僕がブラック企業から三ヶ月で逃げ出した話(後編)

前編はこちらになります↓

僕がブラック企業から三ヶ月で逃げ出した話(前編)|コージー (note.com)


終わりの始まり
時は流れて5月、その月末3日間で支社の研修が入っていました。恐ろしい研修がここで発表されるんだなと同期で話題になっていました。相変わらず夜行バス移動、しかも今度は車内にトイレ無し!(客室乗務員さんに聞いたからマジです)扱いが敗戦国の捕虜?
初日は工場見学やら観光やらでした。
二日目に同期全員がチームに分けられてこう告げられるのです。
「君たちは5人1組になってもらい夏までにチームで600万のノルマを達成してもらう!」
浄水器1台20万円×6台分×5人分=600万円
1人当たり夏までに120万円のノルマ。
入社後に口コミを確認して覚悟していたもののいざ聞くとショックは計り知れませんでした。

洗脳
さて、入社3ヶ月の新入社員が自社製品を買ってもらうには?人脈もあるはずがありません。
そう、家族、友人、知人に営業をかけるしかありません。会社もそれを承知しているので新入社員にリストを渡すのです。
①・・・家族、友人、知人
②・・・①の人とはどういう関係性?
③・・・①の人に営業をかけて売れる可能性
…おぞましい。吐き気がする。
このリストの人たちに本気で健康になってもらいたいと信じる(ここは忘れたのですが健康効能?があるっぽい?知らんけどもう)、その為に20万円なんて安いでしょ?分割払いにしてもらえば負担は少ないでしょ?みたいな事を言われた記憶があります。いや、分割払いでも最終的な金額は変わんねーだろ!。飲み会でも、「家族に営業はしないの?頑張ってるとこ見せたら買ってもらえるかもよ?」と圧を掛けられたりしました。
ちなみに、直近の先輩方は全員一家に一台自社の浄水器を購入していました。ノルマの為なんだろうな…。

身内、友人への営業
一番辛かったのは当時飲食店をやっていた祖母に営業に行って感想を聞くと「セールストークすごく良かった!全然買うよ!」と言われた事です。
お店には不要ですし、僕のセールストークも全然稚拙だったのにそう言ってくれた。どう考えても孫が困っているから助けたいという気持ちからだったと思います。
自分がまだはっきりと効果のわかっていない信じきれていない高価な製品を身内に売ろうとしている。(この辺りは勉強不足もある?)祖母からの優しさに胸が張り裂けそうでした。

友人、知人にもどんどん連絡しました。
「浄水器のセールストークの練習がしたいので、一度聞いてくれない?」と。みんな優しかったから快く了承してくれました。
ただ、今この文面を見てみると明らかにマルチ商法の類で怪しいと思います。
営業内容としては、水道水と浄水に茶葉を入れて浄水器の水は茶葉が色濃く溶ける、水溶液を入れると浄水器の水は色が変わる?、浄水器の水でお米を炊くとふっくらする、という内容だったと思います。(この辺りはうろ覚え)

友人にも営業をかけるのですが、やはり売れません。それはそうです。みんな当時は新入社員であったり、大学生であったりお金もそんなに持っていません。真剣にアドバイスをくれたりしたものの、明らかに手応えなんてありはしません。その内に、声を掛けられる人がほとんどいなくなってきました。
友人に高価な製品を営業する心苦しさ、時間を取らせた申し訳なさ、でも、ノルマを絶対に達成させたい先輩社員達からの圧、徐々に心が蝕まれているのを感じました。
具体的に死にたいと思っていたわけではありませんが、会社の近くに歩道橋があり階段から落ちて怪我したらしばらくこの苦しみから逃れられるのかなと考えたりもしました。

そして退職へ
終わりの日は唐突に訪れました。
休日のとある日に母親に現状を愚痴っていました。すると無意識のうちに涙が溢れて来ました。それを見た母親が一言「もう仕事辞めたら?」と。新卒3ヶ月で仕事を辞める怖さがあったもののもう限界でした。
翌日に上司に退職を伝えにいきました。実家が小さな会社をやっているのですが、親が倒れたから(これは嘘)手伝わないといけないと伝えました。
そこで上司から言われ一言が、「え?逃げるの?」です。「手伝わないといけないのは本当で、入社前から決めてた事なんだよね?みんな頑張ってるのに。ここで逃げたらこれからずっと逃げ続ける事になるよ?」という事を矢継ぎ早に言われました。
ショックだったと同時に退職すると言って良かったなと思いました。

エピローグ
結局辞めてから転職活動を行い別の会社に就職出来ました。(ここが別のベクトルでブラックだった事はまた別の話)
また、一年経った時に同期が半数近く辞めたそうです。
新卒カードを失ってしまった後悔は今も引きずっていますし、得られたのは話のネタだけです。
アイドル応援が趣味でたまにライブ遠征に行くのですが、この経験から夜行バスは乗らないと固く誓ったのでした(笑)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?