「スローシャッター」田所敦嗣 を読んで。
旅は一人が良いなぁ。
「スローシャッター」を読んでまず思ったのは、言い古されたアホみたいな感想でした。
僕も若い頃は、さしたる目的もなくずいぶんとあちこち一人旅をしていたんですが
齢を重ねるに連れ、仕事絡みや家人を連れての旅が多くなりまして、
久しぶりにあの時の感覚を思い出させてくれて感謝してます。
特にチリのアプー君、ポーランドの国籍不明の女性との邂逅のお話が響きました。
田所さんは、水産物の仕入れや買付のお仕事で海外に行かれていて、
仕事上で現地の方とのお付き合いをしなくてはならない
という場面が多いのですが
その中でも「一人旅」の時間を自然に持たれているところが、
素晴らしいなぁと思うのです。
大人になってくると経験値が増えるし、同行者を気遣って
リスクが少ないように旅をこなすようになる。
勢い、一人で旅を感じる時間が無くなっていく。
例えば、僕は仕事がテレビ屋なので、追加撮影ができない海外に来ているわけだから予定している画を撮るのに一直線、他にナニも考えない。
空港にはコーディネーターが迎えに来ているし、分刻みでスケジュールが組んで有り、あごあしまくら(食事 交通手段 ホテル)は全部フィックスされている。
現地の人とのお付き合いなんか
フィンランドで「なんで夕日が出ないんだ!」とか
マレーシアの崖ギリギリ超濃霧道で「いいから早く走れ!」とか
バンコクで「出国審査場に機材忘れたから取ってきて!」とか、
もうむちゃくちゃ
邂逅もへったくれもない。
でも、今考えたら「一人旅」の時間はとれたはず。
仕事も家庭のことも考ないで、未知の場所を
たった一人でほっつき歩くってのは
安全とか合理性やらからは、かけ離れた行動だけど
それで出会う人や出来事は、旅した人にしか得られない糧になる。
マイアミのプールで折り紙を一緒にした女の子
ロンドンで見事なボッタクリをしてくれた三段腹ビキニおばさん
何故か後ろ姿を撮ってくれた、エイズで家族から追い出されたイタリア人のアイツ
みんなどうしているんだろうなぁ?
伊集院静さんは「男にとって近所の煙草屋に行くのも旅である」と至言を残されています。(女性ならケーキ屋さんですかね)
仕事や家庭があっても、一人旅は出来るはず。
僕も、次回は誰も連れず英語が通じない国に行こうと思います。
田所さんには、買付に行けなくなるような出世をせずに
なるべく一人でほっつき歩いて頂いて
この先何冊も「スローシャッター」を書いてもらいたい!
と切に願う次第です。