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『茶箱広重』一ノ関 圭(1981, 文庫本初版2000, 小学館)

前回の『鼻紙写楽』で一ノ関圭さんワールドに魅了されたあまり、前作のこちらをAmazonで思わずポチリ。因みに写楽と同様、寡作で謎の伝説的漫画家、一ノ関圭さんのこの作品、ビッグコミック掲載時は1981年、文庫本化は何と2000年初頭。

のっけからまさかの初代広重お通夜シーン、流石のつかみで瞬時に数珠を握りしめ、お茶やお酒の用意を手伝いたくなるほど。時代は幕末、まさに文明開花の音のする中、伝統と進化との狭間で揺れる心と画風。「一立斎広重」の名跡を巡り、一番弟子重宣と弟弟子寅吉、先代のおかみさん、そして娘おかやをも巻き込んだカオスの中で生み出された風景画たち。圧巻の画力(と取材力)でそれぞれの人物の心情と感情をえぐり出す佳作。
タイトルの由来は、その昔欧米への輸出用茶箱に二代広重の花鳥風景画が貼られていた事からというのも興味深いですな。『鼻紙写楽』の回ではシロウトながら語り過ぎたので(反省)、これ以上野暮な事は申しません。浮世絵だけではなく江戸末期、夜明け時代の文化・風俗にご興味のある方、是非お読み下さい。由来ついでに、お茶好きな方にもお薦め。

三代辞世の句:「汽車よりも 早い道中双六は 目の前を飛ぶ 五十三次」

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