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「歌唱力は変わらないけど声が変わる」くらいの違いの話

先の演奏の場(先月28日)で世界三大ピアノ(ブランド)と呼ばれているうちのひとつ、『ベーゼンドルファー』を弾く機会がありました。

ちなみに残りの二つは『スタインウェイ』と『ベヒシュタイン』と呼ばれるブランドなんですが、個人的には『ヤマハ』も加えて四天王と括っていただきたいところです。

聴く専の方におかれましてはそんな事は知らなくても何ら問題のない話ですが、でも各ブランドの音の個性の微妙な違い云々を知ってれば、例えば「今日の会場のピアノはベヒシュタインです」みたいなアナウンスがあった際に事前の楽しみ具合の視野が拡がる部分はあるので、得はそれなりにあるのかもしれません。別に知らなくても損も全くありませんが。


さておき。

僕は今までのキャリアの中で、ステージでお相手をさせてもらってきたピアノブランドは、ものすごくざっくりの肌統計ですがヤマハが7割くらいでスタインウェイが3割くらいのイメージです。

スタジオを入れてしまうと圧倒的にヤマハですが、あくまでステージということを考えた場合。

で、『ベーゼンドルファー』や『ベヒシュタイン』や、その他で言うと『カワイ(YOSHIKIさんでお馴染み)』や『ディアパソン(TENKUにあるやつ)』あたりのブランドをステージで弾いてきた率は、合算してもその中にひっそりと織り混ざっている端数の0.1割程度に留まります。

これは僕が偏っているわけではなく、日本ではそれくらいライブハウス(バー)、コンサートホールにおける『ヤマハ』と『スタインウェイ』のシェア率が圧倒的だという話でございます。

『ヤマハ』や『スタインウェイ』だったら、過去の経験上さすがに弾かずともざっくりと「こんな趣向の音」というのは分かります。
(※とは言え大きさの違いや環境諸々で全然個性が変わるから全く一筋縄ではいきませんが)

対して『ベヒシュタイン』は本当に演奏ブランクがありすぎて、あんまり指や頭に「こんな感じよね」と鮮明に残ってなかったので、どんな音がなるのかなっていう純粋なワクワクを抱えながら演奏に臨んだわけで。

なので、先日のライブの際に会場にあるピアノが『ベーゼンドルファー』であると伺った時は、お客さんに演奏を届けるっていう面と別の稀有な機会という側面でとてもとても楽しみでした。

で、演奏を進めていくにつれなんとなく「はいはいなるほど」とか「へ〜」とか「こここれくらいで叩いてみたらどんな感じで泣くの?」とか、なんかずっとそんなことを考えながら…というより勝手にそういう意識がガンガン流れながらライブが進んでいったわけです。
(※ピアノ独奏の場合はついついその二人の世界に陥りがち)

具体的に何がどうみたいな自己解説はしませんが、その時間の中で『Dear…』という曲と『Gift』という2曲を弾いてみた時の質感がとってもよかったのです。相性というか。

あの日のベーゼンに僕のオリジナル曲がハマったのか、ベーゼンドルファーというブランドと僕の曲の相性がそもそもいいのかは全然分かりませんが、なんせ他のどの曲たちよりもオリジナル曲とのマッチングがグッとよかった(生音だから純粋無垢で)。

なので、その日に弾くつもりがなかった別のオリジナル曲を急遽その場で弾いてみることにしました。
(まだ発表してないだけでちょこちょこ曲はあるのです)

ライブを進行しながらの本当に思いつきで、次いつこうやって『ベーゼンドルファー』を相手にする機会があるかわからないと思ったので。

結果、これまたやっぱり良かった。
どうやら僕の曲(しっとりサイド)とベーゼンドルファーのまぐわいの相性は実に良いらしい。
※少なくともあの日のベーゼンに関しては


同じ曲で同じ人が演奏しててこうも違うかと改めて思ったわけですが、それはグランドピアノあるあると言えばあるあるなので、今さらになって改めて特筆するほど目から鱗みたいな話でもありません。

ですが、やっぱり今までの『ヤマハ』と『スタインウェイ』が圧倒的シェアを誇ってきた中で、ふとやってきた『ベーゼンドルファー』から出てくる全然違う声を聴いて、改めて思ったのが今日の記事タイトルであります。

もはや同じ曲を別の歌い手さんがカバーするくらいの違いがそこにはあって、なんだったら性別すら変わってるすらあります。

変な話、同じ曲でそれぞれのブランドで録音して全部聴き比べしたいくらい(だから歌い手のカバーと理屈は一緒)。

さすがに制作時間と予算のことを考えたらそんなことはしてられないのですが、いやでも今のうちから録音に取り掛かれば普通にいけるんじゃないかとか思う今日この頃。
(※ちょっとさすがに考慮しますが)


ただですね…

『スタインウェイ』だとか『ベーゼンドルファー』という同じ名前がついていようが、10歳くらいの男の子みたいな音もあれば、70歳くらいのおじいちゃんみたいな音もあれば、20〜30台くらいのいい感じの女性みたいな音もあるのがグランドピアノという生き物。

そして年齢と性別区分だけじゃなく身長だったりガタイの違いもあるし、生まれ育ちの環境もある。

大事に扱われてきてる子と、けっこう雑に扱われてきてる子ではやっぱり声が全然違うし、一度触れてみて「うわ…なかなかやさぐれてるね」と思っても、ライブの中で仲良くなっていく(心を開いてくれる)こともある。
※こちらが2人きりで没頭してあげることが大前提


普段滅多に絡まない人種と絡んでみて、まだまだ知らない人がたくさん居るなぁ〜としみじみ思ったような日です。

あと、その時に感じたピアノの鳴りに合わせて曲を臨機応変にマッチングしていくっていう楽しさや旨味を知った日でもあります。

っていうお話でした。



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西村広文 HirofumiNishimura
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