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【表現評論】メモリーズオフ イノサンフィーユ コアレビューその35 ヘビィサイド Twinルート5【全作再プレイシリーズ】
●メモオフシリーズ、その他作品、様々なネタバレが含まれます。
⚫︎前回の記事
⚫︎琴莉誕生の経緯
まず過去の事件で柚莉はPTSDを発症しており、さらに入院している母親が「琴莉ちゃんがいないのはおかしい」と言い始めたため、柚莉が琴莉の真似を始めた話があります。それを続けている内にガチで琴莉の人格が生まれたという経緯のようです。これは完全に忘れていました。そんな事情があったのか。
以下秋村先生と莉一のやり取り。
「解離性同一性障害は、違う自分になりたいといった強い願望から発症することが、海外で確認されている」
「妹さんがいないとおかしい。妹さんがいれば……」
「あるいは、妹さんの代わりに生き延びてしまったというサバイバーズ・ギルト、罪悪感から柚莉くんは……」
え〜。まず私、サバイバーズギルトをサバイバーズギルドと勘違いしてました。ここで謝罪しておきます。綴りを考えたら明らかなんですが、なぜかずっと勘違いしてました。過去の誤字も読み替えといてください。
それにしてもなぜかくん付けの人が多いですね。相葉さんの柚莉クンとか、秋村先生の柚莉くんとか。若干違和感がある。
発症の経緯は分かったとして、海外でしか確認されていないような症例がこの病院で見れるのかという疑問が湧いてくる。秋村先生はとてつもない権威なのか。
⚫︎累が呼ばれた理由
累が北海道から呼ばれたのは莉一が柚莉を治療する為だったということが莉一の口から語られます。以下莉一の思考経路。
母親が琴莉を求めたからDIDが発症した
↓
本当に必要なのは柚莉だと認識させれば症状はおさまるんじゃないか
↓
もしくは琴莉は求められていないと認識させればいいんじゃないか
↓
それなら北海道から累を呼んで柚莉とくっつけよう。もしくは、累が他の誰かとくっつけば琴莉は求めらてないと思って消えるだろう
妥当性はともかく、素人が勝手に治療するなよと言いたい。秋村先生の許可は取ったんか? そもそも累ちゃんの初恋の相手なんだから、お互い燃え上がるに決まっとりますやん。これは致命的なミス。莉一も琴莉の存在がそこまでしっかりと再現されているとは思ってなかったようです。
そして柚莉のためにも、今後琴莉とは会わないように念押しされます。それはそうだけど、累ちゃんのショックも考えてくださいよ。天国から地獄どころじゃないよ。親友でしょうが。
「まだ、柚莉ちゃんに戻りたくない……柚莉ちゃんだって琴莉が体を借りること、認めてるもん!」
「琴莉……」
「累ちゃん……累ちゃん!」
「一緒にいたい……1分1秒でも、そばにいたい! 本気なの!!」
病院で別れ際に聞いたセリフ。琴莉は自分が柚莉の体であるという認識があるのか。DIDってそういうものなんですかね。柚莉の方も認識は同じなのか。でも柚莉は琴莉が生きてるって言ってましたからね。自分の人格の一つにすぎないという認識があったらそんな話になるか? それとも柚莉が嘘をついたのか。琴莉人格の方が事態を把握できていそうな感じがある。
それにしてもこんなもん聞かされたらトラウマになりますわ。初恋の女やぞ。もう二度と会うなとか無理ですよ。
⚫︎悲しき過去
過去の事件で燃え盛る家から琴莉を一緒に脱出しようとした話が出てきます。結局脱出できずに、最後にこんなやり取りがあったと。
「かさねちゃん、その手……絶対離さないって約束して?」
「琴……莉……」
「お願い」
「うん……」
「もし、約束をやぶったらーー」
「ことり、かさねちゃんのところに……化けて出ちゃうんだから……」
こんなことがあったので、累ちゃんは琴莉が霊になって柚莉に憑依してるんじゃないかとすら思ってるレベルです。あまりにも悲しい。
「ことりは……ずっと前から……ね……」
「大好きだったよ……」
「大好き」
そして病院で目が覚めた後、そこには誰もいなかったというガチの悲しき過去です。メモリーズオフの中でも一位二位を争うくらい、ガチのトラウマの持ち主である。
でも俺は……琴莉を守りたかった。大好きだった女の子をこの手で、救ってあげたかったんだ。
約束を果たさなかった俺に琴莉が怒り、柚莉の中に棲まう別人格として再び俺の前に現れたーー
馬鹿げているとしか言えない、非科学的な話。普通に考えたら、ありえるはずもない。
そう頭では理解していながらも、もしかしたらという考えがよぎってしまうほど、あの琴莉の声が俺の中で強く響いていた。
二度と取り返しのつかない過去を悔やんでいたところに、もしかしたら取り返しがつくかもしれないなんて事態がやってきたら、正常な判断なんて普通無理ですわ。悔やんでも悔やみきれない過去を清算して、初恋の女と再び結ばれるなんて機会が目の前にあって、それでも冷静な判断ができたら、もはや人間ではない。累ちゃんは人間だった。すげぇ主人公を痛ぶってくるな。この作品。だんだんとヘビィサイドの本領を発揮してきている。ライトサイドも重いシナリオだったけど、ヘビィサイドはさらにその上をいく。
メモリーズオフは主人公のトラウマ度が年々えげつなくなってるんですよね。大輔は一族から総攻撃されて幼馴染から殺されかけた挙句戸籍上死んだ扱いにされるというガチの悲しき過去だし、累ちゃんも初恋の女が目の前で死んでいくというウルトラハードなトラウマの持ち主だし、隼也も交通事故で自分は大怪我して兄は死ぬという最大級のトラウマだったし。新作は今のところそういうのはなさそうだけど、どうなることか。