも、かなたは心を開けない。二人の関係が破綻しかけていた暗示と言える。
かなたの心を開くため、自分自身を変えるため、恵深は行動を起こす。
雨の中のチア
恵深は、かなたの前でPoMPoMsの曲「You for You」によるチアを始める。
言葉で伝わらない思いをチアで伝える。このシーンには様々な意味が込められている。
「You for You」は、かつてPoMPoMsがかなたを応援するために作った曲だ。恵深にとっては、かなたと共に困難を乗り越えるという決心が込められた曲でもある。
ここでこの曲を再演するのは、恵深の覚悟の表明に他ならない。二人を繋いできたチアを通して、かなたと共に歩むという決意を再び示すシーンなのだ。
このシーンのラストで、恵深は立ち上がり大きくジャンプする。かなたに寄り添うために、自分自身も成長していく。そんな恵深の心持ちがこのシーンには滲み出ていると私は思う。
ジャンプの後、よろめく恵深を受け止めるかなた。恵深が壁を打ち破り、かなたもまた壁の中から出ようと決心する。二人の気持ちが再び一つになった瞬間だ。
恵深の戦いは終わらない
恵深の行動によって、かなたは自分自身の心と向き合い始める。しかし、それは恵深にとっての終わりではなく、むしろ始まりだと言える。
10話「Go Fight Win」では、恵深が自分のチアを振り返って「全然できてなかったね」と語った。かなたはそれを「私には一番届いたチアだった」と否定する。
このシーンは少し妙だ。この期に及んで恵深の自嘲的な様を描いている。これは、二人の関係が進展したことを示すだけでなく、二人の前にはまだいくつもの障壁があることをも示唆していると考える。
恵深にとって「雨とチア」はゴールではない。かなたと同じ鷹ノ咲のチア部に入って、Aチームのスポットになる。名実ともに対等なパートナーとなり、かなたを支え続けられる存在になることが恵深の目標だ。ゆえに、その気持ちを示した雨中のチアはスタート地点に過ぎない。
誰かを支え続けたいのなら、自分もまた変わり続ける必要がある。そんな険しさの中でも、焦ることなく支え合って進んでいく。このシーンは恵深の、あるいは二人の再始動に向けた誓いの場面なのだ。
実際、11話「菜なれ」と最終話「花になれ」は、誓いを立てた二人が最後の試練(毬の応援)に立ち向かう、という構図になっている。
総括
誤謬が含まれちゃいないかという プレッシャーで 吐く
本編12話内における恵深の描写は決して多くない。そもそもなれなれは一人で居るシーンが極端に少ない作品で、その中でも恵深は単独の場面がほとんど無い。なので、内心が独白でがっつり語られる……ということも無く、ガクガク震えながら執筆していた。
恵深は理想と現実のギャップに苦しむ人物だ。そして、そのギャップが解消することはないという現実の厳しさも背負っている。
しかし、厳しさに負けず、立ち向かっていく芯の強さが彼女にはある。そして、その姿勢は時にかなたや他のメンバーに勇気を与える応援になる。恵深はPoMPoMsのスタンツには参加できなかったが、それは応援をしていないということを意味しない。彼女の存在が「応援」という題材に大きな深みをもたらしたのだ。
以上
サムネイル
「菜なれ花なれ」公式サイトより
https://narenare-anime.com/story/?episode=09