本当にあるんじゃ、コヨーテアグリーなバーは。
それは私がまだピチピチでイケイケだった時じゃった。
日本にある、外国人が多く来るバーでバーテンダーをしておった。
毎日、ハイヒールを履いて、お股から5cmあるかないかのピタピタのスカートを履いて、腹を出して、オッパイが溢れそうな格好をして働いておった。
平日は暇で、常連の外人に英語を教わりながら酒を飲ませてもらい、カウンターで座ってタバコをふかしながらのんびりと過ごしていた。
そして貰ったチップで朝ごはんを買って帰るのだ。
しかし週末ともなると、平日に飲めない外国人達が押し寄せる。
そりゃもう異常に。
あっちでケンカ、こっちでナンパ、そっちでなんかもう阿鼻叫喚、からのトイレは吐いてて全然出てこない。みたいな地獄絵図。
そして「ヘイ!イエガボム30ネ!」みたいな。
グラスたんねぇわぁ〜っていうのが通常営業。
そしてまぁ飲まされる飲まされる。
テキーラは数分に一回まわってくる。
もちろん普通に飲んでたら仕事にならない。
でもまぁ大概みんな酔っ払ってるので、酒を作ってるところを凝視なんてしていないからね、あらかじめウーロン茶を水で薄めたのをショットグラスに入れて手に持って待ち構えておく。
が、カウンターでショットグラスを並べて直接注いだテキーラを「飲んで!」と親切に渡してくれる紳士も多い。
そんな時は、映画【コヨーテアグリー】の一節にもあるように、口に含んだテキーラを飲み込まず、テキーラの後にビールを飲んでいるふりをして、ビール瓶に吐く。または、急に振られてそんな暇さえない時は、おしぼりを掴んで、そこに染み込ませる。
イエガーはコーラ、イエガーボムはショットグラスにコーラ、グラスにレッドブルでまぁ暗い店内で人がごった返していたらだいたい誤魔化せた。
そんな風にして売り上げに貢献しながらも、チップをガポガポ貰っておりました。
経営してたらめちゃくちゃ儲けてたな〜
働いてみて、意外と外人相手のバーテンダーって、結構普通の子が多いなーって。
だもんで、派手なメイクに派手な服装の私は珍しいため、ハマる人はハマるので(無理な人はマジで私に嫌悪感すら感じてたけど)よく、噂に聞いたといって色んな人が口説きに来てくれた。
ホテルのアドレスが書いたカードに部屋番号を書いて、200ドル置いて「良ければ来て」と言って去る紳士とか。(コールガールだと思ってたんか?だとしたら無駄に3万以上払っちまったな!)
釣りは取っといて、と言ってビール一杯で100ドル払う私にゾッコンの若者とか。(貯金ないだろうなーって思いながらもらってた。)
これぞ、若い時しかできない稼ぎ方。
今は絶対無理だもんな。
見た目も、体力も。
今ならもう着物に割烹着で小料理屋がいいもの、私。
そしてアメリカ人のオーナーは、勤務初日に
「客が来たら挨拶なんてしないでいいから!腰に手を当てて、睨んで、いい子にしなければ酒は出さないから。って感じで!」
と言って来た。
何そのスタイル。
衝撃。
日本じゃお客さんにヘコヘコシステムですけど!
ってびっくらこきましたけど、客も外人なんで、その待遇には慣れてるご様子で、私のご機嫌を取ってくるお客様達。
これぞ本当のお客様は神様です。
精神的に楽だったな〜
(そういえば、外人相手の美容室では、シャンプーだけしかしてないのに、シャンプーに感動したっつって50ドルとかくれてた。
外人がするシャンプー、お客の服びしょびしょにすんねん。
日本人って本当丁寧な人種よね。)
でも、女達からの視線がヤバい。
私の偵察にめっちゃ来る。
でもまぁボスからの言いつけでもありますし、媚びないスタイルでやってたんで、話せば女子のが固定客になってくれるという。
楽しかったあの頃。
あれから私は酒瓶を哺乳瓶に持ち変え子育てにいそしんでまいりました。
あの頃の事がもしかしたら夢だった気もしなくも無い今日この頃。
だって外人相手に商売してたはずなのに、今はもう日常会話どころか、挨拶すらできないし。
whyなの?
そういえば10年くらい習ってたはずのピアノも、今はもう楽譜がト音記号とヘ音記号しか読めない。
あ、横棒ついたドだけわかるや。
この忘却力。
立派な中年になったなぁ。
もう立派な中年になったので、あの頃のパーティドレス達なんて絶対に着ないのに全然捨てられないのはなんでなんだろ。
60歳くらいでもうひと花咲かせてみっかな!