「音楽の時間」と「ピアノとサシの時間」それぞれ相反する“原点の感情”があって...
今日は『88鍵一本勝負』と銘打たれた(自分で銘打ったのですが)僕の正真正銘ピアノ一本のワンマンライブの大阪公演の日です。
この『88鍵一本勝負』という冠に関して、カッコいいのか、イケてるのか、澄ましてるのか、なんか狙いすぎ感なのか、ダサいのか…どう捉えられてもそんなことは然して問題ではなく、子どもの頃の自分の憧れを具現化しただけのことであります。
今日は言ってしまえば「ライブ」なわけですがタイトルに「勝負」とありまして、確かにステージでグランドピアノとサシで向き合ってシングルマッチを行う様相ですから、文字通り勝負なんだろうと思います。
で、それがピアノの原点でもあります。
「原点」という話で言うと、今年に入ってから音楽(とは)の原点の話を方々でさせてもらっています。
▼参考までに
自分の音楽の原点とかそういう話ではなくて「音楽」という概念、存在はそもそもそういうもので、お客さんだ演者だ推しだなんだとかそんな必要以上に立場で括るなよ。そんなんどうでもいいじゃない。分け隔てなくみんな皆んな同じ人と人としてシンプルに楽しみゃいいじゃない…と本当に本当に本当に心の底から思った1月がありました。https://twitter.com/nishimura_piano/status/1742754706097873183
そんな経緯から一応「音楽」というものをやらせてもらってる身として、一緒にお酒でも飲みながら(コーヒーでもジュースでも可)、人と人の空間として自分に纏わる時間はものすごくライトなものでありたいと本気で思い、今年に入ってから自分なりにそういう空間を作り続けてきました。
(そしてこれからも控えております)
音楽室で母校のピアノで演奏を重ねたことで回帰した“音楽の時間”の原点であります。
ただ…
人前でサシでピアノと向き合うという時間の原点は…そんな温かくも生ぬるくもない地獄の時間であります。
小学校一年生の頃のピアノの発表会。
初めて人前で演奏した日であります。
それ以来何度も何度も発表会に出ましたが、楽しかった記憶など一ミリもございません。
毎回が地獄であり何週間も何ヶ月も前から先生に追い込まれ自分にも追い込まれ、なんとかいけるようになったと思って本番を迎えても、知らないお姉さんの実に無機質な場内アナウンス(当事者としての子どもの素直な感想です!)によって刻一刻と自分のプログラムナンバーが近付くにつれて、逃げたくて帰りたくてしょうがなくなるわけで。
一番最悪なのは次が自分の番という時の舞台袖。
真っ暗に近い中から、グランドピアノがポツンと置かれて煌々と照らされた舞台に一人で歩いていくわけですが、その直前に真横で自分の名前が読み上げられる時がもうメンタルバグのマックスなわけで。
まあそれでも出ていかないことにはしょうがないのでテクテク歩いていくわけですが、逆光であんまりよく顔とか見えないけどもあきらかに人がわさわさ居ることは認識できるわけです。
「自分の演奏を見てもらえる聴いてもらえる」
「客席で聴いてくれてる人たちにいい演奏を届ける」
「一生懸命練習してきたから是非聴いてください」
そんな綺麗な感情など皆無です。
地獄のような時間に追い討ちをかける有象無象にしか見えないのです。
(当事者としての当時の子どもの感想です!!)
あれからいろいろ経験させてもらったので、心のひだに筋肉があちこちについたこともあってさすがに今はそんな地獄だ有象無象だみたいな酷い感情にはなりませんが。
ただ…グランドピアノと一対一で向き合うっていう時間が流れる時に、結局のところステージの向こう側の事は意識の範疇から完全に外れて、ただただ二人きりの時間に没入するっていう部分は残ったようです。
ピアノという存在を一つのツールとして捉えてお客さんと楽しむ…みたいな事ではなく、ただただピアノと一対一で、時に戯れ時にぶつかり時になんかお互いどうでもよくなったり…そんな時間を勝手に眺めておいてください的な。
これはスタンスとかじゃなくてもう血です。
原点が原点なので。
直前に控えて、あの日の音楽室で改めて得た音楽の部分を大切にし続けたい自分と、有象無象に圧をかけられる中ステージでピアノと一対一っていうあの時間を変に思い返す自分と。
今日は多分、その2つの相反関係にありそうな原点がぐっちゃぐちゃになる日なんだと思います。わかりませんけど。
ちなみに明日の東京はね、お子さんがとっても多いから多分ずっと前者の原点モード。
まあ全部ひっくるめてとっても素直な音が出ると思いますから、僕も楽しみであります。
って話でした。
後ほどの人は後ほど。
行く予定にない人はなんか夕方くらいにふわっと「今ごろピアノ弾いてんだね〜」と多少思い浮かべてもらえると幸せです。
以上です。
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