お酒のアルコール度数のノリでコーヒーの「カフェイン度数」を計算してみた
昨今はコーヒーやエナジードリンクのカフェイン含有量が話題に上がりがちですが、一体どの商品が「カフェインがキツい」のかを調べてみた結果をこの記事にまとめまてみました。
※結論だけ知りたい方は1と5,6だけお読み下さい^^;
1. そもそも各社はカフェイン量を公開しているのか
缶・ボトル缶・ペットボトル等で販売されている各社のコーヒー(以下では『缶コーヒー等』と書きます)のカフェイン量を調査するわけですが、そもそも各社は各商品に含まれるカフェイン量を公開しているのでしょうか。
実は、カフェイン量の表示は義務付けられていないんですよね。ただし、消費者の関心が高い項目なので表示してほしいなぁ~というお心は発せられています。
そこで、自社のサイト上で缶コーヒー等のカフェイン量を表示している企業とそうでない企業を分類します。
カフェイン量を公開している企業(順不同):
サントリー、アサヒ飲料、キリン、ダイドードリンコ、伊藤園、ポッカサッポロ
カフェイン量を公開していない企業(順不同):
UCC、コカ・コーラ、富永貿易、セブン&アイ、サンガリア
UCCやコカ・コーラは缶コーヒー等を積極的に販売している企業ですので非公開なのは悲しくもありますが、まあ仕方がありません。公開している企業からデータを集めて解析するほかありません。
2. 豆から淹れたコーヒーのカフェイン含有量
カフェインのキツさを考えるにあたって、まずは最も基本となるであろう、ドリップコーヒーのようにコーヒー粉から淹れた場合のカフェイン含有量を調査しました。
UCCや国民生活センターなど色々なところで引用されている日本食品標準成分表2020年版(八訂)を調査……わ、わからん……どこに記載されているんや……というわけで日本食品標準成分表2015年版(七訂)第2章を見てみると「16し好品」の欄に「コーヒー浸出液100gあたり0.06g」と読み取れる記載がありました。これは前述のUCCや国民生活センターなどの引用と同じ値となっており、七訂と八訂で変わっていないことが推測されます。
いっぽう、食品安全委員会のファクトシートではコーヒー浸出液のカフェイン濃度が「60mg/100ml」となっており、上記と異なります(上記は100gあたり、これは100mlあたり)。しかし、このファクトシートでは引用元として日本食品標準成分表2015年版(七訂)が挙げられていることから、「60mg/100ml」は引用ミスであると言えそうです。
上記の調査では結局のところ情報源が1つしかないので学術論文ならちょっと不安が残りますが(あと、その引用元の備考欄に「コーヒー粉10g/熱湯150mL」という表記もあるのですがこれで本当に100gあたりになるかという議論も本当は必要と思いますが)、本件に関して私は一般人ですし、コーヒー浸出液の値はあくまで参考値ですので「これでヨシ!」とします。
というわけで、ひとまずの参考値として「コーヒー浸出液100gあたり60mg」を採用してみることにします。
3. 「カフェインのキツさ」について考える
お酒のキツさは一般的に「アルコール度数」で表現されますので、コーヒーやエナジードリンクのキツさも同じように「カフェイン度数」で比べてみるといいんじゃないかと考えました。
そこで、先ほど求めた「コーヒー浸出液100gあたり60mg」をパーセントに直すと、0.06%となります。
理系にどっぷり浸かっている身ですと0.06%という表記で十分なんですが、一般には「小数点以下の数字はワカラン!」というように直観的な理解を得にくいこともあります。また「タウリン1000mg!」(って1gやん)みたいな広告に見られるように、大きな値がなんかすごそうという感覚を導くようなので、逆に「0.06%なんて値が小さすぎるから影響ナインジャネ?」みたいな妙な誤解を招く可能性もあります。なので、アルコール度数なみの分かりやすい数字に変換した方が良いのではないかと考えました。
というわけで、百分率(全部合わせて100%)から万分率(全部合わせて10000‱)にすればヨクネ? という単純思考で考えることにしました。なので「コーヒー浸出液のカフェイン度数は6‱」ということになります。お酒で言えば、ビールのアルコール度数がだいたい5~6%ですから、ほら、同じくらいの数字!!!!!!!(ビックリマークの数でごまかす
※ちなみにこの「‱」は「パーミリアド」と読むそうです。Windowsなら「きごう」と入力して変換候補を頑張って探したら出て来るヨ!(笑)
4. 各社の缶コーヒー等のカフェイン成分表示から「カフェインのキツさ」を分析する
さて、いよいよ解析していきましょう。しかし、ここでまた一つ問題が発生。缶コーヒー等は、実は「内容量がg単位のものとmL単位のものがある」のです。しかし、カフェイン成分表示はどの社も「〇〇あたり△△mg」なので、カフェインのキツさを計算する際には「〇〇あたり」の単位がgならそのまま計算できますが、mLなら密度を考慮に入れる必要があります。
そこでカフェインの密度を調べると、1.23g/cm3のようです。cm3(立法センチメートル)はmL(ミリリットル)に等しいので、要は1.23g/mLです。なので「〇〇mLあたり△△g」となっている場合は、「△△」を「■■=△△÷1.23」とすれば、「〇〇mLあたり■■mL」となり単位が揃います。
と、ここまでやって漸く重篤な問題に気づきました。
これは私が「化学」と縁遠いことに起因した失態ではありますが、そもそも「〇〇gあたり△△g」(質量分率)と「〇〇mLあたり■■mL」(体積濃度)とは純粋な濃度比較はできないのです。。。
例えば、100gあたり60mgなら濃度(質量分率)は0.06%(6.0‱)ですが、純粋に100gが「水99.04gとカフェイン0.06g」で出来ていると仮定すると、これをmLに直すと「水99.04mLとカフェイン0.04878mL)」になります。なので、ここから「100mLあたり0.04923mL」という結果が得られるため、有効数字を二桁にした濃度(体積濃度)は0.049%(4.9‱)となります。このように、質量分率(6.0‱)と体積濃度(4.9‱)は別の数値となってしまい、単純な比較ができないのです。
従って、全ての商品について、「〇〇gあたり△△g」・「〇〇mLあたり
△△g」・「〇〇mLあたり■■mL」のどれかに統一しなければなりません。カフェインそのものの量である「△△g」と「■■mL」は密度がはっきり分かってますから互いに換算できますが、ここで問題になるのは内容量そのもの、つまり「〇〇」の方の変換です。こちらは一筋縄ではいきません。水ならmLとgを等価交換してよいですが、コーヒーってブラックコーヒーもあればミルクと砂糖がたっぷりなカフェオレもある訳で、濃度なんてどう知ればいいのかと途方に暮れてしまいました。
そこで再度ネットの海にダイブしてみたところ、飲料メーカーの担当者の回答付き記事を見つけました。曰く・・・
5. というわけで・・・
以上のことから、各商品の「カフェイン度数」は計算できるものの、同じ単位系で書かれた商品同士でないとその「カフェイン度数」を単純比較できないという結論となりました。つまり、私の力では、統一された「カフェイン度数」なるものを計算することができないことが判明しました。以下は敗者の弁です↓
6. データ公開
そうはいっても、今回の調査のために集計したデータは誰かのお役には立ちそうです(少なくとも私の役には立っています)。なので、カフェイン含有量を公開している各メーカーのデータを集めたスプレッドシートを公開しておきます。ブラウザからそのまま見ることはできますし、必要であれば適宜ダウンロードしてご利用ください。
※上記ファイルは、各メーカーがウェブサイトにて一般公開しているデータを集めたものですが、誤りを含む可能性がありますので、正確な情報を知りたい場合は各メーカーから直接情報を集めて下さい。また、本データを利用したことに起因して発生した責任及び損害(第三者の権利の侵害も含む)の全ての責任は利用者が負うものとします。
このカフェインを巡る自由研究課題は、2023年4月に行いました。
以上
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