街とその不確かな壁、きみはどこに行った?

この作品読了後に最も気になった点は きみ についての謎だ。
彼女はどこに行ったのか、彼女の家に電話をかけた際に出た男は何者だったのか。この男についてはとっかかりが無さすぎるので放っておくが(もし皆さんのご意見ありましたらコメントキボンヌです)それ以外について自分なりに整理してみる。

きみ について
彼女が語るには彼女の本体は街にあり、現実世界でぼくと語らうそれは影であるらしい。影版彼女は街から逃げてきたのかもしれないしイエローサブマリン少年のようにもとより本体と離れ離れにこの世に生まれ落ちた存在だったのかも。街に戻る必要が生まれたのかもしれないし子易さんのように現実世界にいられる時間がなくなってしまったのかもしれない。

村上春樹作品ではわけの分からない現象などおなじみであるし、大抵は「よくわからんけどそういう理屈ね」と気にすることは無かった。しかしきみがなぜ消えたのかということの原因もしくは理由がとてもが気になる。「気にすんなよ」というのがこの場合の正解に違いないし、どのみちそれしか選べる選択肢は無いんだけれど。

子易さんがなんで会話できてんのかとかツッコミはじめたらキリないわけで。

主人公こと、ぼく 私 について
彼はどういう動きをしたのだろうか。本に書かれている順に書き出すと以下のようになる。

①17歳のころ、現実世界できみと出会う。
②(たぶんきみ消失後近々)街にいる、自分は残り影を逃がす。
③おっさん期、現実世界でサブマリン少年と出会う、サブマリンが現実から消える。
④若返りながら移動し街に戻る描写。反面、サブマリンの登場時は既に街に長期滞在している本体側視点のような描写もあり。

②の街にいる時期が分かるような描写は無かったと思う。ただ主人公の語る言葉には彼女が消えてそんなに期間が経っていないのではないかと勝手に感じただけだ。②のフェーズで重要な点は 影を街に逃すことだ。

影を逃し、③のおっさん現実期フェーズに入るわけだがここでミスリードというか、現実にいるおっさんが本体なのか影なのかという疑問が湧く。自分は影だと感じたしそう読ませたいんだろうなと感じさせるシーンが多数ある。

さらにわかりづらいのが④。

・おっさんが川を遡りながら若返る、現実世界から街への移行を示している。
・影を逃したのち、街にそのまま残り続けていたであろう本体がサブマリンの登場に戸惑うシーン。
・現実世界には影がいるから会ってこいとも言うサブマリン。

混乱してようわからんが、自分はこう考える。
・現実世界でおっさんやってるのは影、間違いない。やっぱりそうだったかーって思った。本体がサブマリンに「なんやこいつ!」って驚いているのも上記と矛盾はない。会った事ないからね。本体であるアンタは現実に戻ると影いるよの説明も矛盾なし。

・よくわからんのが川さかのぼり若返りのシーン。影が街に戻ってきた描写で上記の状況と矛盾する。うーんこれはイメージの描写であって事実ではなかったのかもしれない。

自分が読んでいてもやもやした点を書き出しました、皆さんのお考えやそこちゃうやろ!のご指摘頂けましたらありがたく。

村上春樹の作品はイミフな事も多いし意図的にケムに巻いてくる、そのくせとても強い求心力もあり、摩訶不思議です。

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