第16号 浮かばぬ言葉
散々ながらも愉快な一ヶ月を過ごしている。人生初のギックリ腰から始まる怒涛の健康絶不調。毎週の様に風邪をひく有り様に、我がことながら随分と呆れ返る日々だった。季節の変わり目だとかそんな話ではないくらいに体の調子を制御できずにいる。
健康面の不調は何のその、日々を縦位置で撮ることは好調そのものだ。これまでもこういう風に写真だけが好調な時はあったが、そんな時はとにかく撮りまくることに限る。
仕事の方も良いとは言えない状況が続いているが、不思議と写真だけは撮れている。これまでの電子版では狙いを定めて通い続ける取材形式での纏め方が多かったけれど、このところはどうも言葉が浮かんでこない。気になっている人物や場所はあるのだが、タイミングと体が動かずでどうにも進行しない。取材モノに関しては、どこかで「言葉」を発端としているということにようやっと気がついた。
悶々としながらも写真を撮るしかないし、撮ってしまう。今年の3月に友人から仕事用のレンズを購入するついでに譲ってもらったマニュアルレンズが大当たりなことも好調の大きな支えになっていることを感じる。そのレンズはVoigtlanderの 「ULTRON 40mm F2」で以前から特に理由もなく欲していたレンズだった。
これまでは機材に関して、価格優先で最低水準を満たしてさえいればと大きなこだわりのない私だったが、このレンズは本当にしっくりくる。素早く動くものを撮ることは中々に難しくなったが、とても楽しいレンズに出会えた。
柄にもなく使用機材の紹介などをしている。
浮かばぬ言葉を捻り出すよりも、もっと気楽にいこうとようやく思えるようになった様だ。
この縦位置写真を始めてから大きくマンネリ化していた自身の視野が一変した。
以前は迷いながら撮っていた対象にも、淀まず悩まず撮っている。そのお陰なのか近所で思いもよらない場所を見つけることができた。
天気は曇っていてもいいけれど、やはり快晴が一番だ。秋晴れの日は調子がさらに良くなる。
40mmのレンズで思っている様に撮れない対象は、今のところサーフィンくらいだろうか。数年前から撮影している波乗りさん達をもっと撮影したい。とても面白い世界が身近に広がっていた。
とにかく写真に関しては調子が良い。他者がどう思うかなんてどうでもいいと言えるほど調子に乗っている。結局は、写る・写らないなんてことは他の人は関係なく、自分自身の問題でしかないと改めて思える。
結局何が言いたいか、というのは調子が良いとしか言いようがない。言葉は浮かんでこないけれども毎日写真を撮れていることが楽しくて堪らない。
久しぶりに初心に帰って写真学生の頃に散々視聴した某番組をまた見ている。今日は裏返しの「2」が撮れた。だからどうしたという、そんなことがとても嬉しい。言葉は浮かばないし、腰はとにかく痛いけれども自分の為だけに写真を撮っている。とても愉快な日々である。
写真・文 / 錦戸 俊康
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