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食う寝るゲーム【APEX】君は「真の野良」と組んだことがあるか

野良。

オンラインゲームでは、
フレンド以外の、ランダムで同じチームになった味方を
刺す言葉
です。

野良猫や野良犬が語源なのかな
と思いますが、
別に野良猫や野良犬は
たまたま道端で出会ったからって
仲間になるわけじゃない
ですから、
少し意味がずれているわけです。

しかし、僕は今日。
真の意味での「野良」とパーティを組んだのだった……。
今夜は、少しばかり、
その話をさせていただけないだろうか……。

■第1話「出会い」

今日も僕は、
トリオに仲間ナシ、1人で挑む特訓をしていた。
マップはオリンパス。
フェーズドライバーに向けて1人で飛び立った。

即降り、しかも1人の時は
とにかく早さが重要。
武器を拾い、
敵を見つけ、攻撃したら即離脱。
1人倒せたらまずは良し。
2人目に倒されるのが普通。
3人倒しきれるのがごくごくまれ。
だからこそ、練習になるし、それはそれで楽しい。

僕が操るブラッドハウンドが
フェーズドライバーに着地したとたん、
「私の近くに敵が着地した」と教えてくれた。
そして後ろで足音。
目の前のスピットファイアを拾い上げ、
すぐに後ろを振り返ると
そこには白いパスファインダー!
殺る!殺らねば殺られる!

……と、2発ほど弾丸を浴びせた瞬間。
パスファインダーが屈伸を始めた。
……諦めてるのか?
戦場に降りてすぐ屈伸。
どういうつもりだ?
味方はいないのか?
いたとしても、悪いけど容赦しないからね。
そう思いながら僕も2度屈伸して、
彼の前から離れて別の敵を追った。

たまたま着地した敵が少なかったフェーズドライバー。
敵はどこぞの誰かを撃っていたが、
どうやら例のパス君と撃ち合っているらしい。
そこを狙って一気に敵を倒しきる。
そしてどうやら残った敵はあと1人……。

フェーズドライバーの敵を全滅!
ラストはナイスキル!……って、
君が倒さなくても俺が倒してたけどな!

そしてその結果、
わかったことがあった。
このパス君もソロだ。
僕と同じように元から1人だったのか、
それとも味方が回線落ちしてしまったのかわからないけど。
もしかしたら僕のダイブ軌道が1筋なのを見て、
後ろからついてきたのかもしれない。

この後も、僕を攻撃する素振りはなかった。
悪い奴じゃなさそうだ。
これも何かの縁……なのかな。
僕はだんだん楽しくなってきて、
彼についていくことにした。

■第2話「追従」

目の前にいる白いパスファインダーを倒せば、
簡単に1キルがとれる。
が、それはしない。
こんな経験は初めてだったので
実際かなり戸惑った。

まずブラハでスキャンを入れるにも
足跡をみるにも
とにかく紛らわしい。

必ず目の前のパスがスキャンにかかるし、
それにもし敵がいたとしても
そこにピンをさしても伝えることができない。
エイムアシストはひっかかってうっとうしい
ガチャガチャ足音はうるさい
ミニマップにも表示されない。

一回こっちがスキャンを入れたら
ビックリして振り返ってた。
俺だっつの(笑)
屈伸して自分であることを知らせると、
何も言わずに走って行った。

多少の会敵はあっても、
戦闘になることはなく、
そのままエステートを抜け
タービンとオアシスの間にある高台まで辿り着いた。
彼は途中でクレーバーを拾ったらしく、
遠くの敵を突っついて遊んでいる。
隣にいるブラハを撃てばいいものを。

■第3話「共闘」

そんな中、近くで足音がした。
スキャンを入れる。
いた。1人。
しかし……問題がある。
それを伝える術がないのだ……。

いや、待てよ。

敵がいる方向に銃を撃てば、
そこに敵がいると察してくれる
だろう。
そしてその予想は当たった。
パスは敵が隠れている方向に銃を構えている。
敵が見えていないはずなのに。
いいぞ……!

本当は人数まで伝えたかった。
敵の人数分だけ撃とうと思ったが、
どうやら敵が1人しかいないらしく、
1発撃っただけでは1人しかいない、ということを伝えられない。

……いや、相手が1人ならあるいは……!いけるか!?
意思疎通は取れないが……通じるかもしれない。
いや……通じるはずだ!

よし!
ナイス!
ナイスナイス!

さっきは君にキルを獲られちゃったからな。
今度はこっちの番だ。ふふふ。
……いや、実際は美味しいところをもらった形か。
別パのドローンも破壊してくれた。
(僕がなぜかEVA8で壊そうとしているのは内緒だ!)

実はこの直前から……
夢を見始めていた。
もしかしたら、上位に残れるかもしれない。
いや……それどころか、
ラスト2部隊まで2人で残れるかもしれない……!

もしラスト2部隊まで残ることができたら……
パスにたくさん屈伸をしたい。
翌日筋肉痛で立ち上がれないくらいの屈伸を。

そんで、近くの遮蔽物に隠れて、
そこでグレネードを遠くに投げる。
その合図で、1対1の決闘をするんだ。
どっちが勝っても恨みっこなしの決闘を……。

■第4話「別れ」

今だからわかることなのだが、
結果的に、
2人で高台を降り、敵を倒した動き。
これは……悪い結果をもたらした。

この動画は、敵を撃破した直後から始まる。

元々奪っていた高台は
いつのまにか敵パーティに制圧されていた。
位置がかなりまずい。
どうにかして遠くの建物、オアシスまで抜けるしかない!
そう思い銃弾で合図を送った……が、
敵に狙われている間の銃声だ。
そんな思いが通じるはずもなかった。

それだけじゃない。
そのオアシスにも、すでに敵がいた。
しかも長物……
僕たちは、
何もない低地に、
しかも長物に挟まれてしまった。

そして……僕はダウンした。

……?

ダウン?ソロなのに……!?

もしかしたら、パスはそう思ったかもしれない。
仲間がいたのか!?騙されていたのか!?……とも。
そうではなかった。
金ノックダウンシールドを
直前に拾っていたのだった……。

まだ……まだだ!
まだ負けるわけにはいかない……!

俺は、あいつと最後まで残って……
そして、2人で決闘をするんだ……!
まだ……諦めない……!

蘇生できるような遮蔽物はそこにはなかった。
それでも、
敵の弾は外れ、
グレネードは僕の頭上を飛び越え、
奇跡的にもう一度立ち上がることができた。
……が、それだけで十分な奇跡だったと思う……。
遠くからの銃弾を回避するも、
逆側の敵に撃たれ……
僕のマッチは幕を閉じた……。

■エピローグ

敵だったはずの白いパスファインダー。
僕が倒れるまでにキルログが流れなかったのが
唯一の救いだった。
僕はパスがどこまで生き残ることができるのか
知ることはできない。
同じように、
パスは僕が倒れたことを知ることはないだろう。

短い時間の、まさに呉越同舟。
ああ、彼が生き残れたかどうか、
それだけが気がかりだ……。
もう彼の結末を知ることはできないのだ……。

彼の結末を知ることはできない。

そう、思っていた。

僕は、思いもよらないことから
それを知ることになるのだった。

いつもなら聞き逃してしまう、
僕を倒したパーティの
ありふれたメッセージ。

「クレーバーを発見。」

クレーバーを発見……。
クレーバーを発見だって……!?

それは……
それは、パス君が使っていた……
パス君の……クレーバー……!

あぁ……パス君。
すまなかった。
もしあの時高台から降りなかったら……
僕たちはもう少しだけ
一緒に戦えたのかもしれないのに……。

彼は何を思っているのだろうか。
高台を降りたことを恨んでいるだろうか。
それとも1人で戦いたかったのに、と
うっとおしく思っていたんだろうか。
もう知ることはできない。

……いや、それを知ることが出来ないのは、
同じパーティになった野良の味方でも同じこと
だ。
「わかってくれるだろうか」
「気づいてくれただろうか」
「感謝は伝わっただろうか」
こんな思いは毎日している。
毎日しているはずなんだけど……
このマッチだけは、
どうか、少しでも僕の
「ナイスファイト!楽しかったよ!」
の気持ちが伝わっていたら。

そう思わずにはいられない、
不思議なマッチなのでした。

■あとがき

あとがき、なんつってね(笑)
いやー、なんかこのマッチが
ドラマチックに感じて、
ちょっといつもと違う感じ、
情感多めな暑苦しい文章で、
プレイ記録を書いてみました。
そうそう味わえない体験だったので!

一応書くと、上記は実話です。
パス君がどう思っていたのかは、
わからないけどね(笑)
うっとおしかったかもしれないけど。

ま、でも、すごく楽しい、
そして少し切ないマッチでした。
楽しい思いができました。
ありがとうパス君!
またやろうぜ。
できることなら……
同じパーティメンバーとして!

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