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雪の舞踏
雪は天より贈られた手紙のように
音もなく降りてくる
中空に漂うその白い書簡たちを
少女は掌でそっと受けとめる
舞い落ちる雪の精たちが囁くたび
彼女の頬を濡らすものがある
それは涙か、それともただの溶けた雪か
誰にもわからない
町は暖の灯火に包まれ
どの家も笑い声で満たされている
けれど、少女の足元には
ただひとり分の足跡だけ
凍えた指先を隠そうともせず
彼女は踊る
風と雪が音楽を奏でる舞台で
どこまでも踊り続ける
その踊りは嬉しいものか、悲しいものか
誰も知らぬが
雪だけが彼女の心を知り
そっと肩に寄り添う
「凍えた街があたたかいのは」
少女はふいに呟く
「私が冷たいからかもしれないね」
雪は降り続ける
その舞台に終わりはない
光る瞳と涙が混じりあう夜
空と少女だけが
冬の真実を踊る