「人は教える間、学んでいる」とはその通りで。
当方、一応ミュージシャン(主にPianoをPlay)という肩書きのもと日々を奔走していますんでたまにはちょっと専門的な話を。
そのきっかけをくれたのがお馴染みマシュマロに来てたこんな質問。
「グリッサンド」ですね。
数ある奏法の中のひとつであり、ある意味ではピアノの一番の花形かもしれません。
本質に入る前にまず「グリッサンド」について軽く説明しますね。
名前を聞いてピンと来ない人でも絶対に知っている奏法だと思います。
まず最初に分かりやすく雑な説明の仕方をすると、特定の音符を弾くとかメロディを奏でるとかではなく、鍵盤を上から下(もしくは下から上)に何本指かで一気に「ピューン!」って滑らせるアレです。
「グリッサンド」ってのはイタリア語で綴りとしてはglissando.
楽譜には略してgliss.とか表記されてます。
(こんな感じ)
(下からの場合はこんな感じ)
ちなみに語源はフランス語で滑るという意味の「glisser」から。
フランス語のglisserから派生してイタリアでglissandoという単語として定着したという二個を股にかけた感じです。
まさに鍵盤上を指が滑っていくような奏法なので見事なネーミングかと思います。
さて…
この部分。
まず「ピアノを弾かれる方にとって」の部分は「僕にとって」という言い方に変えさせていただきます。
おそらくその辺りの解釈はピアノ弾きそれぞれにとって千差万別だと思いますし、クラシックなのかジャポップスなのかによっても大きく変わってくると思うので。
それを踏まえたうえで「位置づけ」ということを改めて聞かれたらとっても難しいですねというのが本音でして。
僕が演奏しているライブを観てくれたことがある人なら記憶にあるかと思うんですが、僕もグリッサンドはすごく好きでことあるごとに使うんですよ。
で、なんで位置づけが難しいかって言ったら、まず曲によって役割が変わる。
もっと言うと曲によってもその日の会場の雰囲気や一緒に音を出してる人たちとの熱量でも変わる(僕はね)。
同じ曲の同じ場所でもやる時とやらない時があるくらいです。
ただ、それだけだとちょっと雑なので強いて役割的なことを話すと…
下から「グワー!」っといく感じのグリッサンドは、煽り成分が強いかと思います。
一概には言えないんですが、低音から指の甲(そんな言い方あるのかな)でおもいっきり滑らせていった先の高音部を「カーン!」と弾くことが多いんで、その助走というような位置づけになる場合が多いです。
逆に高音から「ピューン」と滑り落ちてくるのは着地に向けてのジャンプという印象でしょうか。
例えを出してみると、体操選手の鉄棒を想像したら分かりやすいかもしれません。
鉄棒に終始捕まりながらクルクルしてる時がメロディなり伴奏なりを奏でてる時間だとして、最後に着地する前に大手を離してがっつり浮く時間があるじゃないですか。
鉄棒でいったらあのひと時が高音から滑ってくるグリッサンドの位置付けかもしれません。
(なんとなく伝わりました?)
最低限、定義できそうな位置付けってこのレベルが限界かもしれません。
あとは本当に人によって解釈だったりこだわりだったりがあるんじゃないですかね(グリッサンド談義とかしてみたいもんですよ)。
それはグリッサンドを入れるタイミングとかの違いもあれば、「どの指でどうやって滑らせてるか」の違いもあるんで面白いですよ。
ちなみに20曲くらい演奏する公演の時とかはいちいち数えてられない量のグリッサンドをしていると思うんですが、学生時代(修行時代)なんかは毎日のように指の皮があちこちめくれてボロボロになってました。
(シャワーの時とか手を洗う時に死ぬやつです)
でも不思議なものでいつからかどれだけやってもまったく無傷になったんですよね。
人間ってすごいですね。
この「グリッサンド」ってピアノに限らずいろんな楽器に用いられる奏法で、楽器が変わればまた役割や特性、それこそ位置付けも変わるんで、なかなかに奥が深いです。
そんなわけでグリッサンドについての質問にお答えしつつ、グリッサンドのことを少しだけ解説してみました。
今日のこの記事を書いて思ったのは、質問をいただいてこうやって改めて自分の中で掘り下げて答えることで僕としても頭の体操になったというか。
こんなに改まってグリッサンドについて深く考える機会ってあんまりないので。
どこぞの国の諺。
Dum docent discunt.(人は教える間、学んでいる)
そんなような時間になりました。
素敵な質問ありがとうございました。
余談ですが、僕がグリッサンドを入れる時っていうのは理由はたったひとつしかなくて「鍵盤がやれって言うから」の一点です。
以上です。
ではまた。
[P.S.]
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