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『フィールド・オブ・ドリームス』はロマン全振り映画だ

1989年アメリカ 監督:フィル・アルデン・ロビンソン 主演:ケビン・コスナー

アイオワ州の農場で、家族とのどかに暮らす36歳のレイ・キンセラは、ある日自身のトウモロコシ畑のど真ん中で不思議な声を聞く。
『それを作れば、彼はやってくる』
“それ”を野球場だと固く信じたレイは、周囲の冷たい視線を押し切り貯金を使い果たしてまで、畑を潰して野球場を作る。
野球場を作るとそこには、かつてワールドシリーズの八百長事件(ブラックソックス事件、実際の出来事)で永久追放され、すでに亡くなっているはずの“シューレス・ジョー”ことジョー・ジャクソンがユニフォーム姿で立っている。
レイはシューレス・ジョーに野球場を使わせるも、また声を聞き、導かれるようにして『隠居した作家』『年老いた町医者』を訪ねる。彼らは若い時分にメジャーリーガーへの夢を持っていた。

本作は子供の頃から何度も観たが、とにかくロマンに満ち溢れている。
アイオワの大自然と屋根のない野球場。打球音や土埃。ホットドッグ片手の観戦。ナイター用の白熱灯。
家族を持ち、平凡ながらも幸せな生活をしていた中年の主人公が、畑を野球場に変えるという奇行に走る。そして奥さんのアニーは家のことを心配しつつも、彼の行動を支えてくれる。(それと、アニーはPTAでの論破シーンが痛快)
最初に本作を観たときは、畑を潰したことに猛反対する義兄に対して「なんだコイツ」と思っていたが、レイとほぼ同年齢となった今となっては当然だと思う。
それでもこの映画に惹かれるのはなぜだろう。

答えはやはり『ロマン』としか言いようがない。
わだかまりを持ったまま死別した、レイの父親に対する想いや、夢破れ現実を生きる人々の想いを晴らすストーリーが、常識を凌駕しているからだと思う。ロマンは社会通念に遠慮しない。
映画のために作られた野球場は、まだロケ地にあるそうだ。
死ぬまでには一度訪れたい。

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