良い曲を書くつもりが、いつのまにかライバルを意識した作曲に

タイトル画像:PCのマルチトラックの波形編集ソフトの画面

作曲という行為は、技術、知識、センス、才能など、様々な要素が作品に影響してきます。

でも、実務の現場ではさらに変なパラメータがあります。

それが「ライバルからの評価」。

今回はその話です。

いい曲とは

支持されたらきっといい曲なんだと思います。

また、多くの支持が得られなくても、ターゲットにした人に支持されればたった1人でもそれは一つの正解。

商業的な成功、芸術としての自己表現、などでも変わってきます。

だから、教育も必要なければ、センスを磨く必要もない…って事はなく、あればあったにこしたことはありません。

どんなスキル?

音楽の知識、演奏の知識、楽器の知識や経験、合奏の経験、ツールの知識や技量など、どんな経験も曲作りには活きます。

もちろん、それらがない場合にも曲は作れますが、セオリーにハマらない場合、評価を得るか得ないかの度合いはかなりギャンブルに寄ります。

ある程度その道で食べていきたい人には、こういったバックボーンはあっても困る事はないでしょう。

初期のゲーム音楽の現場

とはいえ、自分が入ったばかりの現場。まだ業界としても場合によってはプログラマーが曲を書いたりしてて、芸術系を卒業した人が入ってくる事はまだ始まったばかり。

音楽のバックボーンも、クラシック系もポップス系もいて、日頃使うツールもキーボード系、ギター系、と分かれてました。

ツールも波形を触るタイプのものは少なく、シーケンサーもステップ入力という、コンピュータがわかりやすいパラメータが並んだもの。

C3 100 80 24
D3 90 80 24
E3 90 80 24
Z0 00 80 24
C3 100 80 24
D3 90 80 24
E3 90 80 24
Z0 00 80 24

四分音符24ステップで、ゲートタイム80%で、チューリップの曲の冒頭2小節を書いてみました。

まだまだ手でこちょこちょやってた時代です。

そこには「これ」と言うスタイルも確立されておらず、カオスな状況。

しかし、だからこそ工夫

こんな感じで3音しか重ねられず、さらに音色も数種類。

ならば誰がやっても同じ…とはなりません。

例えばベース音の後にオクターブ上で裏打ちを入れてベースの音程を際立たせる、贅沢に2音を使い一つは数ステップ遅らせてリバーブっぽくしてみる、超高速連打で一つの音で和声を感じさせる、ベースは頭に一拍だけにして内声を充実させる、などなど。

普通の学問的な音楽ではあまりやらないようなことを試しては捨てて、が毎日の仕事です。

工夫するとちゃんと差がつく

そうなると成果に差が出てきます。

音楽は単純なほど、工夫をすればそれがそのまま結果になります。いい、悪い、というのは、またその下流で判断されます。

当時バズるという言葉も、リアルタイムに反応をとれるメディアも無かったので、出しても不安はいっぱい。

もっとこういう事やっておけば良かった的な思いは毎日累積してました。

いつのまにか同僚の顔

ゲームユーザーに対して音を使っているのですが、毎日悩んでいるうち、こんな状況で、同僚の作品が気になったりします。

さらに、切磋琢磨ならまだいいのですが、「これやったらバカにされる」など、つい、複雑な方向に走りがち。

単純で親しみやすかったメロディが、少し跳躍がないと素人っぽいかな、連続五度があったから避けよう、など、いらん事が次々頭に浮かぶので、どんどん変なことになっていくのです。

あの音楽理論オタクの先輩に指摘される、後輩の芸術学部卒業の子になんか指摘される…など。

どこ見てんだ、って話ですが、どうにも止まらない感情。

スキマスイッチ大橋卓弥氏も

ほぼ同じこと言ってました。同業者の顔がチラついて、自分で歌いにくいことに。

皆さん、作曲に限らず、創作活動してるとそういうことに陥りがちのようです。

乗り越えなくていいんじゃない?

この動き、悪いことばかりじゃありません。手の癖、メロディの思い込み、みたいなところで、この変な圧力が発生すると、いやいやでも曲が自分の引き出しにない形に変化していく。

それが新しい引き出しになるのです。

大いに悩めばいいと思うぞ!

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にしけん
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