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ひとりで楽しむネオサイタマの闇:ソロアドベンチャー2リプレイ【ニンジャスレイヤーTRPG】

これは前回記事「はじめてのTRPG(ソロ)でニンジャになる」の続きです。
下記、ダイハードテイルズさんの「ニンジャスレイヤーTRPGソロアドベンチャー2」のストーリーを、妄想しながらプレイした記録となっています。

時刻はまだ正午をまわったばかりだが、今日もネオサイタマの昼は暗い。空を覆うぶ厚い雲が日光を無慈悲に遮り、重金属酸性雨の注ぐ大気はじっとりとした湿り気を帯びる。年季の入ったサイバーレインコートを着た男はネオンの乱反射する路地を足早に走り抜け、オベリスクの如き威容の高層ビルディングに辿り着く。

雄雄しく屹立するミヤモト・マサシ像に一礼すると、彼は危険なエントランス回転ドアをしめやかに潜り抜け、簡単に雨を払い、高速エレベーターエリアに向けて歩き出す。

警備クローンヤクザが厳めしく彼を見咎めようとするが、襟のバッジに気が付いたのか、すぐに丁寧なオジギへと態度を変えた。「ドーモ、お疲れ様です」「アッ、ハイ、ドーモ。こちらこそ」少し慌てた声色でアイサツを返す。屈強なヤクザから丁重な対応を受けるなど、今まではありえないことだった為に、未だに慣れていないのだ。

「通っても?」「ハイ、ドーゾ。お疲れ様です」念のための確認を取り、再びエレベーターへと向かう。利用者のいないボックスへと滑り込んだ彼は、9桁の呪術的秘密コマンドを操作盤に入力する。キャバァーン!電子音と共に表示階が切り替わり、エレベーターは極秘フロアへ向けて上昇を始めた。

ポーン。「トレーニングフロアドスエ。為せば成る!」自己啓発的な電子マイコ音声が響き扉が開くと、そこにはビルのワンフロアを丸々利用した、明るく広大なヤクザスポーツジムが広がっている。一見、先進的な設備を備えたカネモチ向けジムのようにも見えるが、よく見渡すと電流バーベルや重ラバーダルマなどの危険なトレーニング器具が無造作に配置されている。ここは、ソウカイヤ福利厚生のニンジャ向けトレーニングジムなのだ。

ソウカイヤにスカウトされたニュービーニンジャはトレーニンググラウンドで過酷な新人研修を受けるが、このヤクザジムにはそれと同等の充実した機材が整備されている。研修期間終了後のソウカイニンジャは、有料ではあるが実際格安で、この施設を自由に利用することができるのだ。

【万札】11→8 (-3)

「まだ時間には余裕があるな...」ロッカールームでジュー・ウェアに着替えた彼は自動利用権販売機に通貨素子を読み込ませ、お得な「カワラ割りパック2時間コース」を購入した。機械からカワラ交換機用のトークンが何枚か吐き出されると同時に、壁掛けタイマーのうちの一つがカウントダウンを始める。「まずはウエイトから...」マシンに腰掛け、徐々に負荷を上げながら、彼はぼんやりと思考した。

前回のヤクザクエスト。達成こそしたものの、実際かなりの危険があった。型落ちのクローンヤクザ相手に、あれだけの気力の消耗。長丁場の任務であれば、精神力が持たなかっただろう。このままでは行き着く先は爆発四散だ。カラテ鍛錬は喫緊の課題といえた。


思案しながら黙々とメニューをこなす彼の背後から突然、張りのある声が響いてきた。「オッ!やってるじゃネエか。エェッ?」キアイの入ったリーゼントに金糸のニンジャ装束。「アッ!ドーモ!ソニックブーム=サン!お疲れ様です!」反射的に直角のオジギ姿勢をとり、元気よくアイサツする。そして、ある可能性に思い至った彼は、流れるようにドゲザ姿勢へと移行した。威圧的なニンジャがアイサツを返す。「ドーモ、ドゥームゴースト=サン。何だァ、急に。」

焦りを隠せないままに答える。「アッ!アッ!もしかして時間でしたか!スミマセン!」動揺する彼を見下ろし、ソニックブームは少しあきれた様子で言った。「お前ナァ、時計ぐらいちゃんと見とけ。まだ全然だろうが。」ドゥームゴーストは顔を上げる。確かに指定された時刻までは、まだかなりの時間があった。彼は胸をなでおろし、大きく息を吐いた。「お前がここにいるッていうから様子を見にきてやった、ってワケだ。ついでに言っときたいコトもあったからな。いいから、続けながら、聞きな。」ソニックブームは手近なシットアップベンチに腰を下ろすと、トレーニングを続けるように手振りで促し、話し始めた。

「テメエの前回のミッション映像を見た。結果としては及第点だが......スリケンは外す、反撃は許す、アンブッシュは受ける、しかも全部、たかだかクローンヤクザ相手にだ。」「ハイ、スイマセン。」ソニックブームはゆっくりと続ける。「カラテが無い、ってのもモチロンだが、メンタルも弱い。今もそうだったが、ヤクザならもっと堂々とするモンだ。適当なコトするんじゃネエぞ。ましてやイクサで焦りは禁物...ヘイキンテキ、ってヤツだな」

「特別にヘンなジツ持ちのニンジャはまるっきりのノーカラテも有り得るらしいが...お前のジツはオーソドックスなカトン、何らかのレッサーソウルッて判定だからな。カラテにしろナンにしろ、もう少しウマくできるはずだぜ」「ハイ、スイマセン」ドゥームゴーストは神妙な顔でバーベルを上下させながら、素直に耳を傾ける。「要はまだソウルの馴染みが悪いんだろ。地道にカラテを積みな。そうすりゃ、近いうちに何とかなるだろうぜ。お前は既に、ニンジャなんだからな。オイ、そこまででいい。カワラ、やってみな」

「ハイ、アリガトウゴザイマス!」ドゥームゴーストはウエイトを降ろし、呼吸と姿勢を整える。まずはゆっくりとした素振りからだ。肩幅よりやや広めに足を開き、腰を落とす。背筋を伸ばし、腰に両手を構え、大きく呼吸する。右腕を高く振りかぶり、正中線上をまっすぐに、股下ほどの高さまで振り下ろす。何度か、繰り返した。

「まあそんなモンだろ。良くもねえが悪くもねエ。次は割ってみろ。...オイ、ナメてんのか、その倍は積んでヤッてみろや」ソニックブームが睨みつける。いつもこれぐらいが限界です、とは言いだせず、彼はスイマセンと謝ってカワラを積み続ける。(高い...!)見られている緊張もあるのか、実際の高さ以上のプレッシャーが彼を襲った。

「いいか、肝心なのはカラテだ。お前のニンジャの肉体に、ニンジャソウルのカラテを乗せる。エネルギーを引き出せ。良くワカらねエなら、丹田のあたりからカラテを引き摺り出すのをイメージしろ。引き出したカラテを腕に、纏わせる、染み込ませる、感覚に個人差はあるが、要は籠めればいい。好きに考えな」

大きく深呼吸して腹に力を籠めた。微かではあるが、体の奥底にエネルギーの奔流のようなものを感じる。その一部を意識でつかみ取り、右腕のほうに持ってくるように想像する。カラテを詰めてゆくイメージで。ゆっくりと。肉体に満たすように。まず指先から。掌へ、手首へ、前腕へ、右腕全体へ!「イヤーッ!」カワラ目掛け、鋭いチョップを振り下ろす!

判定【カラテ】【能力値1】出目2以上で成功!
【4】 ...成功!

指先がカワラについた瞬間、違和感を感じる。まるでカワラが黒いヨーカンとなったが如く。重い抵抗こそあれど、カワラをぬるりと割り開くように、チョップが進んでゆく。それは、いつものような力任せに割り進む感触とは、明らかな違いであった。力を、カラテを籠め、腕を振りぬく。切断面こそ荒かったが、放たれたチョップは全てのカワラを、事も無げに両断した。

【カラテ】 1→2 (+1)

「そうだ、それが入り口、ニンジャのカラテだぜ。その感覚を忘れるんじゃねえぞ。いいな」彼は驚きと感動で体を震わせながら、大声で返事をした。「ハ...ハイ!アリガトウゴザイマス!」「あとは地道な鍛錬だ。まあ精進しろや」大きく背伸びをしながら、ソニックブームは立ち上がる。「まだ時間じゃネエが...。丁度イイからここで伝えンぞ。ありがたく思えよ。次のミッションだ」

ドゥームゴースト
【カラテ】2
【ニューロン】3
【ワザマエ】4
【ジツ】1(カトン・ジツLv1)
【体力】2
【精神力】3
生い立ちスキルは『○下劣なパパラッチ』。初期装備はトロ粉末。サイバネはなしだ。

ホーリースマイト・オブ・ブッダ・テンプル、その古く厳めしい伽藍は敬虔なブディストでなくてもおそれを抱くような神秘的な威圧感を放ち、高層ビル屋上で厳かに君臨していた。彼は屋上構造物の陰から様子を観察する。警報装置は最新式だがごく一般的なもの。警備のサイバーボンズはサイバネアイと聖職者用拳銃。軽装だ。まずは侵入ルートを検討する必要がある。

「警報装置をハックする手もあるが...歴史の重みだな、補修しきれてない侵入口がいくつかあるように見える。こっちのほうが安全そうだ...」辺りは既に薄暗くなっているが、サイバネアイは低照度環境に強い。より深い夜闇を待って、彼は構造物の隙間に身を潜めた。そして、ウシミツ・アワー。

判定【ワザマエ】【能力値4】出目4以上で成功!
【6】【6】【2】【3】 ...成功!

継ぎはぎに高く積み上げられた防護壁に穿たれた、無数の被弾痕。アンタイブディスト集団の重火器攻撃でも受けたのだろうか、しかしほとんどは穴を埋めて修復されている。ただし一点、おそらく内部からは死角となっているであろう高所に、未補修の箇所が残っていた。防護壁にはたいした取っ掛かりも無く、外からの侵入は不可能にも見えるが、彼はニンジャだ。隙間やへこみを見つけては器用に指をかけ、スムーズに登ってゆく。闇の中、音もなく忍び込む彼を咎めるものは誰もいない。壁をくぐると、幸運なことに、厳めしい一対のブッダウォーリア像に護られた本堂がすぐ目の前に口を開けていた。

境内の警備ボンズに注意を払いながら、彼はしめやかに匍匐前進し、本堂へと侵入する。広大な空間を温かくうすぼんやりと照らし出すのは、何百本と立てられたロウソクの炎だ。本堂奥に安置された巨大なブッダ像が厳かな光を受けて浮かび上がり、堂内に神秘的に響き渡る念仏とのマリアージュは、さながらアノヨとの境目に迷い込んだかのようだった。深層心理にわずかに残った罪悪感、先祖への恥の意識がそうさせるのか、ブッダ像の眼は何時にも増して、厳しく見えた。

畏怖に呑まれそうになった心を深呼吸で抑え、冷静に周囲を確認する。モクギョを叩き、念仏を唱えているボンズはおそらく住職だろう。脇に控えるミコー・プリエステスが一人。そしてブッダ像の前には大きな棚。安置されるは、大量のマキモノ。ここが重点目標だ。

非武装の市民が二人だけであれば、音も無く殺すのは容易い。スリケンを取り出し、構え、しかし彼は思い留まった。殺して、その後はどうするか。これだけ多くのマキモノを全て運び出すのは現実的ではない。故に目的のマキモノを選び出す必要があるのだが、彼にはマサシに関する教養も無ければ、ブディズムの知識もない。鑑定する手段を、彼は持ち合わせていないのだ。つまり、この二人にインタビューする必要がある。

基礎は教わった。要するに、メンタルを徹底的に打ち据え、恐怖で支配し、正常な判断力を奪えば良いのだ。強情ならば身体にわからせてやればよい。非力なモータル相手ならば実際簡単な仕事だ。彼は、神話上の怪物、ニンジャなのだから。

まず第一印象が肝心だ。ニンジャの半神性をアピールする。匍匐のまま背後に忍び寄り、回転ジャンプで音も無く頭上を飛び越える。彼は住職の目の前に降り立つが、軽度のトランス状態に陥っているのか、いまだ気付かれていないようだった。彼は可能な限り低く禍々しい声を意識し、アイサツを行う。「ドーモ、初めまして。ドゥームゴーストです」

「アイエエエエ!?」「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」住職とミコーは恐怖に呑まれ、悲鳴をあげる。急性NRS(ニンジャリアリティショック)症状だ。しかしまだ甘い!完全に掌握するためにはもう一押しが必要だ!両腕を大きく広げた彼は掌を上に向け、精神を集中する!「...イヤーッ!」

【精神力】3→2 (-1)
判定【ニューロン】+【ジツ】【能力値3+1=4】出目4以上で成功!
【1】【5】【2】【4】 ...成功!

両掌から超自然の火柱が上がり、ドゥームゴーストを邪悪に照らし出す!「アイエエエエ!?アイエエエエ!!」住職とミコーはひときわ高い悲鳴を上げると腰を抜かして倒れこみ、しめやかに失禁した。「俺はミヤモト・マサシの兵法書を貰いに来た。大人しく差し出せば命だけは助けてやる。急げ」ソニックブームのやり口を思い起こしながら、住職を威圧する。重篤なNRS症状によって自我が曖昧になった住職は、床を必死に這い進み、言われるがままにマキモノを取り出した。それを乱暴に奪い取る。

つつがなく任務は達成した。脱出しようと後ろを振り向くと、本堂端のデジタル賽銭箱が目に入る。豪勢なカウンターにはそれなりの金額が表示されていた。役得とばかりに歩みを進める彼の背後で住職が叫ぶ。「アイエエエ!やめてください!それだけは!!」無意味な叫びだった。今回の実入りは危険度の割には実際少ない。組織から黙認される範囲での自主的経済活動に、今さら躊躇は無いのだ。

キャバァーン!電子音が鳴り響き、万札の湧き出るアニメーションと共に口座に金が送金されてゆく。住職とミコーの絞り出すような悲鳴が聞こえてくる。賽銭箱の中身を全て吸い出すと、手早く送金先の痕跡を消した彼は、足早に本堂を去る。背後からブッダ像が咎めるように見下ろしている気がして、振り向くことができなかった。

【万札】8→18 (+10)
【DKK】0→3 (+3)
【NM:モーターロクメンタイ】【Wasshoi!判定】
【2】【3】 ...合計【5】

いつの間にか雨は上がっていた。雲の僅かな切れ目からドクロめいた満月が覗く。空気は重く湿っているが、心地の良い風が吹き抜けていた。ビルの谷間を軽やかに渡り進み、彼はトコロザワ・ピラーを目指す。

如何にマッポー極まるネオサイタマとて、世界の理は変わらずここに在る。諸行無常、盛者必衰。積み上げた非道行為のインガオホーは、いつの日か彼を爆発四散せしめるだろう。だが今はまだ、その時ではない。

【ニンジャスレイヤーTRPGソロアドベンチャー2 終わり】

ラオモト=サンからの報酬!【万札】18→28 (+10)

ドゥームゴースト=サンの活躍まとめマガジンです!

https://note.com/nishimura_8492/m/m1e49b602c43a


★感謝と感想★

まず、ニンジャスレイヤーTRPGとソロアドベンチャー製作者のモーゼズ=サン、ダイハードテイルズ=サン、ニンジャスレイヤー=サンに感謝申し上げます。とても楽しませて貰いました。ありがとうございます。

そしてタイトル画像に使わせていただいた、みんなのフォトギャラリーのryupinasさんにも感謝申し上げます。ありがとうございます。

前回のアドベンチャーでドゥームゴースト=サンについて、「底辺付近の良くないビズに手を染めている」「情報収集や張り込みのようなコツコツした努力は惜しまない」「上昇よりも現状の維持・向上指向」な印象を受けたので「邪悪行為を特別好みはしないけど避けもしない」「舎弟力高め」といった方向性で生きてもらいました。あと判定回数多かったのにスリケンを外したので、「本番に弱い(緊張しやすい、気が弱い)」イメージも付きました。

だいぶ幻覚入っていますが、個人的にはソニックブーム兄貴って従順で真面目な部下は結構気に掛けるイメージがあります。邪悪なニンジャには違いないんですけど、ソウル由来?のソニックカラテに胡坐をかかずに弱点を潰すカラテを習得してたりとカラテ鍛錬には真面目な感じ...。なのでなんか指導とか受けてほしいなという妄想から今回は始まっています。(成長フェイズ?を悪用しました。)

あと今回のソロアドベンチャー2のタイトル、「ダークカラテカルマポイントとWasshoi!判定」だったんですよね。用語の意味はあらかじめ予習してたので、DKKが溜まるとどうなるかは一応わかっていて、正直なところ、DKK溜まって欲しかったんです。でもドゥームゴーストはあんまりカラテも得意じゃないし忍者(非ニンジャ)っぽいステータスだから堅実に忍び込んでしまい...。最後にちょっと悪事を働いたけど、ニンジャスレイヤー登場はありませんでした。すまないドゥームゴースト=サン...。君にもだいぶ思い入れはあるのだけど、やはりフジキドは格別なのだ、本当にすまない...。生き延びてくれたことは間違いなくうれしいんですけどね。罪悪感。

まだソロアドベンチャーは続くようなので、順番に進めていきたいと思います。ネオサイタマの闇を駆けろ!しぶとく生き残れ!ドゥームゴースト!

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