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正味30分でバンド力を目に見えてアップさせるために
昨日の高校生軽音部セミナーに講師としてお呼びいただいた際に、「バンド練習の仕方をご教示してバンド力をアップしてやってください。40分で。」というテーマを授かりました。
状況としてはそこそこ広いホールにいろんな高校から軽音部の子たちが集まっている中で、素材となる代表バンドの子たちにステージに上がってもらってその子たちに対してマイクを使ってアレコレ講義するといった感じで、当然客席側にはその模様を見て何かを学ぼうとする他校の軽音部の子たちという図式(引率の先生含めて100人くらいは居たかな)。
昨日の記事でも多少書かせてもらったんですが個人的にはその40分の中で一定数の成果を上げた自負があるので(バンド力がグッと上がった)、今日は具体的にどんなことをやってみたのかっていうのを書いてみたいと思います。
僕よりも素晴らしい知見をお持ちの(または全然違う角度の観点をお持ちの)バンドというものをすっかり熟知している同業者の方はもしこの記事を目にされたとしても生暖かく読み過ごしてやってください。
かなりピンポイントな事象にフォーカスしているので楽しんで読んでもらえるかはまったく分かりませんが、もし「なんか趣味でバンドでもやってみる?」とか「ママさんバンドとか組んでみる?」みたいな人が居たらぜひ参考にしてみてください。
というわけで軽音部に入部してまだ半年の子たちのバンド力を40分でいかにアップさせるか。
今一生懸命練習している曲があるということで、40分の使い方としての僕の最初の青写真は最初と最後に一回ずつ演奏してもらうというのは決めました。
まず一番最初に現状を披露してもらって、そこからアレコレ教示して最後にもう一回合わせた時に多少なりとも「カッコよさ」みたいなものがアップしてれば(それが本人たちにもギャラリーに伝われば)自分の中では勝ちだという気概を課してみました。
例えばこれが継続的な時間という前提だったら、また来週なのかまた来月なのか分かりませんが「じゃあ今日言わせてもらったことを意識してスタジオ練習してみてね」と一度授けてビフォーアフターの差異を広げてもらうための猶予みたいなものがあるんですが、なんせ40分以内にビフォーアフターをハッキリさせないといけないのでなかなかの事であります。
実際はその場で多少なりとも伸ばすとかではなくて「こういう練習をしたらいいよ」とか「こういうことを意識したらいいよ」という講義に終始しても何らオファー内容としては問題なかったんですが、どうせなら「え、たったそれだけのことでこんなに変わるの?」っていうのを目に見えて高校生たちに持って帰ってもらいたかったので、勝手にチャレンジしてみたという感じです。
というわけでまず一度曲をやってもらったわけですが、ここでしっかり柔軟性を持っておきたかったのは個人のスキルに関してはフル無視という部分。
家で一人でクリックに合わせたり音源に合わせたりしながら練習することで事足りる個人スキルに言及している暇なんてないのと、そもそも数十分でそんな6パート(6人編成でした)の各々の演奏面に対して話をし出したらもうそれだけで時間が過ぎちゃうので。
いくらフレーズが弾けてなかろうがリズムが悪かろうがそこはもうどうでもよくて、それよりも「せっかく家じゃなくてスタジオでみんなで集まってる時間なんだから」って部分の尊さを知ってほしくて、それはただ音が合体するという部分ではなくて目の前にメンバーの演奏姿や顔があるっていう尊さ。
そこで「とりあえず一度全員ドラムの子に体全部向けてやりましょう」という提案をしてみたりする(ドラムの子を中心に180°の弧を描く立ち位置のイメージです)。
時間がないのでサビだけとかで合わせてもらうわけですが、まあそれだけではさすがに意図が汲めない(もしくは演奏に余裕がない)のは当然で、身体の角度が変わっただけで弾き様は一切変わらない。
ので当然演奏の躍動感やグルーヴみたいなものも変わらない。
そこでちょっと大胆な提案をしてみます。
どれだけ間違ってもどれだけグダグダでもいいから一度メンバーの顔だけ見ながら演奏してみてと言ってみます。
極力手元を見るのは禁止でとにかく輪になって各々メンバーの顔だけ見つめ続けながらやってみよってなことで。
それぞれの人となりや普段の仲の良さみたいな関係値はまったく知りませんのでただの推測ではありますが、言っても高校一年生の子たち。
思春期真っ只中ですし男女混合グループでもありましたし、人によってはなかなかキツかったかもしれませんしめちゃくちゃ恥ずかしかったか子もいたかもしれません。
実際最初はやっぱり戸惑いながらだったりどうしても演奏が気になってすぐ手元に目がいったり、輪になって向き合ってるもののみんな終始真顔でという感じだったわけですが…
ふとした時にリズムがそこそこバチっとハマった時に誰かと誰かがどちらからともなくニヤッとするっていう場面が少しずつ現れ始めて、気付けばいろんな子たちの笑顔のマッチングが生じ始める。
で「勝った」と思った瞬間は、ちょっと演奏がグダッとなってリズムがえらくズレたりした時にめちゃくちゃ楽しそうな顔でみんなが笑い合ってた部分。
ほんの数分前まではただ身体の向きを変えてただけみたいな子たちが、少しずつ少しずつそれぞれの殻を破って、一緒に音を出しているもの同士顔と顔を見合って笑い合って、そのうち誰からともなく首とか動かし始めてまた笑って…という時間が最後には生まれました。
顔だけ見ながら演奏してみなっていう時間に突入した冒頭は「ちょっと酷なことをさせてるのかなぁ」と自分でやらせといて心配になる空気で(やっぱり多感な時期ですし)、多数の高校生ならびに引率の先生が集まってる場で、変にパワハラ認定されてもしんどいなとかもよぎったんですが「バンドが一番気持ち良い瞬間」というのはそこに詰まっていることを知っている身として、どうにかその瞬間を一度でも味わって欲しかったので演奏が尻すぼみに途絶えそうになっても指をぐるぐるまわして("繰り返せ"の意)、ブレずに続けさせてみた結果、おそらくあの子たちが今まで楽器を演奏してきて一度もしたことない表情が出たと思います。
最初に曲を演奏してもらった時の佇まいを考えるとそれは間違いないと思います。
結果、バンドとしてリズムとか演奏諸々は最初に通してもらった時よりはかなりグダグダでした。笑
(これはその場でもハッキリ言いましたしみんな笑顔で「ですよね!」って感じのリアクション)
「でも実際こっちのほうが演奏してて楽しかったよね?」と問うてみると食い気味でイエスのリアクションが各々から来たのと、客席側で見てた子たちのリアクションも概ね同意な感じ(忖度という大人な行動を発揮してなければ)。
みたいなことをしているとあっという間に時間がきてじゃあ最後にもう一回通しましょうかとなったら、もう雲泥の差でめちゃくちゃ良い演奏になっていたわけで。
結局バンド(グループ)の良さってそこに尽きるというのは揺るぎなくなあって、そいつら同士がただただ楽しそうにやってるのを見てお客さんはアガるっていうのは僕の価値観としてずっとブレずに持っておきたいところで、そこで生まれる会場の一体感みたいなものを味わってほしかった部分もあります。
最後の通しの一回の時はギャラリー側の高校生の子たちもみんな手拍子とかしたりなんかして、本当「ライブ」って空気になってたから演奏しててきっと楽しかったんじゃないかな。
「バンド練習」という元来の点とはもしかしたらちょっとズレているかもしれませんが(そうなるともっとアカデミックな話になってくるので)、とりあえずまず「こいつらと音出してたら楽しいわ〜」という気持ちがないことにはアカデミックなことをどれだけ言ってもぬかに釘、スポンジに粉末でしかないのでこれで良かったかなと。
なんせそんな感じの時間でした。
これからバンドでもやろうかと思ってる方は少しばかり参考にしてみてください。
では。
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