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「探究する組織の心臓」:MIMIGURI知識創造室が支える個々の成長と学びのプロセス

座敷童子です。2022年に新卒でMIMIGURIにリサーチャーとして入社し、研究開発本部での経験を経て、現在は知識創造室で活動しています。

自分が所属している「知識創造室」は、社内のナレッジマネジメントを担当し、個人やチームの探究活動を支援するチームです。MIMIGURI全体を「身体」として捉え、知識を「血液」と考えるならば、知識創造室はその知識を循環させる「心臓」の役割を果たしています。そのため、私たちのチームは時折「MIMIGURIの心臓」と呼ばれることもあります。

このnoteでは、知識創造室の一員として、知識創造室がどのようなミッションのもとで探究支援に取り組み、コンサルタントの学びと成長にどのように貢献しているのかを掘り下げていきます。

MIMIGURIは「探究」の組織

MIMIGURIの知識創造活動に目を向けると、そこには「研究」と「探究」という二つの異なるプロセスが交差しています。どちらも知識を生み出す活動であることは共通していますが、個人的にはMIMIGURIでは「探究」に重点が置かれているように感じています。

研究は、世の中の未解明な問題に挑み、既存の学術知の蓄積にsomething-newを加えていく活動といえそうですが(藤垣、2004)。研究知は一般に学術研究のコミュニティ(学会)の中で、知識を磨き上げていく過程で生成されるものであり、研究者同士(peer)の査読や討論によって知識の厳密性やクオリティが問われるものです。この点MIMIGURIも「研究機関」としてのアイデンティティを持つ以上、やはり学術的知識を創造する責任を背負っていると考えます。学会発表や論文誌への投稿を通じ、研究課題に取り組むことは、我々の重要なミッションの一つです。

一方で、探究はそれとはは少し異なった意味合いを持つと考えています。これは私なりの整理なのですが、探究は「世の中や学術的な新規性」や「クオリティ」を求める知識創造行為ではなく、「その人にとっての新しさ」のある知識を創造していく活動であると考えています。探究の成果は必ずしも学術的・社会的に大きなインパクトを持つ必要はないですが、それよりもむしろ個人にとっての「真正性」の高い問題に対する発見であることが求められます。これは、その人のキャリアや人生における重要な気づきとなる瞬間を生み出すプロセスです。

例えば、若手のコンサルタントがある課題に取り組む中で得られた新たな知見は、より経験豊富な同僚から見れば「当たり前」のことかもしれません。しかし、若手コンサルタントがずっとモヤモヤ抱えてきた問題(真正性の高い問題)があって、実践経験や対話を通じて獲得した知見がモヤモヤの突破口となりうるならば、新規性は抜きにしても、当人にとって価値ある知見です。探究で得られた知識は、自己のアイデンティティやキャリアに大きな影響を与え、新しい視点を得る機会になります。

研究と探究の違いの整理。ただあくまで個人的に発言するときはこんな風に使い分けてますよというだけであって、コンセンサスが取れているものではないことは留意されたい。

モヤモヤした感情を起点に始める探究。

研究といえば新しく、厳密な知識を生み出すことなので「自分には無理だ」と思うかもしれません。しかし探究は決して難しいものではなく、日常の実務の中でつい芽生えてしまうモヤモヤを起点に生み出すものであり、万人に開かれています。

ここではMIMIGURIのコンサルタントを例に説明していきます。コンサルタントは、日々クライアントの解決が難しい課題に直面していきます。その過程で、コンサルタントは「モヤモヤ」とした感覚に直面することは珍しくありません。このモヤモヤは、自分の価値観や考え方が揺さぶられる不安定な瞬間であり、その瞬間は心地よいとは到底いえません。しかし、私はこのモヤモヤこそが個々人の探究の重要な起点になると考えています。

モヤモヤを忙しさなどを理由にそのままにしておくことは楽かもしれません。しかし、そのように放置してしまうと、探究のチャンスを失って学習の機会を損なってしまい勿体ないものではないでしょうか。逆に、このモヤモヤにしっかりと向き合い、内省的思考を深めていくうちに、新たな知識に到達するものと考えています。

私たちの「知識創造室」は、まさにこの探究を支援するために存在しています。メンバーが日々の業務の中で得たモヤモヤに向き合う内省を伴走し、それを「その人にとっての新しさ」のある知識として結晶化するサポートを行っていると捉えています。そのプロセスの中で、「視界が一気に開けたように感じる」瞬間を分かち合えたときは、掛け替えのない喜びです。その上で、知識創造室では組織で個人的なモヤモヤを開きあったり、モヤモヤを起点に探究を進める方法論に関する研究/探究にも取り組んだりしています。

MIMIGURIが今季掲げた「全員探究」のミッション

MIMIGURIが今年掲げた「全員探究」は、組織全体がこの探究のプロセスをルーティンとして取り入れていくことを意味しています。すべての社員が、自分にとっての新しい発見や気づきを得るために、日々の業務を探究の場としています。これは、個人の成長だけでなく、組織全体の知識創造を促進し、結果として社会に提供する価値を高めることにもつながっています。

「全員探究」を体現するために、知識創造室では、社内のナレッジマネジメントシステムの整備から、コンサルタントの探究をサポートする壁打ちまで、多岐にわたる業務を行っています。また得られた知識をアウトプットとして、学会発表(研究と位置づけて行ったものに関しては)、外部イベントでの登壇、CULTIBASEなどの自社メディアで公開するに至るまで幅広く支援することもあります。

今月開催された「Xデザインフォーラム」にて、知識創造室のマネージャーである瀧が、全員探究に向けた知識創造室の活動について発表した資料がありますので、ご興味ある方は覗いてみてください。

知識が生まれてしまう「蓋然性」を高める

知識創造室が推進している「全員探究」は、単に社員一人ひとりに探究テーマを決めさせて、それを管理することではありません。むしろ私たちの役割は、探究が自然に始まり、新しい知識が次々に生まれるような「蓋然性」を高めることにあると私は考えています。

ここでいう蓋然性とは、國領二郎のいう「偶然の出会いが生まれやすい環境をつくること」(國領, 2013)であり、つい探究したくなってしまうテーマが得られ、社員同士が知識を掛け合わせ、相互に学び合うことが偶然起こってしまう環境を整えることです。

この一年間、知識創造室として活動してきた中で、あるメンバーが探究を始めると、自然と他のメンバーがそのプロセスに巻き込まれていくという現象を至るところで見てきました。Wenger(2002)の言う「実践共同体」のように、社内のいたるところでメンバーが誰かの探究に関心を持ち、知識をつくりだす輪に周辺参加していく中で、自分のキャリアを切り拓く新しい発見がそこで芽生えてきた、みたいなことが至るところで起きています。こうした知識創造のコラボレーションが起こる「蓋然性」をどのように高めていくかが、知識創造室自体の探究テーマになりつつあると、密かに感じています。

現在、MIMIGURIは70人規模の会社ですが、これからさらに仲間が増えていく中で、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が、知識を掛け合わせながら共に学び、成長していくことが期待されます。多様な視点が集まることで、個々の探究が新しい広がりを見せ、次々と探究の共同体が形成されていくでしょう。新たなメンバーと出会い、その人たちの経験や視点がどのように組織的な知識創造に影響を与えられていくのかを考えると楽しみです。

個人的に、MIMIGURIの環境を楽しめる人とは、他者の持つ知識や経験に興味を持ち、その知識を掛け合わせることで新たな発見を生み出そうとする人であると考えています。例えば、「あの人の持っている経験知と自分の知識を組み合わせたら、どんな新しい視点が見えてくるだろうか」「この人と対話を重ねることで、もっと豊かな知見が得られるのではないか」と考え、一緒に考えたくなってしまう人は、向いているのではないかと思います。

探究を通じて、個々の「芸風」を育む

知識創造室とは一般にはナレッジマネジメントを司る部門ではありますが、「ナレッジマネジメント」という言葉を聞くと、多くの人が、業務の標準化や全員が同じように仕事を進めるイメージを抱くかもしれません。確かに、ナレッジマネジメントは業務効率を上げたり、情報を共有して全員が同じ基準で作業を行うことを目指す側面があります。しかし、知識創造室が重視するのは、探究と知識創造を通じて「個々の芸風」が育まれていくことだと考えています。

ここでいう「芸風」とは、各個人ならではの独自の視点やアプローチのことです。独自性が育っていくことによって、各コンサルタントが「自分らしさ」を持ってクライアントに貢献できるようになると我々は考えています。あらゆる芸風を持ったコンサルタントやファシリテーターが存在することで、それだけMIMIGURIの「できること」が増えていきます。なので「芸風」は、MIMIGURIの至るところで語られる大切なキーワードです。

探究を通じて自分の「芸風」を磨くことに関心のあるコンサルタントを支援していきたいと考えています。それは、ただ業務を効率化するためではなく、個々の探究によって知識が磨かれていく過程を伴走することで、より自分らしい創造性の発揮方法が見いだされていくと期待されるからです。こうした世界観のあるMIMIGURIのコンサルタント職に興味を持つ方は、ぜひともお待ちしております・・!

合併後唯一の新卒メンバーとして。

最後にとても個人的な考えを述べます。自分はMIMIGURIに新卒で入社しましたが、MIMIGURIは新卒"一括”採用はやっていません(採用担当の竹内さんのツイート参照)。そのため、学生の方から「MIMIGURIにどのように入社されたのですか?」と質問を頂くこともあります。

就職活動をしていた大学院生時代、やはり多くの新卒生がそうであるように「一社目」をどこにするかに意識が向いていました。新卒採用という競争の場で、自分にとって理想的な会社に最初から入らなければならない、というプレッシャーを感じ、人生のすべてがこの一瞬にかかっているかのような感覚に囚われていました。

しかし、MIMIGURIに入ってから出会った先輩方のキャリアを振り返ると、彼らはニ社、三社といった複数の職歴を積み重ねてここに至っていることを知りました。そして複数社での経験の中でのモヤモヤ、葛藤を活かしながら探究することによって個々の豊かな「芸風」を育まれているようでした。

彼らとの出会いで学んだのは、一社目で理想的なキャリアを実現することがすべてではないということです。人生は非常に長いものであり、転職は当たり前の時代です。大事なのはどのような学習や経験を積めば豊かな人生を送れるのかを考え、それを基に「一社目」を選ぶことだと思います。学びや成長を意識し、自分にとっての長期的な価値を生む選択をすることこそ、冒険的キャリアを歩む上で重要ではないでしょうか。

たまたま私にとっての一社目がMIMIGURIでしたが、仮に最初のキャリアが異なっていたとしても、この先辿り着く可能性は大いにあったのではないかと感じています。だからこそ、新卒や第二新卒の方には、焦ることなく長期的なキャリアを見据えてみてほしいと思います。新卒学生が長期的なキャリアを見通すためのワークショップ作りたいなぁ。

もしMIMIGURIのような探究の場に興味を持っている新卒の方も、ぜひ中長期的なキャリアを考える一歩として、カジュアル面談をお待ちしております。

参考文献

  • 藤垣裕子「ジャーナル共同体におけるレビュー誌の役割」『情報の科学と技術』54巻3号、pp.102-108、2004.

  • スカーダマリア マリーン、ベライター カール、大島 純「知識創造実践のための「知識構築共同体」学習環境」『日本教育工学会論文誌』33巻3号、pp.197-208

  • 國領二郎(2013)『ソーシャルな資本主義 つながりの経営戦略』日本経済新聞出版社

  • Wenger, E., McDermott, R. A., & Snyder, W. "Cultivating Communities of Practice: A Guide to Managing Knowledge". Harvard Business School Press, 2002.(邦訳:櫻井祐子(監訳)『コミュニティ・オブ・プラクティス: ナレッジ社会の新たな知識形態の実践』翔泳社、2002).


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