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知識が五感をブーストさせてくれる現象 ~主に僕は仕事柄“聴覚”ですが~

話を見えやすくするためにいきなり例えを用いるところから始めてみます。
専門性が高い小難しい話を書くには、まず汎用性の高い例えを出すのが一番です。


©︎著作権誰にあるんですかこれ


子どもの頃に誰しも目にした事があると思われる「妻と義母の騙し絵」ってやつですが、パッと見は奥を向いている若い女性に見えるけども、視点を変えるとおばあさんの横顔に見えるっていうやつです(順不同)。

子どもの頃、初めて見た時に僕は奥を向いている若い女性の絵にしか見えなくて「おばあさん」の存在がしばらく分からなかったのですが、その二面性に気付いた時に「うお!」となった記憶がありますし、きっとその経験をした方は多いかと思います。

もうひとつ懐かしいところで言うとこれ。


©︎どこに著作あるんでしょう

『ルビンの壺』ってタイトルがついてるらしいですが、これも向かい合ってる2人の顔(シルエット)にも見えれば、白い壺にも見えるっていうやつ。

これら両方とも、片方しか知らなかったら一生若い婦人の絵だし、一生壺の絵で終わってしまうのですが、“視点を変えたら違う絵に見える”っていう知識を得る事で、もうひとつの絵が見えてきます。

で、一度その知識を得たらば、条件反射的に2つの描写が同時に見えるようになっていると思います。

この時点で「知識によって視覚能力がブーストされた」という捉え方ができなくもないです。

例えば”間違い探し”なんかもそうで、何十分かけても全然見つけられない相違点も、一度見つけてしまったら「なんでこれがずっと見えてなかったんだ」と不思議なくらいに、その相違点が目につくようになりますわね。

余談ですがサイゼリヤのメニュー表の間違い探しは本当に難しいので、今度サイゼリヤに行く予定のある方は是非チャレンジしてみてください。
7~8個くらいまではすんなりいきますが、残りの1~2個が本当に難しいです。
(余談終わり)

というわけで五感というものは、それそのものの能力とは別に「知識」というものにかなり左右される存在だと思うわけなのです。

仕事柄「耳コピ」というものを本当によくします。

耳コピーの略なのですが(ーだけ略されてる稀有な存在)、曲中で演奏されている音を楽譜無しで耳で聴き取るという作業です。

ポップスの現場なんかはこの耳コピ能力は必須も必須で、例えば誰かのバックバンドなんかに入る時に先方からは演奏予定の曲の音源と共に簡単なコード譜が送られてきます(時にコード譜すらないって時もありますが)。

そこにはあくまでコード進行しか書いてなくて、細かいフレーズやその箇所、その箇所で自分のパートがどんな演奏をしているのかっていうのは、耳で聴き取る作業が必要になってきます。

演奏じゃなくアレンジの仕事の場合になると、全てのパートをある程度聴き取れる能力も必要になってきます。

例えば「この原曲をある程度踏襲した形でリアレンジをお願いします(デモ音源を作成するもセット)」という仕事を請け負った場合、まずは原曲のドラムやらベースやらギターやら鍵盤やら、時には弦楽器やら管楽器やら、あらゆる音が一斉になっている中、ひとつひとつの音、フレーズを全て聴き取る必要があります。

その際に、今よりもまだまだ全然若輩者だった頃はやっぱり全然聴こえない音っていうのはたくさんあって。

いや、物理的に何かしら鳴ってるのは聴こえるものの、一斉にドカンと鳴ってる時にそれぞれの楽器がどんな動きをしているとか、どんなドレミを鳴らしているかまでは全然聴こえないわけで。

その時点で人としての聴覚の能力は十分に発揮しているわけなのですが、そこからもう一歩踏み込もうと思ったら「知識」の出番です。

こういう音楽においてこの楽器は主にどういうポジションを担うものなのかっていう役割を学んだり、各楽器の特性(音域とか定番のフレージングとかリズムパターンとか)みたいなものをいろんな音楽を聴いていく中で注視していくと、おのずとそれらの楽器に対する知見が溜まって、その状態で改めて同じ曲を聴いてみたら、本当に驚くほどスッキリ各楽器が分離して聴こえます。

まさに前述の騙し絵だったり間違い探しみたいな、あの別視点が見えた瞬間にそれまでと景色が一変するくらいの感覚で、各楽器の音が鮮明に。

お恥ずかしながら、僕はついこの前までオーケストラってやつにそこまで造詣が深くなくて(そもそも自分の活動において必要に駆られる事もなかったので)、さすがに目立ったフレーズは聴き取れますが、10数パートそれぞれを分離して聴き取るなんて全然意味わからない世界線だったのです。

が、昨年初めてオーケストラの方々と共演した際に全体で共有資料として配られた全パートが載っているフルスコアを眺めながら、曲と照らし合わせて何度も聴き返してみたり、その時ご一緒した楽団員の方に「この楽器はこういう時にどういう役割を担うんだ?」とか、なんかいろいろ細かく質問したりして自分なりにいろいろ勉強した結果、それまでぶっちゃけ塊でしか聴こえてなかったものが、聖徳太子みたいな状態で聴こえるようになった事実があり。

知識にどん欲になってみると、頭が良くなるというよりも人間の本分と言っていい五感が恐ろしく発達するという話であります。

業界で「耳が良い」と称される人は、世間一般で言う小さい音も聴こえるみたいな意味合いじゃなくて、あらゆる音を同時に聴き取れる人だったり、ひとつひとつの楽器や音質の特性を一聴して掴む人に用いられます。

だから例えばモスキート音とかの聴覚検査が全然駄目で仮に80歳レベルとかだとしても、楽曲の中で鳴ってる楽器をそれぞれしっかり聴き取れる人は「あの人めちゃくちゃ耳が良い」と言われるみたいな話。

そういう人は”物理的には”間違いなく耳が悪いわけですから、やはりそれは知識・知見の賜物での聴覚能力なわけで。


結局何が書きたかったかって…

いくつになってもお勉強めっちゃ大事。



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(Top picture photo by マタヒラタカマサ)

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西村広文 HirofumiNishimura
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