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デザインライターの日常

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日々のひとりごと。思ったこと、考えたこと、悩んでいること、楽しかったこと。犬との暮らし。
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#エッセイ

今、がんばることが、いちばんラク。

今、がんばることが、いちばんラク。 これは10年以上前、ある雑誌の取材でお会いした人気クリエイティブディレクターさんが言っていたことです。 取材の合間の雑談で、何件も仕事を同時進行させているという話を聞いて「モチベーションはどうやって維持されているんですか? 下がっちゃうことないんですか?」といった質問に対する回答だったと思う。 理由はシンプル。がんばらないで手抜きしたら、その瞬間はラクかもしれないけど、その後が大変。逆に色々めんどくさい、と。 仕事の完成度が低ければ

今、わざわざ行きたいところが大切な場所。

矛盾を曖昧にする寛容さも必要なのだな、と思う今日この頃。 自粛しながら行動する。 今はうまくバランス取りながら、自分なりに「自粛」と「行動」を両立させていくしかない。もちろん感染対策はとりながら。 じ‐しゅく【自粛】 自分で自分の行いをつつしむこと。「―を促す」「報道を―する」 こう‐どう【行動】 ある事を行うこと。しわざ。おこない。「すみやかに―する」「―をおこす」 楽観的過ぎるのは怖い。でも、悲観的に考え過ぎるのも怖い。たしかに再び一斉に自粛すれば感染は一時おさま

人生にも夢あるビジョンを。 読書記録「英国海兵隊に学ぶ 最強組織のつくり方」

企業やブランドには、夢のあるビジョンが必要。夢のあるビジョンは、人々の自発的な行動を喚起する。 これは「英国海兵隊に学ぶ 最強組織のつくり方」という本に書かれている一節です。元英国海兵隊の将校が、軍隊式のマネジメント手法をビジネス向けに再構築した「ミッションリーダシップ」について解説しています。 軍隊式のマネジメント手法と聞くと、トップダウンで高圧的、精神論的なものをイメージしがちですが、決してそうではありません。 むしろ、その逆。 「何をどのようにやるか」という命令

「なんかダサい」は、奥深い。

広告賞を受賞して喜んでいた。だけど、広告本来の目的である「売り上げ」は伸びなかった。広告賞を受賞するために仕事をしていた自分って、なんかダサいなって思った。 少し前、博報堂のクリエイティブディレクター、河西智彦さんにインタビューしたときに聞いたことです。 大阪の遊園地「ひらかたパーク」のテレビCMを手がけ、広告賞を受賞し、「広告業界」で話題になりました。しかし、残念なことに来場者は伸びず。それ以来、河西さんは自らを「売り上げ至上主義」と称し、面白くて売り上げも伸ばす広告を

人生相談の読み方。

「世の中のほとんどの人間は不細工です」 これは、日経新聞の人生相談「なやみのとびら」 で回答した大石静さんの言葉。 「学歴もなく外見もきれいではなく、お金も仕事もない」と悩む39歳の女性に対する回答です。 「39歳でどんな仕事があるのか」という弱音に対しては、自らの経験を基に背中を押す、愛のある心強いメッセージが綴られています。 私がテレビドラマの脚本家としてデビューしたのは35歳の後半です。あなたとさほど変わりません。それまでは何をやってもパッとせず腐っていました。

もう優しい父しか思い出せない。

薫ちゃんのお婿さんは、お父さんが見つけてあげるからね。 たしか5、6歳の頃。私の足の爪を切りながら父はそう言った。 なぜ、そんなこと言ったのかな。 なんだかちょっと恥ずかしくて、だけど父の温かい気持ちが伝わって嬉しかったのを覚えている。 六畳くらいの和室の片隅に広げた新聞紙や、網戸越しに見えた小さな庭。父の言葉と一緒に、そのときの情景がありありと目に浮かぶ。忘れられない思い出の一つ。 庭には物置と水色のブランコがあり、物置の上は葡萄棚だった。おしろい花やサルビア、パ

【恋の香り】毎日、犬と散歩。季節や時間帯、天気によって外の空気の匂いは違い、それを感じることは散歩の楽しみでした。今夜誰もいない場所でそっとマスクをずらして深呼吸したら、暮れて静かな空気に混ざっていたのはジャスミンの花の香り。好きな人の家の庭に咲いていたことを思い出した夜8時。

【恩師のおかげ】私の文章を最初に褒めてくれたのは、小学校のときの先生です。今の私を見たら「薫らしい仕事してんじゃん、がんばってるね!」と、きっとまた褒めてくれるはず。もう亡くなっていて会えないけど、先生は私の心の中で生きている。先生に出会えてよかったと思う、仕事終わりの夜7時。

【赤いペディキュアの効果】もともと在宅ワーカーの私。家でひとり機嫌よく気分よく働くコツをいくつか持ってます。そのひとつが裸足で過ごせる季節になったらペディキュアを楽しむこと。足に塗るのは簡単だし、見るたび可愛い♡と気分も上がる。自分を大切にしてる実感もわいて癒される。特に赤が好き

【原稿料の話】私の気持ちを汲んで丁寧に連絡をくれる方がいる。心遣いの有無はちょっとしたやりとりで伝わってくる。私はそんなに鈍感じゃない。「誰かに教わるものではないよね」と友達。さっきも心温まる言葉が届き、私も見習おうと背筋が伸びた。信頼し合える人と前向きに仕事しようと誓う22時。

インスタはなぜ飽きないか。私の場合。

子どもの頃から犬が大好き。 インスタは主に愛犬の写真をアップしています。犬の名前は、なっちゃん(なつお)。ボストンテリアの男の子、6歳です。我が家にとって、なっちゃんは2代目犬。以前は、うーちゃん(うしお)という同じボストンテリアの男の子がいて、10年11ヶ月一緒に暮らしていました。 気づけば17年もの間、私の傍らには犬がいる。今も♡ 実際、会ったことがなくてもインスタを通じて「知ってる犬」と愛犬家の方々がたくさんいるし、お茶したりゴハンに行ったりする友達もできました。

赤いダブルラジカセはいつ捨てた。

先日、母と一緒にバスに乗った。 混んでいたけど優先席が運良く空いて、そこに母は座らせてもらった。私はその前に立ち、なにげなく母を見ると、その姿はとても小さくて、膝の上の荷物を持つ手は中身が透けそうなほど白かった。 胸がきゅっと痛くなったけど、何ごともないふりをして、私は前を向いた。 親が年をとったことなんて、とうに気づいていたし、わかっていたことだ。 ずっと続けてきた介護の仕事も身体がきつくなったと自ら辞めた。父が亡くなってから15年以上も経ち、母はいつのまにか父の年

原稿まるっと直されて失神しかけた話。

D&DEPARTMENTが発行する小冊子で連載している「もののまわり」。次号は真鍮の生活用品ブランド「FUTAGAMI(フタガミ)」を特集します。 いま、その原稿書きの真っ最中! 取材で富山に行ったとき、小冊子の発行人でもあるナガオカケンメイさんから「西山薫の文章を書くべきだよ!」と涙が出るほど嬉しいことを言っていただきました。 しかし、そもそも西山薫の文章って?? 考えれば考えるほど、よく分からなくなってきた! そんなときは息抜きに限る。好きな本読んだり、音楽聞いた

輪郭のぼやけた人になりたくない

親の言うことを聞かない子どもだった。 幼稚園生の頃、母親が用意したフリルのソックスを履きたくないと泣いたことがある。親に反抗した、たぶん最初の記憶。制服のひだスカートには、短いソックスよりも膝下までのハイソックスのほうがバランスがいいと思っていたのだ。母親が選んだソックスのデザインも、よく覚えている。 好き嫌いがハッキリした子どもで、特にファッションに関しては、いつの間にか好みのスタイルが明確になっていた。それは今も変わらない。女性誌が特集する「モテファッション」のような