西村 公典

東京都港区にある「にしむら治療院」を営んでいます。正しく身体を読み取ることができれば、…

西村 公典

東京都港区にある「にしむら治療院」を営んでいます。正しく身体を読み取ることができれば、必ず改善へと繋がるをテーマに触診の勉強をずっと続けています。このページでは機能解剖学の小ネタを載せていきます。

最近の記事

肋間筋の筋紡錘を介した反射

肋間筋は胸郭の上部と下部で神経反射において逆に作用することが知られています。まず基本的な反射について簡単に説明します。 筋紡錘について 筋紡錘は骨格筋内に量と密度の違いはあれ、必ず存在しています。筋紡錘内には筋繊維が存在しており、錘内筋という。 その錘内筋には感覚神経終末が存在しており、筋紡錘が伸長された時に活動する。 この活動によって錘外筋の収縮力が変化したりと重要な役割があります。 詳細についてはまた別のページで記載しようと思います。 緊張性振動反射 tonic v

    • 肋間筋の構造

      肋間筋は、肋間隙を充して上下に隣接する肋間同士をつなぎ、また浅層から外肋間筋、内肋間筋、最内肋間筋の三層構造を持つ。 外肋間筋 外肋間筋の後端は肋骨結節付近から始まり、前端は肋軟骨近くに達するが、それより前方は外肋間膜となって胸骨縁に終わる。その筋束は後部では内側頭方から外側尾方に、中部では後頭方から前尾方に、前側部では外側頭方から内側尾方にそれぞれ走る。 内肋間筋 前端は胸骨縁に始まり、後端は肋骨角近くに達するが、それより後方では内肋間膜となって肋骨結節付近に終わる

      • トップアスリートと仙腸関節障害

        我が国における国立スポーツ科学センターにおいて診療が行われた仙腸関節障害を有する選手に対してMRIを撮像し、STIR高輝度変化の有無と症状、有症状期間、種目との関係を検討した報告を紹介します。 下のCT画像は最近来院されたゴルファーの仙腸関節障害です。 参考論文:Magnetic resonance imaging findings related to sacroiliac joint pain in high-performance athletes 高輝度変化を認

        • 仙腸関節の不安定性と靭帯損傷

          仙腸関節痛・骨盤帯痛において靭帯損傷が起こっているという論文をご紹介します。 確かに臨床上でも仙腸関節を取り巻く靭帯の圧痛を評価することで正しく仙腸関節の状態を読み取れているかを確認する行為をよく行います。 参考論文:Sacroiliac Joint Ligaments and Sacroiliac Pain: A Case–Control Study on Micro- and Ultrastructural Findings on Morphologic Alterat

        肋間筋の筋紡錘を介した反射

          左右の仙腸関節の動きの連動

          骨盤に対し、左右非対称に荷重する場合、左右の仙腸関節は連動した動きをする。 荷重側の仙骨は尾側に回転する。これによって荷重側のS1の上縁から反対のS3までの斜めの軸を作ります。 この斜めの軸で、荷重側のS3セグメントで後方に、遊脚側のS1セグメントで前方に回転をする。 この斜め軸上の回転は、体幹の逆回転を促し、荷重側の荷重ストレスを減少させる。 荷重側の寛骨は前傾し、遊脚側の寛骨は後傾する。 <iframe width="480" height="853" src="htt

          左右の仙腸関節の動きの連動

          歩行と仙腸関節

          荷重と仙腸関節 参考文献:Function and patomechanics of the sacroiliac joint; A review Richard Louis Dontigny 仙骨は荷重側が下方に、非荷重側の仙骨が上方に回転する。 そして仙骨の下方移動に対して脊柱は反対側に回転する。 つまりこの右足荷重による仙骨の右下方回転の場合、腰椎は左側屈する。 Dontigny氏の論文をもとに仙骨の側屈に対する仙腸関節の動きを3

          歩行と仙腸関節

          腰椎椎間板ヘルニア摘出術と保存治療の比較

          腰椎椎間板ヘルニアの治療は、経過とともに症状の改善が得られるために保存療法が第一選択となっています。(2023年時点) その保存療法期間の目安は、脱出したヘルニア塊が自然に退縮する可能性がある3ヶ月前後とされています。 比較的、私の方でも来院頻度の高い腰椎椎間板ヘルニアについて、保存療法を推してはいるものの、外科的な処置が優れている点を参考にしていく必要があるため勉強してみる。 長期的なエビデンスは未だないので両者の比較論文を参考にしたい 保存療法の有効性 手術療法の

          腰椎椎間板ヘルニア摘出術と保存治療の比較

          仙腸関節の可動域と歩行時の仙腸関節の機能

          仙腸関節の機能解剖これは、立位での体幹屈曲、伸展時における仙腸関節の動きを予測したクラシカルなモデルであるが、裏付けとなる化学的な基礎データはない。 歩行時の仙腸関節の動き

          仙腸関節の可動域と歩行時の仙腸関節の機能

          骨盤帯疼痛とは

          骨盤帯疼痛は腰痛の特殊な形態であり、腰痛を伴う場合と伴わない場合で分けられます。 疼痛の部位は後腸骨稜と臀部の間、特に仙腸関節近傍に生じる痛みがあり、大腿後面に放散することや恥骨結合の痛みが伴う場合もあるとされています。 参考論文;European guidelines for the diagnosis and treatment of pelvic girdle pain 腰痛、骨盤帯疼痛の有無が骨盤底筋機能の関連性については未だ議論が続いているところのようです。 多

          骨盤帯疼痛とは

          骨盤底機能とその障害

          「女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版」においても紹介されているように骨盤底筋トレーニング(pelvic floor training:PMFT)は女性の尿失禁治療の第1選択として普及してきている。 鍼治療もこのガイドラインに効能の記載があります。 PMFTは1948年にKegelによって考案されました。 参考論文:Progressive resistance exercise in the functional restoration of the perineal

          骨盤底機能とその障害

          骨盤底筋トレーニングpelvic floor muscle training:PFMT

          2016年の診療報酬改定で排尿自立指導料が新設されました。 これは、尿道カテーテル抜去後に下部尿路症状を有する入院患者に対して理学療法士または作業療法士を含めた多職種チームで排尿ケアを行うものです。 包括的な排尿ケアの計画の中で、排尿に関する動作練習と骨盤底筋トレーニングpelviec floor muscle training:PMFTが挙げられている。 参考図書:排尿自立支援加算、外来排尿自立指導料に関する手引き 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 編

          骨盤底筋トレーニングpelvic floor muscle training:PFMT

          中殿皮神経(middle cluneal nerve)とその障害

          中殿皮神経障害は殿部内側の臀部痛を引き起こすが、個人的には、仙腸関節障害を併発して起こしていると言って良いと思います。 神経の走行を理解するとわかりやすいと思いますのでそこから話し始めようかと思います。 中殿皮神経の解剖学 中殿皮神経はS1~S4の後根神経由来の純粋な感覚神経(筋肉は支配していない)です。 仙腸関節の下部を乗り越え、上後腸骨棘PSISと下後腸骨棘PIISの間にある長後仙腸靭帯をくぐる際に絞扼され、殿部内側に痛みを起こすとされています。 仙腸関節に近接する

          中殿皮神経(middle cluneal nerve)とその障害

          上殿皮神経障害superior cluneal nerve disorder

          上殿皮神経障害についてもう少し詳しく書いてみます。 2019年の腰痛診療ガイドラインには記載されていない症例ですが、非特異的腰痛の1つとして中殿筋障害や仙腸関節障害などと合わせて腰椎周辺疾患paralumbar spine diseasと称されています。 一般的なマッサージや理学療法で改善することが多く、正確な診断に至らずとも支障がないとも言われているが、画像所見に器質的な疾患(例えば腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、脊椎椎体骨折など)がみられると、そこに目を奪われ、非特

          上殿皮神経障害superior cluneal nerve disorder

          陰部神経の走行と症状

          陰部神経 pudendal nerve 陰部神経叢のもっとも下位にある神経で、S2~4仙骨神経前枝から形成され、梨状筋下孔を通過後、仙棘靱帯・仙結節靱帯の間を走行し、小坐骨孔を介して、内閉鎖筋のfaciaと仙結節靱帯からなるAlcock管に入る手前で終枝である下直腸神経、会陰神経と陰茎背神経の3枝に分岐し、会陰部の皮下や骨盤底筋・膀胱、尿道括約筋に分布する。 陰部神経の症状 症状は座位中の臀部、肛門周囲、外陰部痛。 陰部神経障害の原因 私見ではありますが、この陰部神経

          陰部神経の走行と症状

          上殿神経superior gluteal nerveとその症状

          上殿神経の走行 仙骨前面より起始し、大坐骨切痕を通過し大転子先端にある梨状窩に停止する梨状筋。 PSIS下端とこの梨状筋の上の隙間(梨状筋上孔)から上臀神経が、梨状筋下孔からは内側より陰部神経、下殿神経、後大腿皮神経、坐骨神経が伴走血管とともに走行しています。 上殿神経(L4~S1)は、中臀筋と小臀筋の間を走行しながら中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋に運動枝を出す。 ※感覚神経の上殿皮神経とは異なる。上殿皮神経についてはこちら 上殿神経の症状 座位時や歩行中に生じる上後腸

          上殿神経superior gluteal nerveとその症状

          上臀皮神経(SCN:superior cluneal nerve)

          SCNは下部胸椎及び腰椎後神経根に起始し、その経路は上内側から下外側へ斜めに走行し、腸骨稜の頭側で胸腰筋膜を貫通したのち正中線から7~8cmを5mm感覚で3本(内側枝、中間枝、外側枝)が並んで皮下脂肪層の中を通過している。 従来SCNは腸骨稜からの移植骨採取時の神経損傷を避けることで着目されていたが、近年では慢性腰痛の一因としても注目されている。 MaigneらとLuらはSCNは骨線維トンネルを通過しており、このトンネル内で公約される可能性があると結論づけた。 参考論文

          上臀皮神経(SCN:superior cluneal nerve)