『学んでみると生命科学はおもしろい』田口 英樹 (著)
「タンパク質はかたちが命」など、キャッチも説明も分かり易く、読みやすい本でした。
【読書メモ】
学んでみると生命科学はおもしろい
田口 英樹 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4860643828/
●タンパク質は様々な生命活動を支えている
食べたものを消化する(消化酵素)
エネルギーを生み出す(代謝酵素)
酸素を運ぶ(ヘモグロビン)
皮膚や髪の毛となる(コラーゲン、ケラチン)
免疫を司る(抗体:免疫グロブリン)
情報を伝達する(ホルモン、受容体タンパク質)
光を発する(ホタル・・・ルシフェラーゼ)
蛍光を発する(クラゲ・・・緑色蛍光タンパク質:GFP)
(p.66)
●「タンパク質はかたちが命」
アミノ酸がつながっただけのブラブラした状態では、タンパク質は機能を発揮できない。立体構造(かたち)を形成してはじめて生命を支える機能分子となれる。何万種類もあるタンパク質がそれぞれ特別の機能を持つのは、究極的には立体構造が違うから。
(p.72)
●免疫に関わるタンパク質(抗体:免疫グロブリン)
抗体は免疫グロブリンというY字型のタンパク質で、Y字の上部2か所に抗原を結合する部位がある。この部位は可変部と呼ばれ、膨大な多様性をもつのが特徴。何百万種類の抗体を作り出せる。この仕組みを解明したのがノーベル賞の利根川博士。パーツの組合せで多様性を持たせている。
(p.85)
●タンパク質の折りたたみ(フォールディング)
(p.90)
●シャペロン:フォールディングを助けるタンパク質
ぎゅうぎゅうの細胞内でタンパク質が凝集するのを防ぐ。
【実験紹介】
卵の白身を加熱すると70度で「ゆで卵」になるが、シャペロンを加えておくと凝集を防ぎ「ゆで卵」にならず透明なまま。
【シャペロンの語源】
西洋の貴族社会において、若い女性が社交界にデビューする際に付き添う年上の女性。
→タンパク質が正常な構造・機能を獲得するのをデビューになぞらえて命名
(p.96)
●リボソームでタンパク質が合成される仕組み
(p.157)
●DNA 複製のエラー
およそ100万塩基に1塩基のエラーが起こる。これによるDNAの塩基配列の変化を変異と呼ぶ。変異は複製エラー以外に、紫外線や放射線被ばくでも生じる。変異の種類や程度によっては生物が死んだり、子孫を残せなくなったりと悪いイメージがあるが、変異によって生物が進化する原動力にもなる。
(p.161)
●人間の遺伝子
ヒトゲノムは46本の染色体
(44本の常染色体と2本の性染色体)
約30億塩基対。長さにして約2m。
(p.170)
●タンパク質を指令する遺伝子はヒトでもたったの3万種類
(抗体のようにバリエーションでこれより増える仕組みは別途あり)
(p.171)
【感想】
あぁ、遺伝子の情報にはアミノ酸配列=タンパク質の情報しか無いから遺伝子が直接作り出せるのはタンパク質だけなのか。驚いた。
●ヒトゲノムの99%はガラクタ?
30億あるDNAの塩基対のなかの遺伝子が3万しかない。ヒトゲノム全体の99%が遺伝子を含まない部分となる。一方、バクテリアではゲノムに遺伝子を含まない領域はほとんどない。ゲノム内の遺伝子を含まない領域は「ジャンク」と呼ばれるが、生物学的な機能が十分に理解されていないだけではないか、との考え方がある。実際、2012年に日本のチームが、ヒトゲノム全体の80%は、遺伝子を含まずとも何らかの機能をもっている、との報告がなされた。
(p.172)
●一人一人のゲノムは同じではない
ヒトゲノムの塩基配列は99.9%は同一だが、0.1%が個人個人で異なる。この違いが、体型、性格などが違うことの遺伝子レベルでの説明。比較的高頻度で塩基配列が出現するとき、その塩基配列の違いを一塩基多型(SNP:スニップ)と呼ぶ。SNPは特定の病気へのかかりやすさ、薬の効きやすさなどの個人差につながることがわかりつつあります。
(p.173)
【感想】
0.1%の違いが、個人個人の差なのかぁ。
●アスピリン(アセチルサリチル酸)
古代から、ヤナギの樹皮に鎮痛作用が含まれると知られていた。これはサリチル酸だが、胃腸を害する副作用が強いため、化学構造を少し変えて副作用を弱めたのがアセチルサリチル酸。
【アスピリンの作用機構】
アスピリンはシクロオキシゲナーゼという酵素に結合して、この酵素のはたらきを抑える。シクロオキシゲナーゼは、プロスタグランジンという炎症作用を引き起こす物質を合成する際の重要な酵素。プロスタグランジンがあると痛みが生じる。そこで、痛みを止めるため、シクロオキシゲナーゼを止める目的でアスピリンを使う。結果、アスピリンが鎮痛作用を持つ形になる。
最近では、低用量のアスピリンを飲み続けると心筋梗塞を防ぐ効果があることも知られている。
(p.203~204)
●タミフル
インフルエンザウイルスがどのように増殖するかを分子レベルで研究した成果をもとに、人類が創った完全に新規の薬。
インフルエンザウイルスの表面のノイラミニターゼという酵素が多数張り出していて、感染した細胞で増殖する際にはたらいている。そこで、このノイラミニターゼの機能を抑えるため、ノイラミニターゼの立体構造をまず解明した。そして、ノイラミニターゼが機能する際に大事な部分にすっぽりはまり込む分子がコンピュータで設計した。設計した分子を有機化学的に人工合成し、効果をみながら改良を重ねたものがタミフル。
(p.205~206)
【感想】
新型コロナのmRNA、スパイクタンパク質と対策手法は同様。製造方法が異なる。ということですね。
●より深く学ぶためのお薦め本
『細胞の分子生物学 第6版』必携テキストとのこと
Kindle版は章ごとに25巻に分けて販売