2024年5月7日午前 参議院法務委員会 参考人質疑(民法改正案)

佐々木さやか議長
ただいまから法務委員会を開会いたします。委員の異動についてご報告いたします。昨日までに友納理緒さん、山崎正昭さんおよび福島みずほさんが委員を辞任され、その補欠として田中昌史さん、臼井正一さんおよび大椿裕子さんが選任されました。
民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。本日は本案の審査のため、8名の参考人からご意見を伺います。午前にご出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授、沖野眞巳さん、弁護士熊谷信太郎さん、東京都立大学教授木村草太さんおよび、特定非営利活動法人女のスペースおん代表理事山崎菊乃さんでございます。
この際、参考人の皆様に一度ご挨拶を申し上げます。本日はご多忙のところご出席いただきまして誠にありがとうございます。皆様から忌憚のないご意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に議事の進め方について申し上げます。まず、沖野参考人、熊谷参考人、木村参考人、山崎参考人の順にお1人15分以内でご意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。またご発言の際は挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、ご承知おきください。
なおご発言は着席のままで結構でございます。それではまず、沖野参考人からお願いいたします。

沖野眞巳参考人
東京大学法学部法学政治学研究科で民法を担当しております沖野眞巳でございます。本日はこのように貴重な機会を与えてくださいまして誠にありがとうございます。
提示されております本法律案につきましては、法務大臣の諮問を受けて設置されました法制審議会家族法制部会におきまして、約3年間にわたり様々な立場を踏まえて審議検討が行われ、要綱案として取りまとめがされました。
それが法制審議会総会における議論と承認を経て要綱となり、法務大臣への答申がされました。本法律案はこの答申を踏まえたものであると理解しております。私はこの法制審議会家族法制部会の委員を務めさせていただいておりました。本日はその経験を踏まえつつ、民法の1研究者としてお話をさせていただきたいと思います。
本法律案は、民法のみならず、人事訴訟法、家事事件手続き法を改正するものですが、もっぱら民法の改正についてお話をさせていただきます。本改正法案と申しますが、それによる民法の改正は、子の養育のあり方の多様化等の社会の情勢に鑑み、離婚に伴う子の養育への影響を踏まえ、子の利益の確保の観点から、離婚関連制度の見直しを図るものであり、1、親子関係に関する基本的な規律、2、親権、3、養育費、4親子交流、5、養子縁組、6、財産分与に関する改正を柱といたします。
以下では、親子関係に関する基本的な規律と親権を中心にお話をし、養育費親子交流について簡単に取り上げ、最後に、民法の改正の意義について一言いたします。
いささか大上段のお話をすることをお許しください。
本改正法案の中核の課題は、子の養育、特に離婚後の子の養育の法制度として、基本法たる民法がどのような制度や枠組み規律を用意すべきかというものです。ここは出生と同時に、民法を基礎とする臨時法の世界におきまして、権利能力を当然に付与され、1個の独立した人格として存在することになります。しかし、生まれてすぐはもちろん、一定の時期までは1人で立つことができない保護や支援を要する存在です。
そのため、子の心身の生育、そして社会的な生育をどのように図り行っていくか、その制度が必要であり、民法は、法律上の親子関係を基礎として、子に対して、親たる地位の者に子の養育のための責任を担わせ必要な権限を与え、またその妨害に対してそれを排除するなどの権利を与えています。そのような総合的な地位を表すのが親権です。
昭和22年、1947年の民法改正前の明治民法は、このような親権は基本的に父が有するものとしていたところを昭和22年改正により、婚姻夫婦にあっては、父と母の双方が親権を有し双方が共同でそれを行使すると定めました。
父と母がともに親権者として子の養育を担うことが、その任務の実現のために適切であるという判断を示すものと考えられます。同時に離婚後は、親権者の一方のみが親権を有した方は親権を失うという仕組みを設けました。その理由は、事実上の困難と言われたりしておりますけれども必ずしもはっきりしておりません。
このような昭和22年民法のあり方につきましては、1、離婚に伴い当然に、一方が親権者たる地位を失うという制度が適切なのか、また2、親権を有しないことになる親が子供の養育に対する責務を負わないわけではなく、しかしその基礎づけが示されていないのではないか。さらに3、婚姻中の共同での親権行使もそう定めるだけであって、親の間で意見が対立するような場合の解決方法が用意されていないのは法律として無責任ではないか、といった問題があり、議論がされてきました。
本改正法案は、これらの問題に次のような形で解決を与えています。第1は、親子関係に関する基本的な規律を明らかにしたことです。父母は親権の有無に関わらず、子の養育に関して一定の責務を負っていると考えられますが、現行民法ではこの点が必ずしも明らかではなく、そのため、親権者でない親は子の養育に何ら責任を負わないかのような誤解がされることもある――という指摘もあります。
本改正法案は、親権の有無に関わらない父母の責務等を明確化しています。具体的には、817条の中にですけれども、1、子の心身の健全な発達を図るため、子の人格を尊重するとともに、この年齢および発達の程度に配慮して養育しなければならないこと、かつ2、子が事故と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならないこと。また3、父母が子の利益のため、互いに人格を尊重し、協力しなければならないことを明文化しています。
子の人格の尊重に関しましては、子の意志の尊重との関係が問題となり、かなりの議論がありました。しかし人格の尊重において、その意思の尊重はむしろ当然のことです。これを例示することも考えられなくはありませんが、理論的な問題に加え、子の利益の確保の観点からの緊張関係や弊害も懸念されるため、意思の尊重は人格の尊重に当然含まれるという、いわば当然の理解のもとに法文が作成されており、適切なことであると考えます。
また、父母の間の相互の人格の尊重は、虐待が許されるものではないことやそれへの対応の基礎を、民法そのものに明文で設ける意味をも有するものです。第2は、離婚後の当然単独親権の見直しです。父母の子の養育への関わり方、あり方は様々であり、昭和22年当時に比し、いっそう多様化しています。
夫婦としての法律婚は解消するものの、子の養育については協力して当たるという場合もありますが、現行法では、離婚後も夫婦双方がともに親権者という立場で子の養育に関わる道は全く閉ざされています。父母の婚姻中はその双方が親権者となり親権を共同して行使することをされていますが、父母の離婚後は一切の例外なく必ずその一方のみを親権者と定めなければならないこととされているからです。
このような制度は、およそその余地がないという点において、父母の離婚後もその双方が子の養育に責任を持ち、ここに関する重要な事項が、父母双方の熟慮の上で決定されることを、法制度として支えるということがされていない点で問題であると考えられます。
改正法案が離婚後の父母双方を親権者とすることを可能とするとしているのは、このような考慮に基づくものであると理解しております。これに対し、離婚後の父母双方を親権とすることに対しては、これに関する意思決定を適時に行うことができない恐れがあるのではないかとの懸念やDVや虐待等がある事案において、父母の一方から他方に対する支配被支配の関係が、離婚後も継続する恐れがあるのではないかという懸念があります。
本改正法案では、父母が協議上の離婚をする場合には、父母の協議によって父母の双方または一方を親権者と定め、裁判上の離婚の場合には、裁判所が父母の双方または一方を親権者と定めるということを基本とした上で、裁判所が親権者を定める場合の考慮要素に関して、子の利益のため、父母と子との関係や、父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断しなければならないこととし、かつ、父母の双方を親権者と定めることにより、子の利益を害すると認められるときは、必ず父母の一方を親権者と定めなければならないとなっています。
さらに、この父母の双方を親権者と定めることにより、子の利益を害すると認められるときについては、DVや虐待等がある事案を念頭に置いた例示列挙がされています。これらの規律はこうした事案に対する懸念を踏まえ、それに対処できる規律としたものと言えます。
最も、協議上の離婚の場合に完全に父母に言われてしまうという現行法を維持することには、父母の合意について、子の利益の保護の観点からの適切性が確保されないという問題もあります。協議事項の際に、DVなどを背景とする不適切な形での合意によって、親権者の定めがされたという場合には、子にとって不利益となる恐れがあるからです。
協議離婚の成立にチェックをかけるという事前確認型の規律も考えられますが、そうしますと、速やかな離婚が困難になるなどの問題もあります。そこで、改正法案では、事後の対応の手法をとり、家庭裁判所の手続きによる親権者の変更を可能とするとともに、家庭裁判所が、変更が子の利益のために必要であるか否かを判断するにあたり、父母の協議の経過、その他の事情を考慮すべきこととし、DV等の有無がその考慮要素の一つとして明示されています。
第3は、双方が親権を有しそれを共同で行使する場合の規律です。改正法案では、親権の共同行使の場合の規律を設け、まず監護または教育に関する日常の行為をするときは、一方の親権者が単独で行使できることを明らかにし、また、それに該当しない。従って共同で親権を行うべき重要な事項について、父母の意見対立がある場合には、家庭裁判所が父母の一方当該事項についての親権の行使者と定めることができる手続きが新設されています。
また、日常の行為にあたらない重要な事項であっても、協議や家庭裁判所による手続きを経ていたのでは、子の利益を図ることのできない場合、これを子の利益のため急迫の事情があるときとして単独での行使が認められる場合であることが明らかにされています。
このように親権の行使の規律が整備されることは、単独行使の認められる余地や範囲の規定を書き、意見対立の調整手続きを書くという、現行法の不備を補うとともに、父母の双方が親権者である場合に、子に関する意思決定を適時に行えなくなるという懸念に対処するものと言えます。
続きまして、親子交流および養育費について簡単に申し上げます。まず、親子交流でございますが、親子交流については、親権の所在に関わらず、子が父母の一方とのみ同居する場合に、別居親との交流は、この成長のために重要な意義を有するものですが、その一方で、親子の交流の実施が、この機外へ繋がる場合もありうることも否定できません。そのため、親子交流については、子や同居親の安全安心を確保した上で、適切な形での親子交流を実現できるような仕組みを設けることが重要となります。
また、親子の交流は別居に伴うものであって、必ずしも離婚後に限定されません。むしろ、離婚前の婚姻中の別居においても重要となります。しかし現行法はこの局面での規律を置いておりません。また、別居親と交流をしてきており、その中で祖父母等等の親族と交流をしていたのだけれども、その別居親が死亡した場合に、それまでの祖父母等との交流を継続することが望まれるといった場合もあります。
改正法案は、これらについて規律を設け、またそれとともに、手続き法関係になりますが、裁判手続き過程において、家庭裁判所が事実の調査として、親子交流の試行的実施を促すことができる旨の規律が設けられています。
いずれにおきましても、子の利益の観点からの要件設定が明示された、適切な親子交流を実現できる仕組みの構築のための改正であると理解しております。次に養育費でございますが、これは子の養育を経済的に支えるものであり、その取り決めや支払いの確保が重要であることは異論がありません。問題は、それをいかに実現するかです。
本改正法案では、取り決めがされないときへの対応として、法定養育費の制度が設けられ、また支払いの確保への対応として、養育費債権につきまして、一般先取特権を付与することで、他の一般の債権者に優先して弁済を受けられるうち、かつ、債務名義を取得していなくても、民事執行手続きの申し立てができるという地位が付与されています。
また、手続き面では、裁判手続きにおける収入等の情報の開示命令の仕組みや、また民事執行手続きにおきまして、1回の申し立てにより複数の手続きを連続的に行うことができることとされ、債権者の負担を軽減する仕組みが設けられています。
最後に、民法の改正の意義について一言申し上げます。民法の制度は、社会における基本設計として非常に重要であると考えられますが、父母の離婚後の子の利益を確保するためには、民法等の民事基本法制を整備するだけで足りるわけではなく、その円滑な施行についても、必要と思われる環境の整備を図ることが重要であり、何よりまた、子の利益の確保のためには、総合的に各種の支援等の取り組みを充実させることが重要です。
法制審議会家族法制部会において、民法等の改正内容を示す要綱案の取りまとめに加えて、付帯決議がされ総会でもこれが認められております。この付帯決議には、改正法の内容の適切な周知を求めること、各種支援についての充実した取り組みを求めること、家庭裁判所における適切な審理を期待すること、改正法の施行状況や各種支援等に関する情報発信を求めることこれらの事項の実現のため、関係府省庁等が子の利益の確保を目指して協力することなどが盛り込まれております。
民法等の改正の実現が重要であることはもちろんですが、それのみで目的を達成するものではないこと、環境整備や各種支援のための総合的な取り組みがあってこそであることにつきましても、改めて指摘させていただきます。以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

佐々木さやか議長
ありがとうございました。次に、熊谷参考人にお願いいたします。

熊谷信太郎参考人
弁護士の熊谷でございます。私は昭和62年から東京で弁護士をしておりまして、来年で約40年の実務経験ございますが、養育費に関しまして、今お話がありました法制審議会で答申が出るまでの間にどういう検討がなされたのか、その辺を振り返りながらお話をしたいと思っております。資料お手元資料の横の4の養育費の不払い解消に向けた検討についてという法務省民事局の資料をご覧いただけますでしょうか?
左から右に向かって時系列に沿って説明をしておりますA4横の資料であります。左側にあります法務大臣養育費勉強会、これが当時の森法務大臣のご指示で、このような勉強会が立ち上がりまして、令和2年から令和2年1月から令和2年5月まで勉強会が7回にわたって行われました。
ここでは重要な論点整理、いろんな養育費をの現状について認識するとともに、どういう対策が必要かといった論点整理を行いました。
ご存知の通り、先進国の中で、我が国は残念ながら養育費の支払いが30%を切っているという非常に低い状況でございます。それに対してどう対応したらいいのかということで、様々な論点整理を行いました。養育費の取り決め率の低さをどう、どう対応するのか一旦取り決められたものについての支払い確保をどうするのか。そもそもDV被害などで話し合いすらできないような場合の養育費どうするのかといった様々な問題について検討し、令和2年5月29日に取りまとめを行いました。
それに基づきまして、その真ん中にあります、養育費不払い解消に向けた検討会議というものが大臣の指示で立ち上がりまして、私、これの議長をさせていただきましたが、ここでより良い具体的な政策についての御提言を行うということで令和2年12月の24日に取りまとめを行い大臣に提出をいたしました。
そういった経緯を受けて法制審議会でのご議論をいただいたというこういった流れになってくるわけであります。私はですね、今回の法案に関しまして、基本的には賛成の前向きの評価をしている立場のものでございます。
今、沖野参考人からもご説明がありました養育費についての取り決めをした場合の履行の確保の問題、それからそれについては先取特権が付与されたわけですが、それ以外に取り決めがない場合についての法定養育費の設定ということで大きな前進ではあると思っております。
ただ今回の法案に関しましてもさらにもっとこうしてほしいという点についての意見を述べたいと思いますので、私が関与してきました養育費の問題に限りまして、今回の民法の改正についての意見を述べたいと思います。このような機会を与えていただきまして本当にありがたく思っております。
まず、今後、先生方にぜひご認識いただいてご議論いただきたいと思う点が5点ございます。まず1点目は、養育費の取り決め率の向上のためにはどうしたらいいのかということでございまして、養育費の取り決めに関しまして、今回の法案ではですね、協議事項に関して、公的な関与の手続きをとることは見送られています。
これは今後の検討課題かと思います。例えばですね、これ勉強会での議論でも出てきたんでありますが離婚届を出すときにそこに今、現行は養育費の欄というのがないんですね。養育費に関しての取り決めをどうするという欄を設けておくと、そしてそれについてその記載を必要的なものとすると、その養育費の同意が離婚協議事項の要件という形になるわけですけれど、そこまでですね、1足飛びに行かなくても任意的なものとしてでもですね、そういった記載欄を設けておくということが必要ではないだろうかと思います。
それから、もちろん諸外国では、養育費の合意があることが離婚協議事項の条件になっている国もあるというふうに聞いておりますので、これは将来的にはそういう方向を目指していただきたいなというふうに思うところであります。
ただ、DV被害の方などのご意見を聞くとそういう養育費の支払い合意を協議離婚の成立要件にしてしまうと、DV被害の方の場合にはもう離婚ができなくなってしまうということもあるようですので、そこの点に関してのDV被害の方に関する対策DV被害の方が離婚するための対策ですね。それは別途必要手当が必要だろうと思いますけれども、子供のやはり養育費を確保するという大きな目的の上では、将来的には協議事項の成立に離婚養育費の合意を必要とするということも考えていいのではないかなというふうに思っております。
2点目は履行に関する支援体制の充実ということでありまして、これ、法律はできてもですね、結局支援体制が十分でないとうまくワークしないということでありまして、地方自治体の相談体制、民間の相談団体への支援、こういったものも必要でありますし一番痛感しているのは、弁護士会がやっている法テラスというのがございますけれども、これはいろんな相談機関なんですけれどもテラスの相談案件が非常に多くてですね、この離婚の協議離婚をしている養育費の問題だとかそういった離婚していく場合の子供の対応、こういったものへの支援が必ずしも十分でない。
一生懸命やってるんですけれども費用も予算も人員も足りないということで、この法テラスへの支援をぜひですね、先生方にごご議論いただきたいご検討いただきたいというふうに思いますし、それから養育費の算定表というのがございましてですね、我々法律家は養育費の算定表を用いて養育費を家庭裁判所での離婚だとか、協議事項の場合でもそれを使うんですが、これはやはり一般の方が見てもなかなかわかりづらいという批判がございます。
ですので1人親の方でも簡単に利用できる養育費算定表を作成をしたり、もっと言えば自動計算ツールですね、そういうものを作ってですね、そこに条件さえ入れれば養育費の額も出てくるというような自動計算ツールが望ましいのではないかなと思います。残念ながら我が国では、そういったことへの行政のですね、支援が非常に受身でありましてね。
もっと積極的に、例えばこれ勉強会で出てきたものとしましては、フィンランドなどではそういう行政サービスをプッシュ型で行っていると。
つまり、あなたどういうニーズがありますかということも行政の側からネット上で聞いてくるということですね。自分のこの条件を入れる入力すればこういうものは要りませんか養育費どうですかといったものを聞いてくるような、そういうような仕組みもですね、ご検討いただきたいテーマだなというふうに考えております。
3番目はですね、今回の改正で盛り込まれました先取特権、それから法定養育費についてですけれども、これ大変いいことで私は非常にこれ喜ばしいと思っております。
留意していただきたい点としましては、これを金額ですね、法定養育費の金額、それから先取特権の被担保債権の範囲、これについては法令に書き込まれてはおりませんで、法務省令で決めるということになっております。
その法務省令で決める際にですね、子供の食費とか養育費など子供の健やかな成長、成長のために必要不可欠なものがですね、現実に必要な額が支払われるような配慮をぜひお願いしたいと思っております。
法務省令で決めるということで金額がですね、非常に良い定額になってしまうのではないかという懸念をですね、これ金融だといいんですけれども、若干思っておりまして、というのはこの制度として法定養育などは非常に補充的であるというようなご説明がされることがあるもんですから、そういう意味でこの点に関してですね、現実的に生活できる金額を設定していただくように先生方からもぜひご検討いただきたいなと思っております。
4番目がですね、養育費の不払い率があまりにも不払いの率が高いのですもんですからこれを減少するための更なる措置としましてですね、悪質な不払い者に対するペナルティ、ないしは支払っていくものに対するインセンティブというものをですね導入していただくことをご検討いただきたいと思っておりますこの考え方はこの悪質なと申し上げたのは、支払能力があるのにということです。
養育費の不払いというのは、本来的にはこれは不作為による子供への経済的虐待であるというふうに捉えることができると思います。そうであるなら、不作為によって子供に対して経済的な虐待を与える与えるようなケースに対しては、ペナルティを与えるということも十分検討に値するのではないかというふうに思います。諸外国の例では、氏名を公表する、不払い者のですね氏名を公表する、あるいは運転免許とかパスポートの資格を停止するというようなですね、すごいことをやる国もあるわけです。
また、賃金を不払い賃金不払いの場合には賦課金制度というのがございますけれども、この賦課金制度を養育費にもですね、導入をするであるとか、あるいは遅延損害金をですね、法定利息を上回る形で養育費については設定するとかですね。
養育費債権に関して、もう諦めてしまう親も多いんですけれども、これを消滅時効の機関をですね、延長するとかですねかなり思い切った踏み込んだ措置もですね取っていかないと先進国で最低というようなですね恥ずかしい状況を改善することがなかなか難しいんじゃないかというふうに考えております一方で、他つまりこれらは養育費の不払いを許さないぞという国としてのメッセージですね。
これを打ち出していっていただきたいというふうに思うわけであります。一方で支払った人へのインセンティブご褒美として、例えばその養育費を支払った場合の控除控除ですね、控除制度、いろんなその扶養控除などありますけどその控除制度の中に養育費の支払いを位置づけていくということも一つの方法ではないだろうかと思っております。
そして、その不払い解消へのですね、国の積極的な関与としましていわゆる代理強制徴収制度、お給料の源泉徴収などと同じようにですね、養育費の給料からの天引きなどの法律的な強制徴収といったものもですね、ご検討をいただければというふうに思います。これ、将来的なものだと思いますけども、そういったご検討いただきたいと思います。
そして最後に、これは非常にハードル高いかもしれませんけれども、国によるですね立替払制度の導入これもぜひご検討いただきたいところだと思います。北欧諸国などでは現実にこれを導入されて、非常に支援対象も広く期間も長期に渡っておりますし、韓国でも同様の制度が少し規模は小さいですけどもあるわけであります。
これは要するにもうDV被害その他もあるでしょうし、合意が残念ながらできないという場合にですね、今日のご飯明日の子供のご飯を確保するために国が立て替えてまず養育費を払って、それを債務者から義務者から徴収していくという考え方であります。
これができればですね、非常に養育費不払いに対してのその解消への大きな進歩になると思いますが、問題点ももちろんあるわけでありまして、立て替えた金額の回収をですね、どういうふうにやるのかサービスを仮に使うにしてもサービス法の改正で特定債権の範囲を変える必要ありますし、そういった問題がありますし、それから養育費だけをそういうふうな特別扱いといいますか、他にもいろいろ犯罪被害者その他いる中でこういうものをですね、導入していくということになりますと、やはりなぜ養育費を特別扱いするのか国民のコンセンサスをですね、得ながら進めていく必要があると思いますのでぜひ明日の日本を支える子供たちの生きる基盤になる制度としてご検討いただければと思います私からのお話は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

佐々木さやか議長
ありがとうございました。次に、木村参考人にお願いいたします。

木村草太参考人
私の専攻は憲法学です私は子供の権利と家庭内アビューズの被害者の権利の観点から共同親権の問題を研究しています。現在審議中の民法改正案には、非同意強制型の共同親権が含まれています。この点について意見を述べます。
共同親権の話をすると、別居親が子に会う会わないの話を始める人がいます。しかしこれから議論する親権とは子供の医療や教育引っ越しなどの決定権のことであり、面会交流とは別の制度です面会交流と混同せずに話を聞いてください。また、これまで説明されてきた離婚後共同親権のメリットは、父母が前向きに話し合える関係にある場合、つまり合意型共同親権のメリットです。
非合意強制型のメリットではありません。合意型と非合意強制型は全く別の制度ですから、両者を分けて議論をしてください。民法改正法案第819条7項は、父母の一方あるいは双方が共同親権を拒否しても、裁判所が強制的に共同親権を命じる内容です。衆議院では合意がある場合に限定する修正案が検討されました。しかし衆議院+幅広い強制型が必要だといって譲りませんでした。
この法案にはあまりにも多くの問題があります。第1に父母の一方が共同親権に合意しない場合とは、現に父母に協力関係がなく話し合いができない関係です。こうした父母に共同親権を命じれば、子供の医療や教育の決定が停滞します。
つまり非同意強制型の共同親権は子供から適時の決定を受ける権利を奪います。第2に、法務省は、法案824条の2第1項によって、共同親権下でも日常行為急迫の場合であれば、父母がそれぞれ単独で親権を行使できるから適時の決定ができると説明してきました。
しかしこの条文によれば学校のプールや修学旅行病院でのワクチン接種や手術の予約などの決定をいつでももう一方の父母がキャンセルできます。結果、いつまでも最終決定できない状態が生まれます。病院や学校はどちらの要求を拒否しても損害賠償を請求される危険にさらされます。
条文の狙いとは裏腹に、病院や学校がトラブル回避のため、日常行為についても一律に父母双方のサインを要求するようになる可能性もあるでしょう。この問題は、日常行為・急迫の決定について優先する側を指定しない限り解決しません。
ところがこの問題を指摘された法務省の回答は、こうすれば解決できるではありませんでした。驚くべきことにその問題は、婚姻中の父母について、現行法のもとでも生じ得ますと答えたのです私はこの回答を聞いたとき耳を疑いました。婚姻中に問題が生じているなら、婚姻中の問題を解決する手段を作るべきです。
離婚する人の中には、子供を巡る決定の困難が離婚原因となっている人もいます。離婚をしてもなお同じ問題が継続するような、場合によってはより悪化するような制度をつくるのは言語道断です。そもそも婚姻は非合理で強制される関係ではありません。合意に基づく父母の強い信頼と協力があってこそ成立する関係です。
原因は様々あれど、信頼や協力が失われた場合に離婚するのです。法務省は婚姻中でも起こりうる問題だから、離婚後にそれが継続してもいいと本気で考えているのでしょうか?第3に法務省は法案817条の12第2項に、父母の互いの人格尊重義務が定められているから、適時の決定を邪魔する共同親権の行使はできないと言い続けています。しかし義務違反があったとき、誰がどうやってどのぐらいの時間で是正するのでしょうか?
法務省は相互尊重義務違反の場合、何時間何日以内に是正されるのかを説明していません。その是正の際には弁護士に依頼するなど経済的コストも大きな負担となることでしょう。子供の適時の決定を得る権利に興味がないと評価せざるを得ません。実は政府自身過去に安倍首相や山下法務大臣の国会答弁で、離婚後共同親権には子が適時適切な決定を得られなくなる危険があると指摘してきました。
今回の法案の非合意強制型の共同親権には、政府自身が指摘してきた課題すらクリアできていないという問題があります。第4に、法案819条7項は、共同親権を強制した方が子供の利益になる場合とはどのような場合なのかを全く規定していません。
適時適切な決定のための信頼協力関係がある場合という文言すらありません。これでは裁判所が法律から指針を得られるはずがありません。場合によっては適時の決定が得られなくなるケースで共同親権を命じかねないでしょう。法務省は法制審議会で共同親権を強制すべき具体例が上がったと主張しています。
しかし、法制審議会で挙げられた具体例は小粥太郎委員が示した、別居親が子育てに無関心である場合と、佐野みゆき幹事が示した同居やに親権行使に支障をきたすほどの精神疾患がある場合だけです。無関心上に共同親権を持たせる子がいるケースがなぜ子供の権利・利益になるのでしょうか? 
日々子育てに奮闘しているであろう一方の親に無関心親との調整という著しい負担を課すことになるだけです。また、親権行使に支障を来すほどの病があるさのケースなら、もう一方の単独親権とするのが適切でしょう。
さらに佐野幹事の発言の中には、今回の参議院法務委員会でも話題となった精神疾患の方への差別が現れているようにも感じます。法制審議会の非合意強制型の共同親権の議論は極めて粗雑です。もう一度離婚家庭の現実を適切に理解している専門家を交えて審議をやり直すべきでしょう。
理論的に考えても同居親に親権を奪うほどの問題がなく、かつ話し合いは無理と判断して共同親権を拒否している場合に別居後の話し合いを強制することは、問題のない同居に無意味にストレスを与え、子供のために使えるはずの時間と気力を奪う結果になるはずです。
第5に法務省は、DV虐待ケースは上が除外する条文になっていると言い続けています。しかし法案819条7項の条文は、将来のDVの虐待、それのDV虐待の恐れがある場合を除外するだけです。過去にDV虐待があったことが明白で、被害者がその事実に恐怖を感じ、あるいは許せないという気持ちで共同親権に合意しない場合でも、「もう止まった。反省している」と認定されれば共同親権になりうる内容です。実際、同じような内容を持つアメリカのニューヨーク州には、父が15歳だった母に不同意性交の罪を働いた事案で、母側が拒否しているのにもう反省しているという理由で共同親権を命じた例があります。
今回の法案の条文でも、夫婦間の殺人未遂や子供への性虐待があり、それを理由に共同親権を拒否している場合ですら、裁判所が反省や加害行為の停止を認めれば共同親権を命じる内容です。そうしたくないならはっきりと過去にDV虐待があった場合は、被害者の同意がない限り絶対に共同親権にしてはいけないと書くべきでしょう。
相手の反省を受け入れるかどうかを判断できるのは被害者だけです。その人が話し合いや共同行為の相手として安心できるかを判断できるのかも、その人だけです。しかし、今回の法案では、被害者が自分の意思で共同親権を拒否できないのです。だから被害者たちは恐怖を感じているのです。DV虐待を巡っては家庭内のことで証拠の確保が困難であること、当人が多大な苦痛を感じていても第三者の理解を得られにくいことなどからDV虐待の認定そのものが困難であるという深刻な問題もあります。
今回の法案はDV虐待を軽視し被害者を置き去りにするものです。以上が、非同意強制型の共同親権を廃案にすべき理由です。その他にも今回の法案には、DVや虐待を主張すること自体が相互の人格尊重義務違反として扱われる危険、被害者やその代理人支援者への嫌がらせや濫訴への対策がないこと、家裁のリソース不足に対する具体的改善策の不在などたくさんの問題があります。
今回の民法改正法案には、子供たち自身を含む家庭内アビューズの被害者からこの条文では安心できない、再び被害者との関係を強制されるという不安と恐怖の声が上がり続けてきました。被害者の方を安心させるのは簡単です。合意型の共同親権に限定すればよいのです。共同親権のメリットとされてきたものの、それで実現できます。
しかし、被害者の声は切り捨てられ続けてきました。法制審議会ではDV保護法を専門とする会議のため委員がこの要綱では被害者を守れないという理由で反対しました。しかしDV保護を専門としていない他の委員の多数決で要綱は押し切られました。
衆議院ではDV被害の当事者学校の法案が可決されれば再び加害者と対峙しなければならず、場合によっては共同親権を強制されるという恐怖を涙声で訴えました。衆議院はこの方が安心を得られるよう努力したでしょうか?そうは思いません。なぜ恐怖を訴える声が届かないのでしょうか? 法務省や衆議院多数派は、DV被害の訴えを極端な被害妄想と見てその主張をまた始まったと嘲笑しているように見えます。
そもそも法務省は父母がともに関わるべきだ。どんな親でも子の利益のために行動できると強調し続けてきました。父母の関わりが良いものと理由もなく断言する裏側には、シングルの子育てはまともではないという蔑みの感情すら見て取れます。被害者の訴えを退ける続ける態度も、シングル家庭への差別に由来しているのではないでしょうか?
シングルでも一生懸命子供を幸せにしようと努力している親たちがいます。加害的な親と離れて、やっと安心できる生活を手に入れた離婚家庭の子供たちもいます。シングル家庭への差別をやめ、彼ら彼女らの声に耳を傾けるべきです。
声を切り捨てられているのは日本の被害者だけではありません。イギリスのブリストル大学のHelter教授も次のように指摘します。離婚後の親子コンタクトを推奨する専門家たちは、DVを解決済みの問題、既に過去のものとみて、DV被害をまるで違う惑星のもののように扱っているとアメリカのジョージ・ワシントン大学の萬谷教授はアメリカの裁判所で、子供が別居との関わりを拒否する場合、別居の加害行為ではなく同居への悪口を疑うべきだという理論が蔓延しているという統計研究を発表しています。真家教授はアメリカ家族法学でDV虐待が周縁部に追いやられているアビューズの問題を中心に置かなくてはならないとも指摘しています。ドイツやフランスではDV虐待があっても特別な手続きをとって裁判所が認めない限り共同親権です。ヨーロッパのDVの専門家や支援者からは、DV自体事案を除去できるような法案改正法は改正の必要が指摘され続けていますが、一方は対応しません。
オーストラリアでは薬物依存の父親から逃れようと子連れで転居した母親が、無断転居を責められる共同親権を命じられた事案があります。オーストラリアの家族法の専門家の間では、性虐待の過去を持つ親と子供とのコンタクトをどうやって実現すべきかが検討すべき論点として扱われていました。
オーストラリア法にも被害者の声を軽視してきたという批判があります。欧米では共同親権が主流というスローガンばかりが独り歩きしていますが、どの国でもDV被害者の声はかき消され、あるいは虐待の被害者の声はかき消され、その支援者は嘲笑されているのです。日本の家族法の教科書でも、DV虐待の問題が中心に置かれているとは到底言えません。日本の民法が家族法学がどこまで欧米の、そして日本の被害者たちの声に向き合ってきたでしょうか?
このように検討してみると、なぜ日本の現行法はそんなにまともなのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか? その答えは憲法24条と、それによる戦後家族法の大改正にあります。日本の法律家の中には、欧米に比べ日本の法律は遅れていると考える人が多くいます。
例えば同性婚の問題に関わっている人は日本の取り組みはあまりにも遅いと感じているでしょう。そうした分野があるのは事実です。しかし男女平等の親権法の実現は、ヨーロッパのよりも長い歴史を持っています。フランスやドイツでは父権に基づく男性優位の制度が20世紀後半まで続きました。
これに対し日本は新憲法を制定した1940年代に憲法24条の男女平等の理念に基づく新憲法を実現しました。婚姻中の共同親権を導入し、離婚後は女性であっても子供が親権を持てるようにしたので、子供の親権を持てるようにしたのです。
日本の新しい憲法民法が重視したのは、共同行為は合意がない限り強制できないという当事者の意思の尊重をする姿勢です。民法の旧規定のもとでは、戸主の同意がないと婚姻ができず、父母や夫になる男性が女性に行為を強要することもありました。新憲法はこれを反省し、両者の合意のみで婚姻の成立を認め、また婚姻の効果を合意なしに強制することを禁じました。
憲法24条は、合意なしに強制してはいけない行為の効果があることを前提としています。合意なしに強制してはいけない行為の効果の範囲をどう理解すべきか、その中に子供の医療や教育についての話し合いの義務づけが入っていないのか、政府は真面目に検討すべきです。
この点政府は同性婚訴訟の書面で憲法24条にポイントは共同で子育てをする関係などと言い続けています。子供の共同親権を婚姻の中核的効果と考えていることは明らかです。これを前提にすると、合意もなしに共同の子育てを強制することは憲法24条の理念に反しています。
戦後の民法改正をリードした我妻栄先生は、父母が離婚するときは監護すべき温床が破れると言っています。父母がともに作る温床は、父母の真摯な合意によってのみ作られるのです。我妻先生はある最高裁判決について、夫婦の力関係の差が現にあることを強調した上で、夫婦を形式的に平等に扱えばそのライン争いはとかく力の強い夫の勝利となり、夫婦の平等は実現されないと批判しました。
もちろん夫は常に強く妻が常に弱いということはなく逆のケースもあるでしょう。しかし協力関係が築けない背景に力関係の大きな格差があることは少なくありません。そして、その格差は当事者の一緒にいることのつらさとしてしか表現できないこともしばしばあるのです。
我妻先生は、形式論や理想論だけでなく、それがどんな現実をもたらすのかを含めて、豊かな想像力を持って家族を考えました。先人は、子供の利益と男女の自主的平等への深い洞察の上で洞察の上で現在の民法を作り上げました。
私達がなすべきは憲法の当事者の合意の尊重の理念と、戦後民法を作り上げた先人の遺産を受け継ぐことです。大事な遺産を台無しにすることではありません。参議院議員の皆様は、被害者の声を無視して差別し嘲笑する側につくのか、子供が適時に蹴っておられる得られる権利と、被害者が安心できる環境を得られる権利を守る側につくのか、重大な岐路に立っています。ぜひこのことを自覚して、法案の審議に臨んでください。終わります。

佐々木さやか議長
ありがとうございました。次に山崎参考人にお願いいたします。

山崎菊乃参考人
山崎菊乃です。本日は私のお話を聞いていただける機会をいただき本当にありがとうございます。私はDV防止法が施行される前の1997年に3人の子供とともにシェルターに避難した経験があります。
その後20年以上、DV被害者支援現場でシェルター活動や自立支援活動を行っております。現在、全国女性シェルターネットの共同代表であり、普段は北海道でシェルターの運営をしています。まず私の被害者としての体験談をお話させていただきます。
大学時代に知り合い、対等に付き合っていたはずの夫は結婚式の日から変わり始めました。私の行動が自分の思い通りでないと機嫌が悪くなるようになったのです。私の実家に対しては非常に攻撃的になりました。私の両親が遊びに来ると不機嫌になりました。
初めてのお産は里帰り出産でした。自宅に帰るとき、実家の母がお米を10キロ、私に持たせてくれました。これに対し夫は俺を馬鹿にしていると実家に米を送り返した上、新生児のそばで寝ている私の顔を殴りました。掛け布団が鼻血で真っ赤になりました。
翌日私は夫に暴力を振るうのであれば離婚すると言いました。すると彼は土下座をして涙を流し、離婚するくらいなら死んだ方がいいなどというので、私はこれほど反省しているならと離婚を思いとどまりました。しかし、一度暴力を振るわれてしまうと、夫婦の関係が全く変わるのです。夫の顔色を見て、怒らせないようにと振舞う癖が私に付いてしまいました。
彼が暴力を振るうのは自分のせいと感じ、努力しましたが、何をしても治まることはありませんでした。人格を否定され、人間扱いされないような言動が絶えずある生活は、身体的暴力よりつらく、私はいつも落ち込んでいました。
子供たちもいつもピリピリしていました。多くの人はDV被害者になぜ逃げないのと言いますが、これまで生活してきた全てを捨てて、将来的な保障も住む場所もない未知の世界に、人は簡単には飛び込んでいけません。ところがある日、馬乗りになって私の首を絞める夫に向かって長女が泣き泣き叫びながら、お父さんやめてと包丁持って向かっていったのです。
子供たちのためにと思っていた私の我慢が子供たちを大きく傷つけていたことを思い知らされ、避難するしかないと決断し、DV防止法がまだない中、民間団体が運営しているシェルターに避難しました。先日、私は勇気を出して、当時中学3年生だった娘に包丁を持ち出したことを覚えているか聞きました。
娘は「はっきり覚えている。何かあったらお母さんを助けようと思っていた。朝は泣きながら登校していた」と話してくれました。何十年も経っていたんですがショックでした。お手元の資料2022年にシングルマザーサポート団体団体全国協議会が行ったアンケート調査の結果、1ページをご覧ください。
離婚を決断した理由で一番多いのが「子供によくない影響があった」というものです。次のページ、その子供への悪影響とは何か。具体的な内容では、「夫婦が対立、口論したり、自分が馬鹿にされている様子を、これ以上子供に見せたくない」が最多です。司法統計で「性格の不一致」とされてきた中身がこれらです。
大きな決断をして非難した先に一体何があるのか。シングルマザーの平均年収は200万円ぐらいと言われています。ダブルワーク、トリプルワークをして自分の健康を顧みずに働いているお母さんがたくさんいます。子供に1日3食食べさせても、自分は2食で我慢している人もたくさんいます。
私も3人の子供を抱えて生活に困窮し、生活保護を受給しました。このような大変な生活を強いられるのに逃げざるを得ないことを、どうか皆様にご理解していただきたいと思います。日本社会のDV被害に対する認識はまだまだ薄く、暴力から逃れることも難しく、相談機関からさえ理解のない対応を受け続けています。この状況を改善することなく共同親権にすることは、逃げることしか許されない日本の被害者がさらに逃げられなくなることが目に見えています。
配布資料に「ここがおかしい日本の被害者支援」を見ていただくと、現状がわかっていただけると思いますが、DV被害者が相談や支援を求めたときにどんな対応があるか、あるのかを、時系列的に挙げてみたいと思います。まず一番初めの相談は、実家や友達が多いのですが、「そのくらい我慢しなさい、子供がいるんだから、離婚なんかしちゃ駄目」といった反応は全く珍しくありません。身近な人から否定されたことで、逃げられないDV被害を受けた自覚が持てない状況になっているわけです。
そして次、勇気を出して相談機関に行くと、「あざがないから殴られていないからDVじゃないですよね。身体的暴力に比べると大したことないよね」と言われるのは本当にあるあるです。日本のDV法では、DVを身体的暴力だけではないとしています。しかし、日本中で身体的暴力以外はDVじゃないとする運用が、残念ながら行われてきました。
相談の次は、一時保護になります。シェルターに避難することです。全国の都道府県に公営のシェルターがあり、DV被害者を保護することになっていますが、資料の3を見ていただくと、婦人相談所、今は女性相談支援センターとなっていますけれども、なかなか一時保護してくれないというのが全国共通の悩みです。
身体的暴力がないからシェルターは入れない、集団生活ができなければ無理。たばこお酒携帯使用は駄目、こうしたチェックに合格して初めてシェルターに入れます。DV被害者一時保護は十分に機能しているものではないということも知っていただきたいと思います。
その次のハードルは生活保護受給です。着の身着のままで避難した方も多く、生活保護を希望することはし少なくないです。しかし、同居中に受けた精神的DVの後遺症であるPTSDなどが理解されず、就労を強要される。
扶養照会で加害者である配偶者に照会されてしまった例もあります。そのような中、心ある行政担当者と民間の支援者とで力を合わせてやっとの思いで被害者の安全を守ってきました。民間の支援者は手弁当で持ち出しで、全国で何千何万件と支援してきました。
DV被害については私達が専門家です。共同親権が導入されたら何が起こるのか知っているのは、当事者と私達です。
共同親権が導入されたら何が起こるのか懸念をしていることをお話しします。2001年にDV防止法ができるまでは、家庭の中の暴力は社会に容認されていました。DV防止法は、私達当事者がこのままでは殺されてしまうと、議員の皆様に実情を訴え、議員立法で制定された法律です。
共同親権制度は、私達DV被害者が命がけで勝ち取ったDV防止法を無力化するものです。この法律が成立してしまったら、現場はどうなるのでしょうか?まず、たくさんある事例なんですけれども加害者の行動の予測についてお話します。
加害者の中には、加害者意識は全くなく、自分を被害者だと心から思っていて、自分のもとから逃げ出したパートナーに対する報復感情を強く抱く人が多いことを皆さんに知っていただきたいです。彼らはこう考えます。自分は何も悪いことをしていないのに、妻が子供を連れて出ていってしまった自分に逆らわなかった妻がなぜ出ていったのか本当に理解できない支援者や弁護士がそそのかしたのではないか。
自分こそ妻からの精神的暴力を受けた被害者だ。これではメンツが立たない、絶対に妻の思い通りにはさせない自分をこんな目に遭わせた妻に報復してある。たとえ離婚しても、共同親権を取って妻の思い通りにならないことを思い知らせてやると考える人も多くいると思います。この法案は、加害者に加勢する法律です。
次に、現場の最大の経営の懸念をお話します。被害者を支援したら、加害者からの大量の訴訟が起こされ、敗訴するかもしれません。急迫な事情という条文は、婚姻中の共同親権にも適用される規定だからです。
被害者の相談に乗って、それはDVですね、避難する必要がありますと言ったら、加害者の共同親権行為の心が侵害だという損害賠償の訴訟が相談員や支援団体をターゲットに起こされるかもしれない。被害者の一時保護を都道父権が決定したら、同様の訴訟が都道父権、市町村に起こされるかもしれない。訴訟対応で支援機関はストップするだろうし、訴訟というリスクを負ってまで、行政は被害者を支援してくれるでしょうか?
賠償金の支払いを命じる判決が出たら火が、地方自治体はそれでも被害者を守り続けるでしょうか?発言力の小さい被害者が我慢を強いられるのは目に見えています。法案では、双方の合意で親権が決まらない場合、裁判所が親権者を決める際に、DVや虐待がある場合は単独親権と決めるとありますが、DVや虐待の証明をどのようにしたらよいのでしょうか?
今年4月1日に改正DV防止法が施行され、精神的暴力、性的暴力も接近禁止命令の対象となりました。内閣府のパンフレットでは、次のようなことをDVですと広報しています。資料4になります。大声で怒鳴る、誰のおかげで生活できるんだなどという実家や友人との付き合いを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする。何を言っても無視して口をきかない大切にしている物を壊したり捨てたりする。
土下座を強要する、悪評をネットに流して攻撃すると告げる。キャッシュカードや通帳を取り上げると告げるということが挙げられています。こういうことが本当によく相談されます。精神的性的DVはDV関係では必ず起きています。
内閣府が精神的DVと見ているものを被害者が主張しただけで、単独親権になるのでしょうか?相手が争ってきたら、どのような証拠で立証しなければならないのでしょうか?例えば、長時間の設計を通知を取り上げ、ということを家裁がどのように認定するというのでしょうか?
以上、当事者支援現場からの様々なきめ懸念をお話させていただきました。これから考えられるのは、もしもこの法案が成立したとしても、施行までの2年間で必要な制度が整うとはとても考えられません。国会におかれましては、拙速な判断をしないように切にお願いしたいと思います。
最後に、被害当事者からのメールをご紹介します。
「衆議院通過してしまいましたね。なんでそんなに共同親権にしたいんでしょう。既に離婚している父母も申請すれば共同親権にできるとの一部を見ました。きっと私の元夫は申請してくるでしょう。政治家はようやく立ち直りかけた私達に戦えというのですね。
平穏を手に入れたと思っていたたくさんの被害者たちを、また崖から突き落とすのですね。私のように身体的暴力の証拠は残っていなく、既に何年も経過している者はどうすれば被害者だと認めてくれるんですかね、非常に落胆しています。
私と娘と息子は、元夫と一緒にいる間は常にビクビクと機嫌を伺いながら生活し、逃げてからは、これまでの生活のほぼ全てをして生きていかなければならない現実を受け入れることに必死で、心身のバランスを崩しました。
長い時間をかけて、それでもまだ全員が回復したとは言えないまでも、日々笑って過ごせるようになった一因に、私が親権を持っているからがあるのは間違いありません。どうか本当に子供が幸せになる道を見極めてください。子供が心から愛され、守られて穏やかに安心して暮らすために法律を使ってください。
他の国がどうかとは関係ありません。解決しなければならない日本の家族の問題は、決してそこではないことに本当は皆さん気づいているのではないでしょうか?問題のすり替えで命を脅かさないでください。以上がうちに来た被害者からのメールです。これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

佐々木さやか議長
ありがとうございました。以上で参考人のご意見の陳述は終わりました。これより参考人に対する質疑を行います。なお、質疑および答弁は着席のままで結構でございます。質疑のある方は順次ご発言願います。

古庄玄知議員(自民)
参考人の皆様ご苦労様でした。自民党の古庄玄知と申します。
すいません。私、昭和60年から大分で弁護士活動をしております。今回参議院というこういう席をいただきまして質問させてもらうことになりました。それで時間が限られていますので、まず4名の4人の方に質問をしたいと思います同じ質問ですすいません。時間があるので、2分以内に何とか回答いただければと思います。
まず本件は共同親権、これを導入するかどうかということが一番大きな問題点ですけれども、この本法案が通った場合、離婚した夫婦間の争いは減ると思うのか増えると思うのか。またそういうふうに考える根拠についてお答えください。
それと仮に増えるというふうに考えた方、増えても、共同親権は導入すべきだというのか?やめるべきだというのか? またその理由についてもお答えください。沖野先生からよろしくお願いします。

沖野参考人
ご質問ありがとうございます。今回の法案によって紛争が増えるかどうかということについては様々な局面がありますので、直ちには言えないと思います。むしろ子供の利益のためにどういうことが可能になるかという点から考えるべきではないかと思いますし、それから紛争が増えること自体を悪いことだと評価するのかというと、そうではない。今まで泣き寝入りであったものが、法的な解決の道を与えられるという面もございますのでそのような評価も十分ありうると考えております。以上です。

古庄玄知議員
そうすると、すいません。今のご回答は増えるかどうかわからないけれども、導入すべきであると、まとめればそういうお答えでよろしいんですかね。

沖野参考人
ありがとうございます。数値がどうなるかどうかは確かにわからないけれども、法案全体として導入には十分意味があるというふうに考えております。以上です。

熊谷参考人
私も増えるかどうかは何とも言いがたいと思うんですが、今回の法案自体は共同親権について選択制というふうに理解しておりますんで、単独も選択できるというふうに考えますのでそういう意味で法案全体としては、これは問題ないのではないか。というふうに導入すべきではないかというふうに考えております。以上です。

木村参考人
これ、増えるに決まっているというふうに考えてよろしいかと思います。先ほど山崎参考人のご意見にもありましたけれども、今、単独親権しか選択肢がないわけですけれども共同親権に強制的にできるという内容を入れればですね、強制的に共同親権にしてほしいという申し立てがこれまでなかったタイプの申し立てが行われるようになるので、それが増えるに決まっているというふうに言ってよろしいかと思います。
また、数値的な問題ですが本日の資料22ページ付録につけてきたんですけれども、例えばフランスやアメリカの例を見てみますと、フランスとアメリカ両方とも共同親権導入国で共同親権の問題だけではないので単純に比較はできないんですが、例えば日本は令和4年中に全国の裁判所が受理した子の監護関係の受理数が2万件だそうですけれども日本の人口の約半分のフランスでは2022年の父母の別離後の未成年に関する申し立てが17万件、アメリカのニューヨーク州では人口の2000万人ということで、日本のおよそ6分の1ですけれども、案件14万件を家裁が使っているというふうな数値もありますので、共同親権にして紛争が減るということはまずないだろうと。
また諸外国の数値を見てもかなりの数の紛争が行われるのではないかが裁判所で争われるのではないかというふうに考えるのが自然ではないかと思います。
また紛争は増えるというふうになりますけれども、もちろんですね、父母が合意した場合に一緒にやっていこうというときに、裁判所の調整を求めるということはありうるかもしれませんが、強制型の共同親権で無理やり新グループで子育てをされている方々に裁判所に引きずり出して時間や労力を奪う経済力を奪うということはこれは非常にまずいことですので、強制型の共同親権、これはやめるべき。共同親権の要件には必ず父母の合意を要求するとすべきだと思います。以上です。

山崎参考人
はい、ありがとうございます。増えると思います。私もたくさん、今日本の離婚ってほとんど協議離婚なんですけれども、先ほど資料でお話しました、資料お手元の資料1ですよね。性格の不一致で離婚する内容がですね、自分が馬鹿にされている様子をこれ以上子供に見せたくないからっていうのが多いんですね。
これはつまりどういうことかっていうと、夫婦の間がもう対等ではない馬鹿にする側と馬鹿にされる側がいるっていうことなんですね。それは共同協議離婚のときに何をもたらすかっていうと力の強い方の要求に応じざるを得なくなってくる。
それで、そして自分が不本意で共同親権になってしまった場合に後からいろいろな元配偶者から要求が来たときにこんなはずじゃなかったと思って親権変更などの申し立てをしてももう大変なことになってしまうということで、紛争は多くなると思います。私はこの法案は廃案にするべきだと思っています。

古庄玄知議員
沖野先生よろしいですか。短くお願いします。

沖野参考人
共同親権が入ることによって申し立てが増えるという話ですけれども、現在でも単独親権を争う場合には申し立てるということになりますので、当然そうなるということにはならないだろうというふうに思いますのと、それから例えば虐待などの問題について裁判所が介入が非常に低いのが問題であるというふうにも言われているわけでございまして、裁判所における申し立てが増えるということが当然悪い状況になるということではないということでございます。補足させていただきます。

古庄玄知議員
熊谷先生にお聞きしたいんですけれども、先生も長いことを弁護士されていますので実務の状況はわかってると思うんですけれども、今回の法案で争いが発生した場合には裁判所に決めてもらうというたてつけが多いんですけれども、この今の裁判所体制的に十分整っていてその本来果たすべき役割を十二分に果たせるような体制になっているかどうか? この点について弁護士の立場で率直にご意見いただきたいんですけど。

熊谷参考人
共同親権の話だけじゃなくて養育費も含めて、全般の家庭裁判所の関与の仕方がどうなのかということで理解でよろしいですかね。
裁判所ももちろん、限られた人員組織予算の中で一生懸命やってるわけですが、やはり例えば養育費に関して言えば、申し立てをしてからの手続きが煩雑すぎる。
これ、弁護士つけないととても無理だというケースがやはり多いですよね。
シングルマザーとかファーザーが簡単な手続きをワンストップでできるような工夫がもっと必要だろうと思います。
例えば昼間でなければ、もちろん空いてないわけですよね。だけども、そういった養育費の問題などに、家庭の問題に関しては、夜間でも受け付けるとか休日も受け付けるとかですね、そういった工夫もやはり必要になってくるだろうと思いますし、それから設備面でのですね、非常にコープANA設備という印象を、弁護士としては受けるわけですよね。
IT系のいろんな機器も足りませんしそれからWeb会議もですね。最近民事事件一般民事事件では多く行われてますけれども、家事ではなかなか仕事できないということもありますので人員面、組織面、設備面いろんな面でやや不足が目立つかなと。特に劣化が激しい分野ではないだろうかというふうに感じるのが大変失礼ながら率直なところです。

古庄玄知議員
ありがとうございました。おそらく実務を担当している弁護士はみんな同じような感覚を持ってて、何でもかんでも裁判所に決めてくれ決めて決めてくれと言っても時間がかかりすぎる。また弁護士をつけないと無理だと手続きがややこしくて法的な判断も難しくって。そうすると弁護士をまず探さなければならない弁護士を探しても弁護士費用を払わなければならない。
また裁判所に行って、長いこと調停委員だ調査官だという人たちと対応してようやく結論が出ると家庭裁判所の裁判官も少ないと時間がかかると。私なんかもやっぱり相談に来る方は、まず「どんくらいかかりますか」って聞いて「こんくらいかかります」って言ったらってそこでため息を漏らしてお金はどんくらいかかりますかって聞かれてこんくらいかかりますというとそんなにかかるんですかと2度そういうふうなため息を漏らしてそういう人はもう2度と弁護士事務所の訪問しないという、それが実態であるというふうに私は思ってますので、裁判所に頼むから裁判所が適切に判断してくれるんだしてくれるんだというのは、現場を知らない机上の上の机の上だけしか知らない人の発想ではないかなというふうに私は個人的には思っております。
それですいません。熊谷先生、続きまして先ほど養育費の話相当ご尽力されたということなんですけれども、やっぱこれも同じようにやっぱり払ってくれない人に対しては法的な手続きをとらなければならないと。そうすると先ほど言ったのと同じような問題が出てそんなに時間とお金がかかるんだなもういいかと。例えば200万しか収入がない人が最後まで行ったときに100万近い報酬着手金から報酬から全部入れて弁護士に払うということになると、年商の半分は払って弁護士頼むかちゅうと頼まないんですよね。そうすっともう諦めるというのが多くって、そのあたりもかなり大きな問題となっていますので、そういうふうな債務名義に基づいて強制執行をするとか1000とかっていうよりもそもそもそういう払わなければペナルティがあるんだと同じような検討もされたというふうに先生言われてましたけれども、そういうふうにやっぱり子供というのは国全体では育てていくというそういう考えに例えば刑罰を科すとか、何らかのペナルティを科すという考え方はもういいのかなという感じはするんですけれども同じことになるかもなるかもわかりませんけど、先生のお考えをもう一度聞かせていただければと思います。

熊谷参考人
今、先生おっしゃる通りそういう今の制度を前提にすると絵に描いた餅的なところがやっぱり発生してきてしまっていますのでそこを何とかしなきゃならないという問題意識で勉強会その他やったわけでありますが、先ほど申し上げた通りですね。
養育費、子供の子の養育費の問題というのはお支払いはないっていうことは子供に対する不作為による経済的虐待に当たるんだということをしっかりとその共通認識として持つべきだと思うんですね。その上でですね、そうであるならば例えば養育費に関して今、先生おっしゃっているようなペナルティを設ける、あるいはインセンティブを設ける。それから国が立て替え払いをしていくとかそういう制度を導入することが養育費を特別扱いしているというご批判も時々聞くんですけれども特別扱いしていい話だと思うんですね。
これは、そういう子供に対する経済的虐待をしているようなケースはやはり救わなければならないわけですし、例えば他にも、ひどい目に遭ってる犯罪の犯罪被害でひどい目に遭っているじゃないかというご批判もあるわけですけれども、それとこれはちょっと違ってまして、将来の日本を支えていく基盤になる子供、これの生活費養育費、そういったものなわけですからそこをきちんと確保しないで将来の日本はないのではないかというふうに思いますのでその特別扱いだからあまり踏み込んだことはすべきでないという議論ではなくて、まさに特別扱いをしていい話なんだというふうなことをですね、共有していただければなというふうに考えております。有難うございます。

古庄玄知議員
すいません。沖野先生にお尋ねしたいんですけれども、先生は法制審議会の委員をされていたということですけれども、先ほど私が熊谷先生に質問したように、裁判所に持ち込んだら時間がかかる、それから費用がかかるそういうマイナス面というか、そういうのについては法制審議会のときに議論に出たんでしょうか?

沖野参考人
御質問ありがとうございます。家庭裁判所あるいは裁判所に委ねることで十分なのかという点はまさに議論がございました。結論としてですけれども、一つはですねでは、放置していいのかという問題もございます。先ほど先生のもとに相談に駆られた方は二つのため息をついてそして全く諦められたんでしょうか、それでいいんでしょうかという問題があります。
家庭裁判所以外に、一体より適切な機関があるのかという問題がございます。そして家庭裁判所がその人を果たせるための土壌作りというのは非常に重要ですので、適切な審理とその体制を整えるということが大変大事だと考えております。もちろんそれ以外の相談体制ですとかですね、情報提供ですとか、そういったことが重要であるということは付帯決議にも表れているところでございます。以上です。

古庄玄知議員
すいません。最後の質問、いや私の質問はそういう法制審議会のときに時間がかかるお金がかかるというのが議題に上がったかどうかというのを質問したいんです。

佐々木さやか議長
お知らせの時間を過ぎておりますので答弁は簡潔にお願いいたします。

沖野参考人
されました。以上です。

古庄玄知議員
よろしいですか。すいません。終わります。ありがとうございました。

牧山ひろえ議員(立憲民主党))
立憲民主社民の牧山ひろえです。参考人の皆様、本日は大変ためになる高校はありがとうございました。また日程の都合上、ゴールデンウィーク中にも本日のご準備のご負担をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
さて山崎参考人から「行政や家裁にDV被害を訴えてもなかなか理解されない認められない」というお話がございました。
被害の自覚のない被害者であった場合、いわゆる隠れDVのケースでは、DVがあるかもしれないと気づかれることはなおさら難しいのではないでしょうか。一方で加害者側については、DV加害者にその自覚がなく自分こそ被害者だと思っている認知の歪みと言われているケースのご指摘がございました。
歪みが生じている場合、後ろめたさや罪悪感が全くなく、自信に満ちているDVの認定がされづらい傾向が指摘されております。被害者そして加害者の双方について正確にDVを認定することの困難さが指摘されているわけですけれども現在の家裁を初めとする司法システムはこのようなケースにおいて、DVの有無についての正しいジャッジが現在のところできているんでしょうか?山崎参考人には現場の実感を後日いただければと思います。

山崎参考人
ありがとうございます。シェルターに逃げておられる方は暴力で非常に疲弊されていて正確に時系列に何があったかとか、物を言えないんですよね。
感情が先に走ってしまったりとかそういう状態で家庭裁判所に行く方や加害者は外ではとてもいい人とか理路整然としてるっていうことで、なかなか調停委員ですとか裁判官にどっち、どっちがおかしいのってなったら取り乱している方に、やはりこっちの方がおかしいよね。こっちが嘘ついてんじゃないのっていうふうになってしまうケースが非常に多いです。だから必ず調停でも私達は弁護士さんをつけてできるできるだけ私達も一緒に裁判所に同行してっていうふうにやってるんですけども、当事者だけでの裁判所の争いでは、家庭裁判所では本当の本当にDVがあったのかどうかっていうのは見抜くことは難しいと思います。

牧山ひろえ議員
では、改正法の施行までの2年間で家裁がDV加害者を正確に見抜けるようにこの2年間でなると思いますか。木村参考人いかがでしょうか?

木村参考人
DVを見抜くかどうかということは、仮に見抜ける能力ができたとしても問題であるというのが私の立場ですということですけれども、どうでしょうね。
認定ができないケースというのはたくさんあると思います。どんなに裁判所が認定能力を持ったとしてもですから非合意の場合には強制しないという形でしか、被害者が救われる方法はないと思っています。

牧山ひろえ議員
今でさえできてないというものをですね、現在より事件の数が劇場すると見込まれるわずかこの2年間の間に解決できると判断すること自体無理があるかと思うんですね。
木村参考人は共同親権賛成派のパブコメ開示請求によって取得してそれを分析されたと伺っているんですけれども、別居親が共同親権を求める動機は何か親権を獲得してどう使おうとしているのか特に離婚別居当事者と思われる者のコメントをどのように分析されたのでしょうか?また、そこからどのようなリスクをお感じになられたんでしょうか?

木村参考人
すべて確認しているわけではございません。そのご質問については、法制審議会であれば全てを閲覧することができたはずでしょうから審議会の委員をされた沖野委員に伺うことが良いかと思います。
私が見た限りでは、非合意でも強制した方がいいケースについて具体的に挙げている意見はありませんでした。いずれも合意した場合に離婚しても夫婦が仲が良いという、そういうケースで共同親権にできるといいよねと。
あるいは何らかの介入によって父母が協力関係になった場合には、共同親権を選べた方がいいよねと。
そういう説明がほとんど、ほとんどというか。そうした説明しかなくてですね。強制してでも医療や教育について行政的に決定すべきであると。強制的同意がない限り、医療や教育の決定ができないような状態を、ご夫婦合意の場合でも強制すべきであるというようなことを積極的に事例を挙げて説明した要望書は私の分析ではまだ見ていないということです。最も全部が公開されておりませんので、それはまた公開された後に分析をしてみたいなと思っています。

牧山ひろえ議員
木村参考人はいわゆる無限ループ問題を指摘されております。学校のプールですとか病院でのワクチン接種などの日常行為については同居親も別居親も親権単独行使ができるとされているため、いつでも一方の親がキャンセルすることができるわけです。その結果、いつまでも最終決定ができないというのではないかという懸念がございます。

もしこの問題についての防止策が法務省が想定している協力義務違反などしかないのであれば、医療教育保育など子供に関わる業界にどのような事態が生じることが想定されますでしょうか?

木村参考人
先ほど指摘しましたように、いつまでも医療や教育に関する決定ができないということになります。今回の法案は不思議なことにどちらかが優先するではなくてそれぞれ単独で行使ができるということになっておりまして、そうすると一方が習い事を申し込んで、もう一方がキャンセルする。いずれもキャンセルも申し込みも単独でできるという信じられない条文になっておりましてこれは賛否を問わず条文の作り方として育つすぎると言ってよろしいのではないかと思います。
例えば、例えばですねドイツ法では、日常行為については同居している親の側が1人で決定できるとなっておりますし、フランス法では親権の行使があった場合に同意がないということを知っていない限りはその相手にはて交渉しているとみなしてよい、というような規定がありまして、いずれもこの問題については調整のための規定を置いております。
ですから今回の法案がなぜこのような粗雑な作り方になったのかというのは私は非常に疑問に思っているところです。これを放置しますと、あらゆる子供に関する日常決定が紛争性の高い父母の場合にキャンセルと実行の両方が入力されることによって学校や病院で大変なことが起きるということが想定されます。
そして、学校の側からすると例えばプールに入れてくださいと父がプールに入れないでくださいと母が言った場合に、どちらを拒否しても、親権者の意向に逆らったということで損害賠償の対象になるということになるので大変なことになるのではないかと思っております。

牧山ひろえ議員
今のご意見をお聞きするといろんなところで問題が生じるんだなというふうに痛感いたします。当事者間にとどまらないというわけですよね。学校側ですとか、病院側ですとか、この問題は、法文を父母から現に監護する親に修正すればそれで解決する問題だと思うんですね。法務省は、なぜこの簡潔で効果のある解決策をとらないと思いますと思われますでしょうか?

木村参考人
それは法制法務省に聞いていただきたいところでありますけれども、混乱を甘く見ているということかと思います。やはり加害性の強い方というのは親権をいくらでも乱用するということが先ほどの山崎参考人のご指摘にもあったことですし、熊谷参考人からはですね。ずっと経済虐待が日本でたくさん起きているんだということを訴えておられます。そういう状況の中で加害行為にいくらでも使えるような一方的なキャンセル権を付与する。しかもそれを合意ではなくて強制によって裁判所の命令によって付与するということが何を生じるのかということは具体的に想像していただきたいと思います。

牧山ひろえ議員
親権者変更手続きのお話をよく法務省されますけれども、これが容認されるケースであっても同居親にとって更なる負担と消耗になると思うんですね。このような対応は救済策の名に値しないと思うんです。
日本の離婚の9割を占める協議事項において強いられてまた、またはやむを得ず、あるいは誘導されて共同親権に合意してしまうということが特にDV被害者について懸念されていますけれども山崎参考人にお伺いしたいんですけども、現場の実感としてこのリスクをどのぐらい感じておられますでしょうか?

山崎参考人
ありがとうございます。先ほども申し上げたように、力の差のあるところっていうのはもう逆らえないんですよね。それで例えば協議離婚私達のシェルターに逃げてきて、弁護士さんお願いして、調停でやりましょうっていうケースはまだいいんですけれども、そうじゃなくって、これってDVでしょうかっていうような段階で、よくわからなくてつらくってそれで協議離婚をしてしまう。
パートナーが怖いから離婚してくれるんだったら今日共同親権でもいいわってなってしまったときにですね、また先ほど木村参考人がおっしゃってたように何かあると訴訟だとかそういったループになっていくっていうのは非常に懸念しているところです。

牧山ひろえ議員
また法務省は親権者変更の申し立てが救済策になると答弁しているんですけれども、木村参考人に、親権者変更というこの救済策へのご評価をお聞かせいただければと思います。

木村参考人
親権者変更のためには先ほどから問題となっておりますように、非常に長くの時間と労力が必要になります。従ってトラブルが起きそうなものは事前に除去しておくに越したことはないと思いますし、それが救済策であるというふうに考えること自体、訴訟コストがゼロであるという非現実的な想定を置いていると言わざるを得ません。

牧山ひろえ議員
私はやはりお互いの共同親権への意志これが大事だと思いますし、これを確認しっかり確認するプロの第三者が必要かと思うんですね。それが裁判所になるのかと思うんですけれども、結局、裁判離婚でも親権者変更の審判でも、父母双方の合意がなく共同親権となりうることが最大の問題であり、合意が必須となれば、ここまでの懸念は相当程度解消すると思うんですけれども、山崎参考人そして木村参考人はいかがお考えでしょうか?

木村参考人
合意型もちろん非同意強制型がまずいというのは、ここまで申し上げてきた通りです。また合意型について、ぜひ考えていただきたいのはこれまでは子供の面倒を見るから親権を持つという選択肢しかなかったわけですけれども、これからは子供の面倒は見たくないしかし口だけは出したい。
だから別居になった上で親権者との共同親権を持つという選択肢が生まれます。これは非常に新共同親権にしなければ何々をしないぞ、というような取引に使われる可能性がありますので、合意の成立性の担保というのはぜひしっかりしていただきたいと思います。

山崎参考人
合意ができないから離婚するのであって合意ができないからシェルターに逃げてくるわけですよね。そうするとやはりその合意が必要っていうのが付与されても、不本意な合意。先ほども申し上げたように「共同親権にするんだったら離婚してやる」っていうことで、不本意な合意っていうのもありうる本当の合意なのかっていうのをどうやって見抜くのかなっていうのはあります。その辺は合意があったとしてもちょっと怖いなとは思っています。

牧山ひろえ議員
その合意を確認する意味でもやはり第三者、プロの第三者が必要だと思われますか。

山崎参考人
プロの第三者、テレパシーとか使えればいいですけれども、なかなかいくらプロでも本当にその人の本心とか、ここまでの夫婦のバックグラウンドとかを全部把握するのって大変だと思うんですよね。だから、なかなかそれも難しいのかなって、プロの第三者でも見抜くのは難しいのかなとは思います。

牧山ひろえ議員
最後に木村参考人、いかがでしょうか?

木村参考人
ですから、合意型に限定をするのであれば、離婚時は必ず単独親権とした上で2人で共同親権届を出すというような仕組みにすればよろしいのではないかと思います。また合意が失われたらいつでも単独親権に移行できると。届け出だけで単独親権に移行できるという仕組みを備えれば、合意型の共同親権は十分に実現ができるのではないかと思います。このような案を検討していない法制審議会ははっきり言って仕事をしていないなというふうに感じます。

牧山ひろえ議員
時間ですので終わります。本日得られた知見は今後の政策策定の参考にさせていただきます。ありがとうございました。

伊藤孝江議員(公明党)
公明党の伊藤孝江です。4人の参考人の先生方、今日は本当にお忙しい中貴重なご見解を賜り誠にありがとうございます。
では私の方からまず沖野参考人にご質問をさせていただきます。今回のあの法制審での検討におきましては、子供の利益を最大限に確保するというところにポイントというのか重点をしっかり置いて検討するという方向でなされてきたというふうに承知をしておりますけれども、この法制審での議論の中で子供の利益というものをどのように定義を付けたのか。定義づけたということでないのであれば、どういうことが子供の利益であるというふうにして議論が進められてきたのか。そうしたことについてまずお伺いをさせていただきたい。
もう一点、この子供の利益の確保に関して、子供の意思の確認やあるいは尊重という要素をどのように位置づけているの。その二点についてお話しいただけますでしょうか?

沖野参考人
ありがとうございます。子供の利益という概念自体について定義というのはございません。しかし今回は子の養育にとって子供の利益ということですから、子供が心身あるいは社会的に健全な状態で生育していけるその環境を整えるということが子供の利益という観点において重要だと考えられております。そしてその際にですね、親の責務として書かれている点に明らかなように、親がそれぞれ親の地位において子供の養育に責任を持って関わっていくと。そのもとで養育されていくということは非常に重要な利益であると考えられているわけでございます。意思の問題でございますけれども、この人格の尊重ということが最も重要であるというわけで、それを親が受け止めるということが大事でございますけれども、子供の意思というのももちろん重要です。
ただ、子供の存在ということから考えますと、子供の利益と、ときに対立するということがあります。子供の判断能力という問題もございます。それから、その子供の意思というのを延長するというような懸念も出てくるわけです。
延長と申しますのは、子供の利益が万能であるかのようにですね、意思を無理矢理に表明させるとか、親の間の選択をさせるとか、それは子供の精神ですとか、心身の今後の発達にとっても決して良くない影響を残すということも懸念されておりまして、子供の意思を正面から打ち出すということに対しては非常な懸念もあるところでございます。
なお現在も家事事件手続き法においては、子の意見を聴取する。あるいはそれに適切な配慮をするということは設けられているのですけれども、やはりそれが子の利益と対立する可能性もあります。そのことは、現在でも了解になっており、それが非常に重要であって、尊重されるべきということは子の人格の利益、その点の考慮というところは十分になるだろうということでございます。

伊藤孝江議員
引き続き沖野参考人にお伺いをいたします。先ほどの最初の意見陳述の場合も多様化というところについても言及をされておりましたけれども、今、家族のあり方であったり、もちろん夫婦間であったり、離婚後の元夫婦の間であったり、子供との関係であったり、またどういう過程を望むのかというところについて、以前とは比べ物にならないぐらいいろんな形が今は想定もされて、想定をしていかなければならない状況にあるかと思います。この子供や親の意志の、家庭に対しての思いだったり、求めるものの変化だったり、また社会における家族観というのも多様化しているという中にあって、これまで以上にその子供の最善の利益っていうことを確保していくんだと。子供の養育の重要性っていうのはこれまで以上にやっぱり訴えていかなければならない。理解を求めていかなければならない面もむしろ強くなっているのかなということも感じます。その点、沖野参考人はいかがお考えでしょうか?

沖野参考人
ありがとうございます。ご指摘の通りだと存じます。この点はおそらく昭和22年の時点とはかなり違ってきているのではないかということでございます。
それから、そのまさに子の最善の利益のためのあり方は、個々の状況に応じて非常に多様であるというその現在において、どういうあり方が模索されるかということでございます。先ほどDVの問題が取り上げられておりまして、大変重要なことで、これはもう急務であると考えられますけれども、私ども法制審議会では各種の参考人の方のヒアリング、パブリックコメント、それから弁護士のご経験などに基づいて様々なご意見を伺ってきましたが、その御感想を一言で言うならば、多様であるということでございます。
子供から引き離されてしまって非常に困惑している母親の方のお話であったり、これまで一緒に育ててきたのに、自分が阻害されてしまう父親の話であったり、あるいは協力関係にはあるんだけれども、単独で親権にしてしまうとその後一方の心変わりによってどうなるかが不安なので離婚に踏み切れないなど、そういったケースもございまして、そういう多様なあり方というのは実感しているところでございます。

伊藤孝江議員
ありがとうございます。もう一点法制審での議論についてお伺いしたいんですけれども、先ほどの議論に出ておりますけれども、当事者間で合意がない場合であっても、今回、共同親権になる可能性が裁判所の判断ですね。この仕組みを導入をするというふうにされた議論の中でどういう点を重視をして、この仕組みを取り入れられたのかということについてご説明いただけますでしょうか?

沖野参考人
ありがとうございます。今ご指摘いただきました多様なあり方ということを考えたときには、個々の状況によって子供のために何がベストであるかということはいろいろな形があります。そのための選択肢を一つ用意するというのが非常に重要だと考えられます。
当事者父母が合意したときに限るということに対してましては、これは子供の利益の確保のために何が必要かということが適切に判断されることが大事であって、親の意思の実現のための制度ではないわけです。
そして実際どのような場合がありうるかということにつきまして、これは弁護士の方からあった点でございますけれども、同居する親だけではなかなか不十分であるというような場合にもちろん親子の交流を充実させていくという手法はあるわけでございます。そこに共同親権という可能性があれば、それは選択肢としてより柔軟な対応より適切な選択肢というのが可能になると言われております。
また、案件によりましては「合意はしたくない。しかし裁判所の決定であればそれで良い」と言われるような方もいらっしゃる。ということでございますので様々な面があると考えております。

伊藤孝江議員
ありがとうございます。もう一点、沖野参考人に法制審での議論、ないしは沖野参考人のご意見でお伺いできればと思うんですけれども、親権者の変更という点についてお伺いをしたいと思います。
離婚後共同親権、ある状況から単独親権にするということが先ほど救済型というような形での取り上げられ方もされておりました。
実際にいろんな場面でとにかく全て反対をするので、何一つまとめることができない。
あるいは訴訟なり調停の申し立てなり手法の利用というのがとにかく相次いでいるという場合であれば、子供のために、もちろん良くない状況であることはもう誰が見てもそうなのかなというところは納得するところでもあるでしょう。
親としての責務としては意見が違うことは当然、婚姻中でもあると思うんですね。いろんな場面で、でもその中で何かしらの結論を出していくあるいは子供に負担をかけさせないっていうことを考えながら議論をしていくことができるのかどうか。そうしたことが大事な中で、それができない状況であれば離婚後共同親権となっていたとしても、単独親権へ親権者変更あるいは親権停止というような形で裁判所が積極的に介入していくべき。私はそう考えています。
また今、やはり心配されている一つは、せっかく先ほどの方のメールの方もありましたけれども、単独親権で平穏な生活を何とか作り上げてきた中で、共同親権を求められることになって「また巻き込まれるんじゃないか。ましてや共同親権になるのではないか」という懸念をなされている方もいる。
今の平穏な状況を維持するということは何よりも最大限大事なことだと思います。
離婚に至る事情で離婚後の親子関係だったり元夫婦の関係であったり、またどのように関わってきたのか――というようなことも含めて、そして何より、その子供がもう大きくなっているのであれば、子供の意思やこれまでの思いっていうのはやっぱりここは大事にされるべき。
そうした中で申し立てをされれば簡単に共同親権が認められるということにはすべきではないというふうに考えています。
この親権者変更という点について、裁判所に求めることあるいはこういうところをしっかりと見ていかなければならないとならないというふうにお考えになられていることがあればご説明いただけますでしょうか?

沖野参考人
ありがとうございます。ご指摘の通りというふうに考えております。それ自体法案の立場であるというふうに考えております。
裁判所における親権の変更という制度は、やはり適切な子供の利益の確保の点から一旦決めたらそれで終わりであるということではない。そこにさらに制度の用意をするものでございます。もちろん適切な親権の行使でないということに対しては親権の停止もございますし、親権の喪失もございます。けれども、これがなかなかハードルが高い。そうした状況がある中で、もう少し柔軟に対応できるものということも期待されて設けられていることでございます。
けれども、そこは子の利益のために必要かという観点から裁判所が判断することになっておりまして、その中で、これまでの経緯というのも十分に考慮するということで、明示されているところでございます。また濫訴に対しましては、頻繁に申し立てをして理由もないのに……ということについては適切に却下をする。早期に却下をする。ということが想定されているというふうに承知しております。以上です。

伊藤孝江議員
熊谷参考人にお伺いをさせていただきます。
先ほど養育費に関して中心にご見解を披露いただきました。
その中で法定養育費というものに対しての期待と、なおかつまだまだの課題があるという点についてもご指摘をいただいたかと思います。
今回の法定養育費というのは、補充的な位置づけの中で、金額的には先ほどご懸念として挙げられていた養育費――として、きっちりと定めるものよりも金額としては下になる可能性が高いというようなことも含めて今言われているところでもあります。
けれどもこの法定養育費という養育費が発生しない時間を作らないであるとか、とにかくまずしっかりと子供の生活を経済的にサポートをしていかないといけないんだということをメッセージとして発信する。そうしたことも含めて、法定養育費に求められる機能としてどういうことをお考えなのか、という点についてご見解をお伺いできますでしょうか?

熊谷参考人
法定養育費は結局、本来取り決めるべき養育費についての取り決めがないという場合ですね。取り決めがあれば先ほどのような先取特権その他で履行の確保の道がありますが、そういったことができない場合で取り決めがない場合に、法定債権としてこのような法定養育費というものは認めようと。そういうところには大変意義があると思います。
とはいえ先ほど申し上げたように、法務省令で定めることになっていますので、結局現行の養育費の算定表の懸念としては補充的な制度である。ということが一般的な説明としてされています。養育費算定表の一番下限あたりに設定されるのではないかということで懸念を持っているわけですね。
ただ、実際に子供が生活をしていく基盤を支えるものですので、現実にそのように足りるものでなければならないわけなので、そのところを十分に考慮して法務省令で決定していただきたい。率直に言えば、あまり安すぎるようにしないでもらいたいということであります。

伊藤孝江議員
ありがとうございます。次に山崎参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。先ほど々な事例、いろんな皆さんのご苦労等も紹介されながら、お話いただきました。
その中で当事者間で、力関係に違いがある。なので、いくら何をどうしたとしても、やっぱり合意をしてしまう。本心からの合意に向けて協議をしていくことが難しいというお話もいただいたかと思います。
今回、養育費であったり、例えば離婚の要件にする云々というような話も先ほど出てましたけれども、この協議離婚というのが今、日本の中ではやっぱりほとんどが協議離婚というあり方の中で、今日離婚のあり方制度について何か山崎参考人の立場からご意見ありましたらぜひお伺いできればと思います。

山崎参考人
ありがとうございます。協議離婚するにあたってやはり養育費ってすごく大きな問題だと思うんですね。「離婚したいから、養育費も何もいらない」という方がすごく多いんですよね。「もう、もう関わりたくないからもう離婚さえしてくれればいい」という方が非常に多い。でも養育費っていうのは子供にとって大切なものなので絶対に必要なことだと思うんです。
なので協議離婚するときも、養育費の確保というのは重大なことです。それにはどうしたらいいのかというと、例えば法定養育費を決められたとしても、もしかして1万円2万円とかで決められてしまったら、先ほど熊谷参考人もおっしゃってましたけれども、とてもとても大変ですし法定養育費について、例えば生活保護を受けている場合、「法定養育費もらえるんだから、差し押さえの手続きしなさいよ」って他の職員から必ず言われるんですよ。
そうすると、当事者は弁護士を頼まなきゃいけないし、執行の手続きもやらなきゃいけないということで、とても素人にはできないんですよね。弁護士さんにお願いしていっぱい目録作ってみたいなことを自分ではできないけれども本人がやらなきゃいけない制度なのであるならば、先ほども熊谷参考人もおっしゃってたように「国が取り立てる。当事者が何もしないでもいいように国が取り立てて、そして当事者に渡して国が支払うべき人に請求をする」という制度をつけた形での、協議離婚予定というのがあればいいなというふうに思っています。はい。ありがとうございます。以上で終わります。

清水貴之議員(日本維新の会)
日本維新の会の清水と申します。今日は大変貴重なお話をありがとうございます。
まず木村参考人にお伺いをしたいと思います。コメントいただきました中で「欧米では共同親権が主流というスローガンばかりが独り歩きしている」というお話があったかと思います。確かに見てますとやっぱりこれは欧米の時代の流れだと欧米の流れに合わせてというのはこういったアナウンスメントをよく聞くように感じるところであります。
この考え、この認識自体がそもそも欧米では共同主義が主流ということ自体が違っているのか、それとも主流ではあることは間違いないんだけども、やはりあのDVであるとか虐待であるとかこういった問題を含みながらその共同親権というのを各国進めているものなのか。このあたりは、まずいかがなものなんでしょうか?

木村参考人
大変素晴らしい質問ありがとうございます。付録の位置につけてきたのですけれども、欧米で共同親権が主流かどうかというのは非常に難しい問題ですね。まずですね。日本の共同親権というか共同親権の率を計算するときに、婚姻中は共同親権、日本でもそうであるわけですから、どの国の共同親権率が高いのか、というのは離婚後の共同親権の率だけではなくて、婚姻中の共同親権率と合わせた数字を見ないといけません。
日本の場合には嫡出子の比率というのが非常に高くて、子供が生まれた場合97.6%がお父さんお母さんと婚姻している――ということで父母の共同親権率100%から0歳児は始まるということです。
私の試算ですと成人するまでに父母が離婚する確率は23%ぐらいが日本ということで、日本は75%ぐらいが出生児から青年時まで父母が婚姻中に共同親権を継続するということになっております。
この数値は非常に高いものでありまして、例えばアメリカですと、そもそも事実婚も多いので、同居や事実婚のポイントを数えたとしても、1歳未満の子供が父母と一緒に住んでいる割合というのが77.8%ぐらいだそうでありまして、生まれた時点でシングル家庭というのがアメリカの場合18%ぐらいということであります。
ここから離婚家庭が増えていくということになりますので、15歳から17歳時点で夫婦カップル・大人のカップルと住んでいるという子供は64.3%。この中には相当数のステップファミリーが含まれると思われます。
そうするとアメリカでは、離婚後の共同親権率が乗って、いろんな計算がありますが、2割から3割ぐらいだろうと言われている。
すると離婚後の共同親権率を合わせても共同親権下で育つ子供の率というのは日本に及ばないということになります。
フランスでも同じような数値がありまして、例えば2016年のフランスの3歳未満児の家族構造を見ますと、カップルと子供が一緒に住んでいる3歳未満児で段階で87.2%しかカップルと住んでいなくて、母子家庭11.7%父子家庭1.1%と、いうことであります。
要するに欧米ではですね、婚姻率が非常に低いので、非婚離婚後の共同親権という制度を導入していかないと共同親権率が上がっていかないというようなことかと思います。

清水貴之議員
おっしゃる通り、婚姻の形が違うというのはその通りだなというふうに思います。
今のお話で、とはいえ率が低いにしろ、共同親権を取っている場合は値は当然だと思うんですが、DVや虐待の問題というのやっぱり各国発生しているという認識でよろしいですか。

木村参考人
重要な問題でして、DV虐待を除去しませんというふうに堂々と言っている国はもちろんありません。しかし実際に現地のDV保護の団体とかの声明を見ていると、非常に被害者にとって酷な状況になっているということがうかがわれます。そうしたアメリカの研究もありますし、イギリスの研究もありますし、ドイツの研究もあります。
それらの研究を見ると、共同親権を拒否すること自体が、子の福祉に反する行動をしていると見なされがちで、この結果はDVや虐待を裁判所で訴えるということ自体を被害者が忌避するというような現象が起きているという指摘も非常に多くあります。
こうした指摘は各国が一生懸命、被害者団体等がしているんですけれども、なかなか日本に届かないという現実がありまして、ぜひ参議院議員の皆さんはですね、その各国のあのDV被害者たち虐待の被害者たちの声も汲み上げて比較をしてほしいと思います。

清水貴之議員
木村さんにもう一点お願いいたします。非同意強制型の話がありました。これを言うとおそらく法務省や裁判所は、「裁判所が判断する」という意味では非合意なんでしょう。「いや、ちゃんと状況をいろいろ見ました。状況を見て判断した結果がこうです」というような答弁になってくるんだと思うんですよね。これについてはどのように考えますか。

木村参考人
はい、どういう場合に合意を得て強制すべきかということについて、法律というのは皆さんが作っておられる法律はいつでも典型的な適用例というのを示せるはずです。窃盗とはどういう例ですかと言われれば、これが窃盗ですというふうに示せるわけです。
今回の審議を見ていると、どういう場合に合意でも強制しなきゃいけないかということについての具体的な指摘が非常に乏しいわけです。
例えば先ほど大きな参考人からにありました、命令されると共同親権をやってもいいかなって思う人たちがいるのではないかと。
この想定は非常に非現実的でありまして、何とか本心ではやりたいんだけれども命令してくれないとできない――みたいな私が詰んでるケースと呼んでるケースですが、このようなケースは後のために法律を作るというのは、これはおかしい。やはり合意が積極的にある場合に限るべきです。
また同居への監護が不十分であるケースというのが指摘されましたけれども、共同親権というのは医療や教育についての決定を別表にわざわざ同意を取らないと決定ができない状態ということになるので、監護のための時間、あるいは監護のための労力というものを奪っていくわけですね。
そういうようなことを監護不十分なケースであればさらに、監護の状態が不十分になるということが想定されます。
もしも監護の状況が不十分ということであればそれはシングル家庭の方に対して、資金援助であるとかヘルパーさんを派遣するとか、そうした形で改善すべきであって「別居親の同意がないと教育やあるいは病院についての決定ができなくなる状態にすることが監護不十分ケースの援助になります」という発想はちょっと驚きを禁じ得ないところがございます。

清水貴之議員
ありがとうございます。続いて山崎参考人にお願いいたします。
いろいろ御議論となってますDVの話ですが、それをどう証明していくかというのは本当に難しい。被害者側からして難しい話だなというふうに認識します。
もちろん「殴られた、あざがありました」と、そういうわかりやすい例ばかりじゃなくて、精神的なものというのが非常に大きいというお話もあります。
そういったものを被害者側が子や自分を守っていくために、防御していくために、「これはDVです」っていうのを訴える場合ですね。
録音ができたり、何か証拠が残せたらいいけど、こういったのもなかなか簡単ではないと思うんですね。でもそんな中で例えばこういったケース、例えばこういった場合とかをこれはDVとしても認めてもらえたらありがたいとか、求めてくれたら非常に被害者側からしたら証明をしやすくなるとか。
訴えやすくなるとかですね、そういった何かケースとかですね具体例みたいなものがあったら教えていただけたらと思うんですけども。

山崎参考人
私20年以上この仕事やってるんですけれどもパートナー怖いと思ったら、それはDVなんですよね。怖くって例えばパートナーが車で帰ってくる車が砂利を踏む事でもって心臓がドキドキしちゃって、もう何もできなくなるとか。ご本人が一番怖いと思ってるってことがDVであることなので、こういったケースっていうことではなくてご本人がどれだけ恐怖に思っているのか恐怖に思うってことはどういうことかっていうと、パートナーに支配されてるから恐怖に思うんですよね。
自分の思ったこともできない。なので後ご本人は怖いと思っているっていうのがDVですし、それとその内のシェルターに逃げてこられる方で、よく偽DVとか何とかっていう話ありますけれども、お子さん連れて子供自分の仕事やめなきゃいけない。子供も転校させなきゃいけない。そして生活保護を受けなきゃいけないっていう中に飛び込んでくるお母さんたちに、そういうDVじゃないのに逃げてくるって人は1人も今までいなかったのでその辺はその当事者の方の、その子は怖いと思ってる気持ちっていうところが指針だと思っています。

清水貴之議員
ありがとうございます。続いて熊谷さんにお願いをいたします。養育費の問題、私も非常に重要な問題だと思っております。お話の中でですね、まず最初の段階ですよね。協議離婚などの場合に養育の取り決め自体を、ちゃんと制度化されてないという話で、公的機関の関与があった方がいいんじゃないか――という話がいただけたかと思います。それは、具体的にどういった関与がいいのか?
また、そういったものも関与して、養育費の取り決めを作って公正証書みたいな感じになっていたらいいのかもしれません。しっかり書面であるとか、後々、最初は決めて最初は支払うかな。数年は支払うかもしれませんが、ぱっと逃げてしまったりとかですね。たどり着けなかったりというケースも多々あるというふうに思います。
どうしたらその最初の段階でしっかり取り決めてそれを履行させることができるようになるというふうにお考えでしょうか?

熊谷参考人
大変重要なことでして、取り決め率の向上というのは、各国いろんな工夫がされているかと思います。また、例えば先ほど申し上げた例としましては、離婚届の提出の際のですね、離婚のその協議事項の成立要件として、養育費債権に関しての合意がある、あってそれを称することというようなやり方が考えられると思います。
例えばそれは法テラスだとかと連携してですね、公正証書化した書面の添付を要求するとかということがあると思います。
ただ手続きがちょっと重たくなるもんですから、協議事項がしにくくなるというのはそういう側面ももちろん出てきてしまいますし、欠点として先ほどのDVなんかの場合はとてもじゃないけど、そんなことをやってたら離婚なんかできないというようなご意見もあるところではあります。
そういう方式も考えられるし、そこにいまでいかなくても、もっと手前の段階でですね、例えばQRコードをつけてですね、それをガイダンス、養育費に関して支払義務があって「こうしなさい」とガイダンスを受講することを義務付けるとか。そういったものももうちょっと軽いところでは最初のステップとしてはあるのかなというふうに思います。
そのDV被害者の離婚したいけど、なかなか話し合いができないっていう問題と、一方で養育確保するためには、ある程度手続き重たく所する必要があるということのバランスをどう取るかということかなと思っております。

清水貴之議員
ありがとうございます。沖野参考人にお願いをいたします。
法制審議会の中で子の意思の尊重、これについて、かなりの議論があったというふうにお話がありました。
先ほど質問にあったところで、意思を尊重するとなかなか偏重みたいなことも起きてしまう――という話もあったかと思います。
子供の意思をどう雄々しく正確に捕まえるのかというのは本当に難しい。子供は親の影響を多分に受けるものですから非常に難しい。
先日の法務委員会で、この辺りを法務省などに聞いた場合には、いろいろ専門家が調停委員の方とかの専門家がいて、そういった方々が判断をする聞き取り、子供にも聞き取りをするとかですね。
例えばゲームなどを使いながら、子の本当の本心をこう見る、というような工夫をするとか。いろいろ法務省も考えてるんでしょう。
それでもやっぱり難しい話かなというふうには思っております。このあたりについてかなりの議論があったということですね。法制審の中での議論であるとかそのあたりをお聞かせいただけたら幸いです。

沖野参考人
ありがとうございます。まさに子供の意思をどうとらえるかっていうのは本当に難しいことです。やはり影響を非常に受けやすいということがございますので、そうしますとご指摘のように専門家の関わりということが大事になってまいります。
裁判所におきましては、例えば離婚の際の親子交流について試行的な実施を促すことが可能かどうかということが、今回、提案されております。
家庭裁判所の調査官は心理学についての専門ということでございます。そういった法律以外の学習の分野の専門の知見を使って、子供がどういうふうに考えているのか。無理強いすることなく、かつ自分が選択してしまったというようなことではなく、いかに把握していくか。そうしたことが工夫されていくということであります。そのための人的体制というのが家庭裁判所で整えられるべきだというふうな議論がされていたところでございます。以上です。

清水貴之議員
もう一点。DVの証明ですね。判断証明この辺りも今もここでも話が出てるやっぱり難しい話かなと思って、この辺りの法制審の中での議論というのをお聞かせいただけたらというふうに思います。

沖野参考人
ありがとうございます。ご指摘の通りです。DV対策というのは本当に大変重要なことです。この局面だけの問題ではない問題ですので、それ自体も、より一般的な問題であると、DV被害防止法自体が裁判所が保護命令とかそういう話になっております。そこでいかに養育費を確保していくかということになるかと思います。それまでの経緯ですとか当事者からの聞き取りですとかそういったものを駆使していくということになると考えられます。以上で終わります。ありがとうございます。

川合孝典議員(国民民主党)
国民民主党新緑風会の川合でございます。本日は貴重なお話を頂戴しましてありがとうございました。まず山崎参考人にご質問させていただきたいと思います。
今回の法改正で法定養育費が導入されることになりました。今回のこの法律のたてつけで実際に子育て支援に役立つかどうかということについて、どのようなご認識なのかをまずお聞かせください。

山崎参考人
ありがとうございます。法定養育費なんですけれども、先ほどもお話に出られてきたように、非常に低い金額で設定されるのではないかという懸念があります。
低い金額で設定してしまった法定養育費を変えようっていうふうになると、また元々養育費の取り決めがなかった中で、養育費請求を家裁に申請をしようとしても、なかなかハードルが高くなってくるのではないかなとまず感じています。
かえって正式な養育費の請求がしづらくなるっていうことと、あと裁判所でたとえ養育費が決まったとしても払わない別居親もおります。あと多いのがですね、養育費が決まって「払いますよ」ってなって払うんだけれども、今月は払われたけどその次の月は来ないとかね、それとか1日遅れて払われたとか、普通1週間遅れて払われたとかってのが非常に多いんですよね。
払ってないわけだから差し押さえもできないんですけれども、そういった中で法定養育費が決まって、「子供を育ててるから当てにしなきゃ」ってならないですよね。
あてにしていたら、今月は来なかった。先月は来たけれども今月どうなんだろう――っていつも重い気持ちになっていくんじゃないでしょうか?
そういうのはかえってこの子供の養育に対して悪い影響を与えるんじゃないかなって思っています。
同居親にとってはその養育費が払われないっていうのは死活問題ですから、そのたびにうちのシェルターに電話がかかってきて、裁判所に履行勧告を出そうかって言って電話したりとかすごく多いんですよね。なので法定養育費が決まったからといって子供さんが健やかに育って、要求が決まるまでの間とは言いながらも、そういう保証にはならないというふうには感じてます。

川合孝典議員
ありがとうございます。沖野参考人にご質問したいんですが、今山崎参考人のお話の中にありました通り、裁判所で養育費が決まっても支払わない別居親がいらっしゃるということです。この点について前回の法務委員会でいわゆる罰則を設けるべきなのではないのかと、裁判所決定に対して従わない場合には罰則を設けるべきではないかと、海外の事例を引き合いに質問をさせていただいたところ、民事の事案にいわゆる刑事罰を課すことは、前例にない。ということで非常に後ろ向きな答弁がそのときございました。沖野参考人は裁判所決定に反する行為を行った場合の罰則規定を設けるということについて、どうお考えになるのかということをお聞かせいただきたいと思います。

沖野参考人
ありがとうございます。その点は非常に難しい問題であると考えております。と申しますのも、裁判所がどういう権能を持つかというのが各国によって違っているからです。例え米国の裁判所は非常に強大な権限を持っており、その命令に違反した者に対してのサンクションというのを与えられる。
そういう権限を持っておるわけでございますけれども、日本では裁判所自体がそういう権能を持っているということではございません。そうしますと刑事罰ということになりますとそれをどういう場合に導入できるのか。それは刑事法の問題ということになりますので、おそらくただ、他の例があるからそのまま横に持ってこれるというものではなかろうというふうには思います。
ただ他方でいかにサンクションを確保するかというのは非常に重要なことでございますので、一定の行為に対してまさに熊谷委員も御指摘になったところですけれども、どのような形で実効性確保を図るか。というのは民事だけではない形で図っていくというのは十分考えられることだろうと思います。ただ、一般的には民事の規定の中で罰則というのは多くない。例えば法人の場合ですとか、いくつかございますけれども、やはりそれは多くないので越えるべきハードルは結構あるのかなというふうに印象を持っております。

川合孝典議員
ありがとうございます。もう一点、山崎参考人にご質問していただきたいと思います。今回共同親権が導入されて面会交流というものも今後進むであろうということを想定したときに、お子さんに会いに別居親の方がお越しになるということになったときにそのことに対していわゆる同居親の方からご懸念されてる転倒がもしあればお聞かせいただきたいと思います。

山崎参考人
ありがとうございます。シェルターに入ってくる方または協議離婚しても夫が怖いということでDVの相談を受けている方なんですけれども、ほとんどのお母さんたちは子供たちが会いたいなら会わせたいっておっしゃってるんですね。
ただ会わせられないのはなぜかっていうと、やっぱり危険が伴う。特に住所・住民票を閲覧制限をして取得して逃げ隠れして暮らしている場合、面会交流をきっかけに居場所がわかってしまって押しかけてくるんじゃないかっていう懸念がある。それと、あと実際に離婚が成立してお母さんの単独親権になって面会交流を第三者機関(民間支援機関)にお願いしたケースがあるんですよね。支援機関で面会している最中にスタッフの目を盗んで父親が子供を連れ去ってしまって警察が動いたっていうケースもあります。
それと後、面会交流を通して復縁を迫るっていうケースも非常に多いんですよね。
シェルターに逃げてくると、「もう2度としないから。ごめんなさい。愛してる」というLINEやメールが、ばあっときて、「何とか戻ってきてほしい」と。弁護士の指示ではなく、自分の意思なんだということがわかると、今度は何とかもう1回やり直せないかっていうケースが非常に多いんですよね。
そういったときに、子供さんを使って「お父さんはもう1回お母さんに結婚を申し込むから一緒に暮らそうね」みたいなことを言って、また自分の生活がね、脅かされるんじゃないかっていう、そういうふうな懸念をしている人もたくさんいます。
そういうことがないように、安心して別居親に会わせることができる制度設計っていうのをまず備えてもらいたい。それで安心した面会交流っていうのをさせたいっていうふうに思ってるお母さんは非常に多いです。

川合孝典議員
ありがとうございます。実際、法律が改正されて以降、具体的にどのような枠組みでこの共同親権だとか、いわゆる面会交流の取り組みを行っていくのか。ということについて細かいところが実は何も決まっていない。
ということがこの間の議論の中で今後、詳しくは今後詰めていきますといったような話にどうしてもなってきます。
結果、いわゆるこの今回の民法改正に積極的な方、反対されてる方、双方の方がやはりこの法律改正に対して不満をお持ちになっているということなんですよね。
私自身はいわゆる親権のあり方がどうなのかということ以前の問題として、いわゆる離婚することによって子供が貧困に陥ってしまうようなことを防ぐということ。このいわゆる最大の利益のために親や元親がどう監護に関わっていくのか。それに対しての貢献こそが、子供に対する義務だと思っています。そういうスタンスからいきますと、れから実際法律が改正されて施行されるまでの間に、相当詰めていかなければいけない課題があるんだろうなっていうことは今感じているところです。
その上で熊谷参考人にご質問させていただきたいと思います。
養育費のことをこの間ご議論されてきたということで、共同養育計画というものをいわゆる離婚時、特に協議離婚は9割以上が協議いわゆる協議や調停離婚だということであります。特に協議離婚のときには共同養育計画書策定ということを義務化をすることによって、確実な養育費の支払いというものに繋げていくという考え方があろうかと思いますけれど、この点について熊谷参考人はどのようにご認識されてますでしょうか?

熊谷参考人
おっしゃる通り、共同養育計画ができれば、養育費支払いの確保のためには有効であるというふうに思います。
問題はなかなかそれができてないということですね。離婚のときに養育費を取り決めをすること自体が少ない。先ほどの離婚の成立要件とするべきかどうかっていう議論とそこは関係してくる話だと思います。
それからそういった計画、「養育に関する計画を作りましたか?」という質問が離婚届の用紙の中にあるだけでも、若干の啓蒙効果があるのかなというふうにも思います。
先ほどのDV被害者などとの関係で、どうしても話し合いをすること自体もできない、そういった夫婦においては、「共同養育計画を作成することが離婚の条件」とハードルを上げてしまいますと、離婚ができないので困る、という問題がある。そのバランスの問題かなというふうに考えております。
おっしゃる通り共同養育計画があれば、養育費の支払い確保の上では有効であることは間違いないというふうに思います。もっと言えば、これは日本ではあまりありませんけど、婚前契約ですね。別れたときにはどうするっていうことを、婚前契約で決めておく例も外国ではあるわけですね。そこで養育費についての決定も行っておくと、これはもうベストなわけですけれども、なかなか我が国の風土に馴染むかどうかという問題はあろうかと思っております。

川合孝典議員
ありがとうございます。木村参考人にご質問させていただきたいと思います。いわゆる面会海外の事例ということなんですけど、面会交流を行ういわゆる頻度、いわゆる監護の分掌が進んでいるケースでは、いわゆる養育費の支払い率というものが断然上がる。そういう傾向、数値が出ているというデータがあることを先生もご存知かと思うんですけれど、いわゆるこのそのことを養育費を確実に支払い率を上げていくということを考えた上で、面会交流をいわゆる監護の分掌という考え方に基づいて、養育費の支払い率をそのことによって上げていくということの考え方について先生のお考えを教えてください。

木村参考人
よくぞ聞いてくださいましたという感じのご質問です。おっしゃる通り、養育費の支払いを法的に強化して、養育費の支払い担保を法的に強化するということになりますと、特にDV加害等を行っていた人が無関心になっていたところ、養育費の支払いを義務付け強制されることによって、再び加害的な執着を取り戻すというケースもあるというふうに指摘をされております。
今回、養育費の確保の強化というのは非常に重要で良いことだと私も思うんですけれども、それをやりますと、今、先生がまさにご指摘いただいたように、無関心でいてくれた人が、面会交流を求めて加害的な行為をまた再び行う可能性がある。加害的な行為をした人と被害者が変わらなければいけないっていう状況も生まれてくる可能性が出てくる。このような問題をアメリカのDV支援の専門家から聞いたことがございます。
ですのでご指摘の点は、面会交流を増やせば養育費の支払い率が上がるから面会交流を増やそうという発想は非常に危険でありまして、養育費の支払いと面会交流はきちんと分けた上で支払いの確保をしなければいけない――ということだというふうに思います。

川合孝典議員
ありがとうございます。時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思います。今の先生のご発言の中で、要は会いたいのに会わせてもらえない、というものところをどのように見極めていくのかということですね。
そこの部分というところもやっぱり同時に双方の立場に立って視点に立って考えるという意味では必要なんじゃないのかなと私自身は思いました。次、一言だけでお願いできますか。

熊谷参考人
一言だけ。面会交流を申し立てる制度は日本にもございます。現在例えば令和2年に集結した面会交流事件は1万件ありますけれども、うち却下されたケースは1.7%にとどまる。ということで、面会交流の申し立てを利用していただくのがよろしいのではないかと思います。

仁比そうへい議員(日本共産党)
日本共産党の仁比そうへいでございます。皆さん本当にありがとうございます。まず子連れ別居の適法性についての実情を山崎参考人にお尋ねしたいなと思うんですが、2021年の女性プラザでの講演録を読ませていただきました。
別居すると、この子供を連れて別居するというのはなかなか決断できないことだということが、ご本人のお言葉で「まるで夜の海に飛び込むような感じ」という表現もされてるんですが、山崎さんにご自身のこと、あるいはシェルターでの活動を通じて、この決断なかなか決断できるものじゃないっていう、そうした状況実情を教えていただきたいと思うんですがいかがでしょうか?

山崎参考人
ありがとうございます。まさにそうで、今まで普通に生活をしていてPTAもやり、学校も行かせっていうことをやっていたんだけれども、もういよいよ夫からの暴力でも耐えられなくなってざるを得ない。だけれども、逡巡するんですよね。
修学旅行終わってからとか、あとこの行事終わってからとか。もうちょっと私が我慢すれば何とかなるんじゃないかっていうふうにずっと逡巡してるんだけれども、いや、何かが起こって私のときは娘が包丁を持ち出したっていう事件がきっかけだったんですけれども、それでも出ざるを得なくなった。
だけれども、出るって決めてもこれから生活どうするんだろうか、経済的にやっていけるんだろうか、片親にしちゃっていいんだろうか、って思いました。
私は本当に私1人でやっていけるんだろうか、どこに住めばいいんだろうか、住んだところが見つかっちゃうんじゃないだろうかと。もういろいろいろいろな逡巡があって、それでもやっぱり逃げざるを得ない。それで皆さんお子さんを連れてシェルターに逃げてくるんだけれども、シェルターに入ってもまだ私が悪かったんじゃないかというもう1回戻って一緒にやった方がいいんじゃないかとか、そういうお母さんたちがすごくたくさんいらっしゃいます。

仁比そうへい議員
そのぐらい逡巡して、皆さん迷っていいらっしゃる。中には若い人もいます。そうした実情をこれまで裁判所はちゃんとわかってくれてきたでしょうか?

山崎参考人
裁判所で調停の席でいろいろお話をするんですけれども、調停委員の方は結構いろいろお話を聞いてくれてわかっていただける――ということはありますけれども、うちのシェルターに来た場合には必ず弁護士さん付けますので弁護士さんがきちんとお話をしてくれるっていうのはあります。
自分1人で調停を申し立てて、それでやったって方はなかなか本それ本当なのみたいな扱いをされて、信じてもらえなかったっていうケースは非常にたくさん聞いています。なかなか当事者1人では難しいと思います。はい。

仁比そうへい議員
木村参考人にその問題でですね、世界の論文を拝見をいたしまして、こうした子連れ別居に対してですね、違法な実子誘拐だ、あるいは不当な連れ去りであるというような裁判所の申し立てがされた場合に、裁判所はどのような審査押すべきなのかそして今こんにち、どんな基準が裁判所にあるのか、そしてかつこの今回の法案によってそうしたこれまでの取り組み積み重ねというのは変わるものと考えますか。

木村参考人
まず現在の裁判所では、主たる監護者による別居かどうかということが重視されるとされておりまして、婚姻中からおっしゃる監護者で面倒を見てきたという人が子連れ別居した場合には、特に法制は問わない。
一方、監護者でない人が、監護者が子連れ別居を選択したのにそれを連れ戻すような行為については、誘拐罪等が適用されるケースがある――というのが教科書的な説明かと思います。やはりDVというのは逃げる瞬間というのが一番危険だという指摘もありますので、逃げる瞬間にどれだけ逃げやすい状態を作っておくかというのが法律上非常に重要だというふうに思いますし、日本の現行法はやはり主たる監護者の子連れ別居については刑罰等を使わないということですから、この点は非常に逃げ諸外国に比べると逃げやすいのではないかと思います。
諸外国ですとこうしたことも誘拐罪で取り締まるということをする結果、逃げにくくなるというケースもありますし、日本のDV対策、先ほどから遅れているということばかりが指摘されるのですけれども、ただ一方でDV殺人で子や女性が殺される率というのは日本は非常に低いんですよね。
フランスにしてもアメリカにしても日本よりも遥かに高い数値が出ております。日本が低い、その一因は現在の家裁実務があるからだと思います。
今回の法律は要するに、急迫の事情がない限りは子連れ別居ができないという条文にすることによって、子連れ別居がしにくくなるのではないかということを皆さん指摘されています。法務省は家裁に相談する暇がなければ急迫ですということをずっと言い続けていますけれども、裁判所は法務省の答弁ですとか、ここでの議論というのは基本的には見ずに条文だけを見ますので、指摘されている危険は決して大げさではないというふうに思っています。

仁比そうへい議員
先生の論文をちょっと引用しますと、「裁判所は離婚までの監護者、離婚後の親権者を指定する際に監護の継続性、監護体制監護環境、監護能力、監護科医師の違法性子の意思などを総合的に考慮して判断する」
ここでは同居中に監護してきた実績、主たる監護者がどちらだったか、も重視されるとされていますが、今の家裁の実務とおっしゃったのは、こうしたことでしょうか?

木村参考人
その通りです。

仁比そうへい議員
沖野参考人にこの点についてお尋ねしたいと思うんですけれども、民法あるいは家族法の大議論の中でですね、裁判所の実務っていうのが今、木村参考人にご紹介いただいたように私は積み重なってきてるんじゃないかと思ってるんですけども、これが今回の法案で変わってしまうのかっていかがでしょうか?

沖野参考人
ありがとうございます。家裁の実務そのものをこれまでに重ねてこられた判断を大きく変更するということではむしろない、というふうに考えております。その事情を総合判断して、子の利益の観点から考慮するということは強く打ち出されておりますので、その中にはこれまでの経緯というのは十分に考慮されるということはむしろ名分を持って明らかにされていると考えております。

仁比そうへい議員
むしろ子の利益のためにということが強調される法改正であることによって、一層心に、子の利益になるために積み重ねが続くはずである、という、そういう趣旨でしょうか?

沖野参考人
そのように理解しております。

仁比そうへい議員
もう一点ですね山崎参考人にリーガルハラスメントと呼ばれる不安や危険への実情や恐怖についてですね、先ほど冒頭の陳述の中でもお話いただいたんですけども、改めてこの法案が成立した場合の申し立て権の乱用や、あるいは親権の共同行使に当たっての拒否権的な別居親との関わりと、こういうことに対してリーガルハラスメントに対する恐怖ってのはどのように感じてらっしゃいますか。

山崎参考人
これ皆さんが感じていらっしゃることで、本当にやる人って徹底的にリーガルハラスメントするんですよね。私が経験したのはですね。私のところに逃げてきた方のパートナーがその逃げてきた方を保護した警察官を公安委員会に訴え、代理人になった弁護士を懲戒請求し私に対しては刑事告訴をし、行政に対しては行政に対しても違法行為だということで訴えた。そのように、ありとあらゆる手を使ってやってきたケースがあるんですよね。
逃げてきて共同親権になってどうなるかっていうと、学校で自分の拒否権が尊重されなかったとか。自分の思いが届かないとなったら、学校を訴えるだろうし、そういう人って本当にびっくりするぐらい訴えてくるんですよ。学校も訴えるだろうし、いろんなところに対して訴訟を起こすっていうのはもう、もう本当に目に見えてるなって思いますやる人はやります。はい。

仁比そうへい議員
今の点についてですね。つまり濫訴という問題についてなんですけれども、先ほど沖野参考人にお尋ねしたいと思うんですけども、先ほどの質疑で濫訴については早期適切に却下することが想定されているというご発言だったと思うんですが、どんな場合にどのような手続きにおいてといいますか、却下することが想定されてるっていうお考えでしょうか?

沖野参考人
ありがとうございます。リーガルハラスメントの問題というのは非常に深刻であるということがヒアリングの中でも明らかになっております。
その対策というのは非常に重要な課題でございますけれども、他方で法的なし救済を受けられる、あるいはまさに司法サービスを受けられるということも非常に重要なものでございますので、この間の調整をどう図るかという点が大事になってまいります。
そしてですね、濫用であるっていうのはもう、例えば親権の変更ということに親権者の変更になりますと、それを基礎づける事実が必要ですけれども、そういった事実が想定されないのにも繰り返し繰り返し、短期間で申し立てをするというようなものっていうのは、基本的には乱用という推測が立つのではないかと考えております。

仁比そうへい議員
蒸し返しは許されないっていうような趣旨でしょうか?

沖野参考人
蒸し返しというのが、事実と変更が全くなく客観的に明らかであるような場合なのに、相手が申し立てをする。ということであればそれは許されないわけですけれども、しかしながら一度決めれば全て終わりではないということも確かであると考えられます。

仁比そうへい議員
今の点で木村参考人にお尋ねしたいと思うんですけども、先ほどの意見陳述の中でですね、被害者やその代理人支援者への嫌がらせや濫訴への対策がないっていうことを具体的には語りにはならなかったんですけども指摘がありましたどんなふうにお考えでしょうか?

木村参考人
合意がある場合に限定するというのが一番の対策です。濫訴については訴訟や申し立ての提起自体が違法であると認定される基準は極めてハードルが高いので、これは濫訴自体が不法行為であるというふうにされることはほとんどないだろうと考えていいと思います。ですので不当訴訟の枠組みで訴訟の提起自体が不法行為になるというようなことが抑止力になるというのはほぼ現実的な想定ではないというふうに思われますし、また共同親権になった場合に、様々なやり方で口を出すということができるわけです。
例えばニューヨーク州で裁判になった事案では、父母が両方が親権を持っているので両方が合意しないと旅行がいけない。このために子供のサマーキャンプに行く合意ができなくてキャンプの機会が失われたケースなどが報告されています。
あるいは日本でもですね、非親権者の別居親である父親が娘に標準服、制服の着用を義務付けるのは違法だとして中学校を訴えた事案が現行法でもございます。
現行法では、親権者ではなかったということでこの訴訟は却下棄却されているんですけれども、このような訴訟が共同親権ということになれば、法的根拠をもって主張されうるということになりますので、濫訴というのは親権者変更だけではなくて共同親権になった場合に、その親権の行使についても今言ったようなケースが起きるということであります。
その他、医療系の学会もこのままでは病院が非常に意思決定が困難になるのではないかという要望書を提出している法務大臣に提出したという報道もあります。

仁比そうへい議員
そういう状況のもとで、本参議院の法務委員会に求められている役割審議のありようっていうのはどのようなものだと思われますか。

木村参考人
合意がある場合に限定して本当にいけないのかどうか。ということをぜひ親権に検討していただきたいと思います。また、どうしても非合意強制型が必要だというのであれば、非合意でも強制すべき場合の要件について明確に規定をしていただきたいと思います。
DV虐待の恐れがある場合を除外するのは、それはもう当然のことでして、なんら要件を設定したことにはなりませんし、またDV認定についてもおそれというのは先ほど指摘したように、おそれがある場合は除外するという形ですとか、子や親にDVがあっても共同親権になりうるわけです。
アメリカの文献でもいろんなことが紹介されておりまして、例えばノースダコタ州最高裁は住所をもたらさなかった訴訟、重傷のなかったようなDVはしかもそれが3年以上前であるからあまりにも遠すぎるとかですね。
あるいは顔面を殴ったという過去があったとしてもそれはもうずいぶん前のことであるからということで共同親権にするというようなケースがアメリカの裁判例で報告をされております。そうするとやっぱりおそれがある場合を除外するというのはあまりにも狭過ぎてですね。過去にDVがあった場合ですら除外できない。今そういう危険な条文を使っているという自覚を持っていただきたいと思います。

仁比そうへい議員
最後に熊谷参考人に一文になると思うんですが、先ほどご紹介いただいた令和2年12月の検討会議の取りまとめ拝見いたしまして、立替払いですね養育費のこの制度などについて選択肢や課題等を整理しつつ、引き続き検討を続く続けていくべきであると提言をしておられますよね。ですが、私その後ですね、法務省がそのような検討に答えてるお求めに応えてるのかっていうと、そうじゃないっていうふうに思うんですけども子の養育費の確保のための今の状況っていうことについてはどう考えでしょうか?

熊谷参考人
検討会議については法務大臣に提出を取りまとめを提出をさせていただきました。その後、今回の法案の中には、この立替払いに関する規定は含まれておりませんが、法務省においてこれについては検討しているものというふうに承知をしております。具体的な報告はございません。

仁比そうへい議員
具体的な報告はない? 終わります。

鈴木宗男議員(無所属)
皆さん本日は貴重なご意見ありがとうございます。鈴木宗男と申します。私は最後ですから、よろしくお願いいたします。最初に沖野参考人にお尋ねをいたします。私はこの民法の一部改正する法律案についてですね、一つ嬉しく思っているのは766条なんです。今まで面会交流という表現でした。
今回から親子交流へと明文化されました。5年前から私はですね、超党派の議員連盟で共同養育支援議員連盟になるんです。今の馳浩石川県知事が会長をやっておられまして、その後は柴山議員がですね、会長で後を継いでおられるんですけども、ここで私は5年前から「親と子が会うのに面会はないだろう」と面会という表現だけでもですね、何か刑事施設に会いに行くような想定したりしてですね。かけがえのない血のつながった親と子が会うことについて、面会はふさわしくない。親子交流ということが私は必要ではないかと強く本部長にですね、今日は委員会に北村参事官も来ておられますけどですね、言ってきたもんなんです。
今回これが明文化されたことを私は高く評価してるんですけどもですね。この面会から交流に変わることについてこの法制審議会のですね、家族法制部会では、どんなご意見というかがあったのか、反対等の声もあったのかどうかですね。その点教えていただければ幸いであります。

沖野参考人
面会交流という言葉を親子の交流に変えることについては反対があったとは承知しておりません。むしろ交流のあり方は様々でございますので、そういったものを受け止めるには面会というだけでは狭すぎるという考え方であると理解しております。

鈴木宗男議員
ありがとうございます。私はこの点、法務省民事局の関係者の皆さん方の尽力にも敬意を表したいと、こう思っております。あわせてですね、先ほど熊谷参考人からですね。養育費の不払いについてですね、悪質なものについてはペナルティをという声もありました。私もそういう考えがあって当然でないかと思うんですけども、この法制審議会の家族部会では、この点についてはですね、どういうようなやり取りというか、議論があったんでしょうか?

沖野参考人
養育費の確保措置には様々なものがあるということは当初より言われておりました。しかしながら一方で、民事法制の基本法制としての民法や手続き法の改正ということでどういうものを受けられるかという問題がございます。先ほどご質問があった点につきまして、私、罰則が入ってるのを法人というふうに申し上げましたが、過ち料と誤解しているかもしれませんし、破産ですとか消費者ですとかそういったことを申し上げるべきでした。
ですのでペナルティとしてどういうものを入れるかっていうのは多様な点がありますけれども、それは民事法制でできるかという問題は一つ大きな点としてあろうと思います。
単純な債務の不履行に対して罰則をかけるというのはそれは難しいだろうと思います。けれども、熊谷参考人がおっしゃったようなそれは虐待そのものであるというふうに考えるとすると、罰則ということも考えられるかもしれませんし、その際には要件をどうするかということが非常に重要な問題になってまいります。
これはあの刑事法の問題ということになりますので、なかなか今回の法制ではそもそも受けられるものではないということでございます。

鈴木宗男議員
山崎参考人にお尋ねします。先ほどの山崎委員参考人のお話の中でですね、この法案について、これを廃案すべきだというお話がありました。今日皆さん方の意見も聞きながらですね、これからさらにこの委員会での審議が進められていくと思うんです。そこで、山崎委員からしてですね、この表現、この文言、これだけはぜひともですね、法案に入れていただき、あるいはその不足等にですね書き加えていただきたいという何か希望があるでしょうか?

山崎参考人
私たちDV被害者にとってはもうこの法律は恐怖でしかないんですよね。それで先ほど廃案という言葉を申し上げたわけです。なのでこの法案ありきでこういうのを入れてほしいっていう質問は非常に難しい質問なんですけれども、ただやはりきちんとそのDVですとか虐待について、たった2年間でどこまで法制化の制度がね、整うかわかりませんけれども、そこを完璧にやっていただきたい。それに類する条文を入れていただきたいというふうに思っています。

鈴木宗男議員
山崎さんのその思いというのもしっかり受け止めたいと思いますので、また何かですね、ご意見あればお知らせをいただきたいなと思っております。
先ほど子の利益についてお話がありました。私もこれは4月25日の委員会でですね、小泉大臣に質問しております。私はこの子の利益についてですね、これはいろんな受けとめありますから、ならば明文化した方がいいというのが私の考えなんです。
子の利益は何か。法務大臣はですね、子の利益というか、観点でありますけれども、子供が尊重され、またその年齢にふさわしい養育を受け、そして健やかに成長していく、そういうことを通じて子供の幸せが増えていく、子供の不幸せが減っていく、そういう人間の情に根ざした価値だと思いますというふうに答弁されてんです。
私はこれはぜひともですね、明文化してはっきりさせた方が逆に次回は出るんじゃないかなと思いますけども、各参考人、子の利益についてどう考えるかですね、お知らせをいただきたいと思います。

沖野参考人
ありがとうございます。子の利益の明確化というのは非常に重要なことだと考えております。けれども、それを法律における定義としておくということについては、かなりハードルが高いのではないかというふうに考えております。
と申しますのは、どういう事故を選ぶかによって解釈の余地というのが出てまいりますし、それから法制全体でのあるところではこの用語を使いながら別のところで用語を使っているときに違う意味なのかどうなのかということが問題になったりします。
そうしますとですね。むしろ現在のあり方のように改正法案がそうですけれども、これが人格を尊重されるといった点ですとか、今まさに議員ご指摘になったような考え方は既に盛り込まれていると思いますので、それはあの定義の形で明確化するのは難しいし、かえって弊害というか困難も予想されるのではないかと考えております。

熊谷参考人
私も同じ意見でして子の利益を一時的に定義規定においてですね、行くのは実態にそぐわないだろうと。むしろケースバイケースで判断した方がいいだろうというふうに考えております。

木村参考人
何が子の利益かということについては問題となっている制度ごとに違うのではないかと思います。例えば養育費の徴収については確実に徴収して経済的に困窮しないことこれは子の利益ですし、親権医療や教育についての決定についてはその決定が適切にかつ滞らず滞らずに行われること、これが子の利益ということになるでしょう。
先生がご指摘にあった親子交流についてもやはりそこではですね、またその交流の中身というものが重要になりますし、子供が恐怖や不安を覚えないような面会が行われるってことが子の利益となるということになるかと思います。
ですので場面ごと、制度ごとに子の利益の内容は違ってくるしその制度ごとに実現しようとしている子の利益は違ってくる一つ一つの制度ごとに細かく見ていっていただきたいと思います。

山崎参考人
私達からすると最後に意見陳述で申し上げてメールで引用させていただいたお母さんからの言葉をもう一度お話しさせていただきます。
「子供が心から愛され、守られて、穏やかに安心して暮らせるっていうことが子供の一番の利益だと思っています」

鈴木宗男議員
ありがとうございます。私は団塊の世代でですね、育ってきました。当時子はかすがいとよく言われました。だから私の親なんかもよく夫婦げんかしたときに、おふくろが言ったことあります。
「お前たちがいるから別れるわけにはいかない」と。
これ、私は今でも頭に残っている大事な親の姿だと思ってるんです。同時に、子供は親を選べませんから、その子供のことをやっぱり一番に考える。このことが私は極めて大事なことだなという感じもいたします。
やっぱり親の果たす役割を、我々も今生きるものとしてしっかり考えながらですね、改めてですね、夫婦だとか、家族とは何かということを今求められている時代でないかと思ったんです。そういった意味では、今日ご出席いただいた参考人の皆さん方は、それぞれの道での専門家でありますから、今後ともご指導をいただきたいなとこのことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
(以下略)

佐々木さやか議長
以上をもちまして、午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。参考人の皆様にお礼を申し上げます。参考人の皆様には長時間にわたりまして貴重なご意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
午後2時に再開することとし、休憩いたします。

いいなと思ったら応援しよう!