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「ピーター・シスの闇と夢」展へ翻訳家の田中亜希子さんと行ってきました。

練馬区立美術館で2021年9月23日から11月14日まで開催中の「ピーター・シスの闇と夢」。『ぼくはアイスクリーム博士』を翻訳されているたなかあきこ(田中亜希子)さんと、内覧会へ行ってきました!

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▲建物外のガラス面。自由の象徴として
シスが好んで描いているくじらがお出迎え。

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▲訳書の『ぼくはアイスクリーム博士』といっしょに記念にパチリ。

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▲入場口は、自伝的作品『かべ 鉄のカーテンのむこうに育って』
の挿絵をもとにデザインされていました。

 会場に入ると、『かべ』と、生まれ育ったプラハを舞台にした『三つの金の鍵』の原画がずらりと展示されています。
 シスといえば、吸い込まれそうな青や、澄んだ青、闇に溶け込むような青…と落ち着いた青色のイメージが強かったのですが、『かべ』は赤と黒の世界。原画の赤色は、目を奪われるほどの鮮やかさでした。原画によっては、意外なほど明るいカラフルな水彩で、緻密に描かれています。

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▲『三つの金の鍵』の一場面より

 1947年、チェコスロヴァキアで生まれたシスは、共産主義体制が強まるなか、首都プラハで育ちました。人々は自由を奪われ、国外へ出ることも禁じられていました。自由に描き、表現することを、幼いころから制限されていたシスは、ロックやポップカルチャーにのめりこみ、アニメーション制作にも取り組んでいました。会場では貴重なアニメ作品もいくつか見られます。

 アニメ作品は国内外で高く評価され、1982年、33歳のときにアニメーターとしてアメリカに招待されます。ロサンゼルスで2年後に開かれる夏季オリンピックの映画制作のために呼ばれたうちの一人でした。そして、これを機に亡命するのです。

 生活のために仕事を探していた折、作品が絵本作家のモーリス・センダックの目にとまり、彼のすすめでニューヨークに移って雑誌の挿絵で才能を発揮し始めます。とても手間のかかる点描の手法を自分に課し、それが個性となって認められ、やがて自分の絵本をつくるまでになります。

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▲マンハッタンをクジラに見立ててデザインしたポスター。
地下鉄の利用者に好評を博し、2年間飾られたそうです。

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▲有名な映画『アマデウス』のポスターも手がけていました!

 1989年、40歳になったシスはアメリカ市民権を得ます。11月9日、ベルリンの壁が崩壊し、鉄のカーテンが消えます。故郷に戻り、7年ぶりにプラハで家族と再会できたのです。
 『星の使者 ガリレオ=ガリレイ』などの重厚で哲学的な作品を発表してたシスは、娘や息子が誕生してからは、彼らをモデルにしたマドレンカシリーズやマットくんシリーズなど、子どもたちが楽しめる絵本を開拓していきます。

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▲マドレンカの小さな試作本たち。

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▲スケッチ帳。日記や構想メモなどもたくさん展示されています。

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▲撮影許可の腕章をもらって、気になる原画を撮影中の田中さん。

 たくさんの色にあふれた明るく自由な世界に生きる子どもたち。そうした絵本の系譜に、『ぼくはアイスクリーム博士』もつながっているのでしょう。残念ながらその原画は今回来日していませんが(会場での書籍販売のみとなっています)、「好きなものに囲まれた子ども部屋とか、歴史を絵で見せる手法などは、ほかの作品とも共通したものがあるんですね! 最後のほうに展示されていた、金色で囲まれた挿絵も、とっても素敵~~~」と田中さん。

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▲アイスクリームの歴史をこんなふうに表現。
『ぼくはアイスクリーム博士』より。

 いつまでも眺めていたくなるような、細部を発見する楽しみに満ちた原画の数々。この秋、みなさんもぜひおでかけください。

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