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半蔵門線の始発でカスが叫ぶ

そう。
あれは六本木で遊んだ日のことだった。

たまに行くクラブ。
ドリンクチケットで飲み物を手にして、なんとなく音楽を聴きながら友達と話していたら、遠くから手招きされていることに気が付いた。

六本木にいがちなスーツの男性数名。
VIP席に座っている。
「スタッフでもないのになんで手招きで行かなきゃなんないのさ」
と思って知らぬふりをする。
その後も友達と踊りながら、声を掛けてくれる人と話をしたり、お酒をご馳走になりながら楽しく過ごしていた。

トイレへ向かう時、VIP席の近くを通った。
さっき手招きしていたスーツの男が駆け寄り、手を掴んだ。
「こっちで一緒に飲もうよ!」
私は「あー、、友達と来てるから、聞いてみるね」お伝え、友人に話すと「まぁいいんじゃない?ちょっと飲ませてもらおうよ」と。

VIP席へ移動すると、他にも女の子や外人もいて和気あいあいな雰囲気に、好感が持てた。
「大人数で楽しく飲むのが好きな人達なんだろうな〜」と思った。

恐らく、スーツの3〜4人の男性が仲間で、それ以外はこの場でなんとなく飲んでる人だろうと察した。
そしてショットやスパークリングのボトルが定期的に何本も回ってくるので貰っていると、声を掛けてきた男が「友達と2人で来たの?」から始まり、「どこに住んでるの?勤務地は?」など、割と端折った会話の後に連絡先を聞いてきた。
ご馳走になっているし、ビジュアルも良いのでLINEを教え、そこで1〜2時間を過ごして箱を変えることにした。
「ご馳走様!他に行くね〜!ありがと〜!」と告げると「こちらこそ!またねー!」とあっさり離してくれた。

そして別のクラブへ行き、朝まで遊んで帰宅した。

そして次の日「昨日はありがとう!今日何してる?ご飯でも食べに行かない?」と連絡が。
「週末なら大丈夫かなー?」と送り、しばらくラインをやり取り。
なんか話が噛み合わない。
多分笑いのセンスの違い、、?
落とし所のない違和感を感じながらやり取りをしていると
「モツ鍋好き?」と。
好きだと返事をすると
「旨い店ないかなー?」と。
え?美味しいお店を知ってるから聞いたんじゃないの?
本当、なんだか少し感覚がズレる。
「調べておくよ。」と告げると
「旨いモツがある肉屋ないかなー?」
、、ん?
「本当に旨いモツで鍋したい」
、、??
「お肉屋さんのモツを持ち込みたいってこと?」
「いや、モツ鍋家でやりたいなって」
あー、連れ込みたかったのか。
なんてスマートじゃない誘い方なんだろう。
「ここのお店どう?予約しようか?」
と、話を逸らすと
「ありがとう!」
、、うーん。
結局食べたい物をリクエストして、女に店を探させて、予約させたよね?この人?
一応初デートだよね?
でもまぁ4〜5歳年下だったから、お姉さんの余裕って事で目をつぶろう。と、どことなく続く違和感に蓋をした。

その理由は、顔がタイプだったこと、スーツを綺麗に着こなしていたこと、クラブでの遊び方が嫌いではなかったことだった。
そして、初見やテキストのやり取りでしっくりこなくても、楽しくお酒を飲めたり、それ以上になれたり、長く友達を続けられる人も沢山いると経験上感じていたからでもあった。

待ち合わせの日、相手は大幅な遅刻。
寒い日だったので、先にお店に入って待っていると告げた。
しばらくすると彼はやってきた。
「本当ごめん!仕事が押しちゃって!!」
「全然大丈夫。遅くまでお疲れ様。さ、早くあったかいの食べよう!」
そして乾杯し、食事を始めるものの、、
やはり話は楽しくない。

「どんな仕事してるの?」「住まいはどの辺?」
よくある最初のやりとり。
これだけでも楽しくないと感じさせるスキル。
なんなんだろう、、?
ダメだ、もう仕事モードでやり過ごそう。
私のホステス歴10年の板についた接客術で彼はとても楽しそうにお酒を飲んでいった。

そして、そろそろお席の時間です、とお店の人から声が掛かった頃にはだいぶ出来上がっているようだった。
「顔真っ赤だけど、大丈夫?」とたずねると
「顔に出易いんだよ〜」
と言いながら会計をしてくれているので、会計の7割ほどを渡した。
そして金額を確認してしまう彼。
、、ん?
普段会計は男性を立ててお願いして、お店の人に見えないところで多めに渡す私だけど、大概が「いや、大丈夫だよ」「ご馳走させて」という返答。
または「多過ぎるよ」や「じゃあコレだけ貰っていい?貰ったのでコーヒー買いに行こう」とほとんどを返してくれる人。
そのどちらでもなく、普通に懐に入れた。

そしてふと思い出した。
会う前のやり取りで向こうから「奢り?笑」という一文があったことを。
なんてつまらんジョークしか言えないんだろうと思いながらも「食い逃げ♡」と返しておいた私。
あの「奢り?笑」は、本気だったんか〜。と半ば呆れて眺めていた。

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