きゃりーぱみゅぱみゅ なぜ炎上したのか? みえてきたネット社会の病理と処方箋
「#検察庁法改正案に抗議します」とツイートしたきゃりーぱみゅぱみゅの投稿が炎上した。
きゃりーぱみゅぱみゅ って、何というか、変な言い方になるが、”現実世界の人”と言うよりは、”空想世界のポップアイコン”と言った感じの存在ではなかろうか。
だから彼女がどんな発言をしようが、ただのエンタメって感じで、あまり真に受けることではないのではないか。
そんな印象だっただけに、今回彼女がtwitterで炎上の標的になったことは驚きだった。
一体全体、世間は きゃりーぱみゅぱみゅ という”空想世界のポップアイコン”に対して何を要求しているのだろうか?
一連の炎上劇について考えた結果、この国特に日本のネット世界に潜むヤバい病理が明るみになった。
このまま社会は腐蝕していくだろう。そして我々は不幸な国の住民へと落ちていくのだろう。
きゃりーぱみゅぱみゅ 炎上の経緯
5月9日、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグがつけられたtwitterの投稿が急増した。
数多くの芸能人や著名人もこれに参加し、5月10日の夜には500万件近いツイートがされたと言われている。
『検察庁法改正案』とは、5月8日に与党によって審議入りが強行された、検察官の定年延長に関する法案である。
調べてみると、要するにこの法案が「政権による司法への不当な介入であり三権分立を侵している」「いまはコロナウイルスの国会答弁を優先すべき。どさくさまぎれに法案を通すな。」などの理由で、激しい批判の対象となったようだ。
そして、きゃりーぱみゅぱみゅも「#検察庁法改正案に抗議します」に参戦。
投稿には、誤った情報が記載された’相関図’を添付し、ついに着火、炎上がはじまった。
「影響力がある存在であることを自覚して、内容を精査してから投稿しろ」「歌手なんだから政治には口をだすな」などの批判ツイートが相次いだ。
さらにその後、この自体に対してきゃりーぱみゅぱみゅは投稿を削除の上、謝罪コメントを掲載した。
しかし、その謝罪内容が「炎上の原因を、友達やファンのせいにしている」などと、火に油を注ぐこととなり、収集のつかない事態に至ったのである。
なぜ、きゃりーぱみゅぱみゅが標的になるのか?
なぜ今回、きゃりーぱみゅぱみゅが炎上の標的になったのか?
●ルサンチマン 弱者から強者に向けられた攻撃心理
「ルサンチマン」とは、弱者が強者に対して抱く、恨みや憎しみの感情である。
人は、この感情をある手段を用いて晴らさずにはいられない。
そこで生じるのが、「価値の転倒」だ。
価値を転倒させることで、フラストレーションを晴らすのだ。
例えば、本来だれもが「お金を手に入れたい」という欲望を持っているはずである。
しかし、それが自分には実現できないものだと知れば、お金持ちに対して嫉妬心を抱く。
このフラストレーションを解消するため、「お金は不浄なもの」「金持ちは皆悪いことをしているに違いない」と、お金に対して抱いていた価値を転倒(逆転)させるのである。
今回の件で考えると、きゃりーぱみゅぱみゅ という成功の象徴に対して、通常ほとんどの人は社会的成功を手に入れることはできない。
そこで「成功者は影響力が大きいのだから、発言に気をつけるべし」「アーティストなんだから世間知らずで不勉強なんですね」などという、成功者に対する価値の転倒が生じた。
また、きゃりーぱみゅぱみゅ というと、どうしても派手なメイクや衣装、そして口パク(?)とも言われ、マスメディアとそのプロデュース力によって成功したアーティストといったイメージが強い。
偏見じみた言い方をすると、「苦労せず成功したアーティスト」という認識をもたれやすく、民衆のルサンチマンの対象になりやすかったのだろう。
●認知度が高い有名人や経営者は、炎上の対象になりやすい
最近の炎上で他に記憶に新しいものとして、孫正義氏の「コロナ検査を100万人に無償提供」ツイートがありました。
炎上しやすい有名人にはある共通点があります。
それは、大衆が広くその人の提供しているサービスを利用している、ということです。
きゃりーぱみゅぱみゅ は、音楽番組によく出演していて、みなさんよく観ていますよね。
孫さんは、携帯電話(ソフトバンク、Y!mobile)を利用している方も多いでしょう。
また同時に、いずれも熱狂的なファンや支持層がいるものの、「この人まぁまぁいいよね」「割と好きかな」ぐらいの、大衆が広くその人の提供しているサービスではないでしょうか。
結果としてどうなるかというと、
「あなたたちは我々が消費してることで成功を得ているんだ。だからの庶民の意見を重く受け止めなさい。」と言わんばかりの態度をとってしまうのでしょう。
ある調査によると、一番炎上しやすいのは法人のようです。
例えば2019年には、シャープやキリンビバレッジがツイッターで炎上しています。
これも同様の考え方で説明がつきます。
大衆が広く商品を購入していますが、軽めの支持層が多いのです。
「今まで何度も買ってあげたおかげであなたの会社は成功しているんだ、だから庶民の意見を重く受け止めなさい」と考えてしまうのだろう。
また、こうした考えの根底にあるのは「お客様は神様」という日本独特の考え方です。
日本が欧米に比べて炎上が多いのは、この考え方が一因となっているのでしょう。
なぜTwitterは炎上しやすいのか? そこに潜む危険性とは?
●非対称性 顔を出している人と顔を出さない人のアンフェアな戦い
ツイッターで炎上が起こりやすい最大の原因の一つとして、炎上させる側のアカウントが、ほとんどの場合顔を出さず、本人を特定できないことが考えられる。
一方で炎上する側、きゃりーぱみゅぱみゅ は、本人を特定できるアカウントである。
こういう状態を「非対称性」という。つまり、フェアな戦いでないということである。
両者を比べたとき、個人を特定されないアカウントの方が、積極的な攻撃を行うことができる。一方で本人を特定できるアカウントのほうは、自身のイメージを損なわないためにも、防戦一方になるしかない。こうして、「いじめが起こりやすい」環境ができるのである。
●社会比較説 炎上を加速させる因子
人は同じ意見をみると、「自分の意見は正しいんだ」と自信をもち、意見がより強化されるという性質を持つ。これを「社会比較説」という。
つまり、人は常に周りと比較し、自身の立ち位置を確認したがる。そして、自身の立ち位置が間違ってないとわかると、自信を帯びる。
Twitterでは、自分のお気に入りのアカウントだけを簡単にフォローできる。
その結果、瞬く間に自分と近い意見に囲まれるようになる。そんななかでは、「やっぱり自分が思っていたことは正しかったんだ!」という確信さえ芽生えてしまう。結果として、自分と異なる意見を発見するにつけ、批判を入れずにはいられない気持ちになってしまう。
●攻撃手段の所有 人は武器をもつと攻撃的になる
ここでいう攻撃手段とは、あなたのtwitterアカウント、特に本人を特定できないアカウントのことである。
人は、攻撃手段が手元にあると、攻撃性が増すことが、心理学的に証明されている。
むかし流行ったが、非行少年たちがサバイバルナイフを持つことで気が大きくなり、恐れ知らずになるのも、その一例だ。
個人を特定できないアカウントはあなたの武器となり、無意識的にあなたの攻撃性を強化する。結果、炎上に加担しやすい攻撃的な人間性を作り出すのである。
なぜ日本には炎上が多いのか?
「炎上」は、いまや日本のお家芸のような独特の社会現象であることは有名だ。
欧米では、多くの著名人が過激な政治的発言をするが、炎上は起こりにくい。
この理由は多様性、いま風にいえばダイバーシティの概念が浸透しているからだ。
つまり、他人の意見も一個人の意見として尊重する文化が欧米にはある。
一方で、炎上の多い国として日本以外に有名なのが、中国と韓国だ。
日本と中国、韓国に共通する文化背景はなんだろうか。
それは「同調圧力」である。
同調圧力が強い国では、炎上が起こりやすいのである。
「空気を読んだ発言をしろ、読めないヤツは叩かれて当然だ」という共通認識が存在する。
日本は歴史的に、「五人組」「隣組」「村八分」などの社会制度があったが、これらは同調圧力が日本社会の根底に深く根付いていることの象徴である。
日本で炎上が起こりやすいのは、こうした古来からの文化もその一因になっているのだろう。
さいごに 勝ち組になりたければ炎上と関わるな!
僕のメディアの過去投稿でもまとめましたが、
怒ることは百害あって一利なしです。つまり、炎上に関わることは、あなたの身体的・精神的健康をみずから害し、幸福から遠ざかることになります。
さらには、コメントの内容しだいでは名誉毀損罪に問われることがあります。
また、個人の社会的発言の萎縮につながるものとして、社会的なデメリットでもあります。
実際に炎上に参加する人は、ネットユーザの0.5%程度しかいないとのことです。
これは、大規模な炎上が発生したとしても、この国の人口全体でみれば、わずか0.01%みたいな極めて少数の意見でしかないと言うことです。
正直、あまりに少数派であり、とるに足らない意見と言っても過言ではないでしょう。
以上から考えると、とにかく炎上に関わらないことが幸せへの近道なのです。これが本記事の結論です。
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でもそんなことは誰でも感覚的にはわかっていたことかもしれません。
それでも炎上が起こるのはなぜか。
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それではまた!
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