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【表現評論】メモリーズオフ イノサンフィーユ コアレビューその22 ライトサイド 寿奈桜ルート3【全作再プレイシリーズ】
●メモオフシリーズ、その他作品、様々なネタバレが含まれます。
⚫︎前回の記事
⚫︎はっきりしない男
出て行った寿奈桜を追いかけようとすると、ノエルに呼びかけられます。でも何も言わない。行くなとは言えないし、行けとも言えない。選択肢が出てきますが、当然追いかける方を選択。
「俺は……嘉神川さんのことが……だけど」
「だけど……その」
「……楠瀬さんが」
「楠瀬さんがはっきりしてくれないからっ!」
え? 俺? なんで毎回俺のせいやねん。お前が言ってくれてもええんやで。私は楠瀬さんが大好きだからナオちゃんは諦めてくださいって言えば全て解決ですよ。なんで姉妹揃って毎回毎回俺が悪いみたいになってんねん。たまには自分の力でなんとかしてみなさいよ。全部他人任せでいいんか? 令和は女も責任を取る時代なんですよ。まあそんなもん建前だけどさ。女にも責任をとっているように錯覚させ、自己肯定感を高めさせ、でも実態としては男が責任を取っている。そんなハードな役割が課せられているのが令和最新男性です。わりぃ。やっぱつれぇわ。
「わたしだって、どうしたらいいのかわからない! でも……楠瀬さんのこと好がき(原文ママ)で、ナオちゃんは応援してくれてっ!」
こんな真面目な場面で誤字ってるの初めて見た気がする。いかんでしょ。こういうのアプデですぐ直せそうな気はするんだけど、やらないんですかね。ノベルゲーにアップデートは入るイメージはないですね。つまりやらないと。
「諦められなくて! 苦しくてっ! きっとそれはナオちゃんも同じで……っ!」
「でも、ナオちゃんの味方もできなくて……わたしは……」
「……行ってあげてください」
メモリーズオフ的な等価な二択が入ります。まだどっちと付き合ってるわけでもないからね。伊波師匠的な倫理のおかしさがあるわけでもない。ノエルを選んでも寿奈桜を選んでも倫理的には等価だと言えます。だからどっち選んでもいいんだよこんなもんは。何選んでも誰かから文句言われるし後悔するんだから。自分が選んだものが最善だと決めて生きていくしかない。そう。「決める」しかない。ということで累君は寿奈桜を追いかけることを選びました。
⚫︎良い人の三角関係
出て行った寿奈桜を公園で発見。ここで一枚絵が入ってますが、やっぱりイノサンフィーユの一枚絵は最高のクオリティです。これだけは明確に本作が一番優れてると言える。構図もいいし、作画もいいし、手抜きもないし。
発見したは良いものの、いきなり怒られます。もう何やっても誰かから怒られますわ。何やっても怒られると言うことは、何やってもいいとも言える。どうせ怒られるんだからさ。
「ルイ兄! 嘉神川は、アイツはあんたのことが大好きなの! 必要なの!」
「側にいてあげなきゃダメじゃん! ウチなんかに構ってる場合じゃないっしょ!?」
「ウチだったら……」
「もしもウチだったら、そうしてほしい! 自分だけをみててほしい! 好きな人には!」
ノエルのそばにいてあげてと言ってますが、これは実質自分のことを言ってるよね。自分にそうして欲しいとは言えないので、ノエルに仮託して発言している。いやぁ。ズルいっすわぁ。でもこういうズルさはいいよ。許すよ。楠瀬さんがはっきりしないからとか、お前が鍵開けたんだからなんとかせえはダメです。人に責任を押し付けるなと。
「寿奈桜ちゃん……俺は……」
「聞きたくない! 帰って!」
「嘉神川のこと置いて来たんでしょ!? そんなの、許さない!!」
「でも!」
「……お願い」
「じゃないと、嘉神川が可哀そうじゃん」
「もしルイ兄が、このままウチなんかのために、嘉神川のこと放っておくなら……」
「ウチは、自分のことを許せないよ」
良い人特有の譲り合いと諦められなさで泥沼にハマっていく人達。メモリーズオフって毎回ダブルヒロインって言ってるけど、こういう良い人たちの泥沼展開ってあんまりないですよね。かろうじてりりす智紗くらいか。霞ちなつは争う要素がなかったし。詩名ちなつもその辺は適当に誤魔化してたし。2nd? あれは伊波師匠という悪人の三角関係だから除外で。ショーゴ君も同様。雅いのりとか縁いのりもちょっと違いますね。あれは取り合いだから。譲り合いの要素は全くない。最後にいのりが譲るんだけど。ちはやと陽詩も譲り合って泥沼っても良さそうな関係性だけど、ちはやがあっさり諦めて終わりましたからね。
「ルイ兄もみんなも、ウチのこと、良い子だとか言うけど……」
「素直とか純粋とか、みんなウチをからかうけどっ!」
「ウチは汚い! ルイ兄を好きなれば(原文ママ)なるほど……っ!」
「ウチはどんどん可愛くなくなっちゃう……」
「何もできなくて暗くて、人を傷つける……そんなウチになってくんだ……」
また誤字だよ。今回のパートどうなってるんだ。寿奈桜の自己肯定感の低さが現れる一節です。こんなウチなんて、好きになってもらう資格はないんだ的な。霞とか雅師匠の謎の自信を少し分け与えたいくらいだわ。なぜ奴らはあれほど自信満々なのか。顔か。顔なのか。
寿奈桜は自分が悪い子だと思ってますが、むしろ良い子だからこうなるんだよ。良い子だから救えないものがある。みんな良い子だから、最良の行動を取ってしまう。最良の方法が最善の結果を生むとは限らないんだよなぁ。ってFFTでも言ってましたわ。ラムザでは救えないけどディリータなら救えるんだよなぁ。人生の全てをゲームで学んだ男。