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お葬式に参列する

明日は新しく就任したチェアマンに挨拶をする予定があるから、と思って情報収集をしていたら、今まで何度か仕事でやり取りしたことのあるサーがお亡くなりになったことを知った。

サーはほんの3週間前ぐらいに日本の団体とのコラボイベントを手伝ってくれ、と私に声を掛けてきた人で、ここ最近も一緒にミーティングに参加するほど仕事で関わりがある人だった。そもそも、そのイベント自体もまだ終わっていないだけにサーの訃報は完全に寝耳に水の出来事だ。

来月にそのコラボイベントの本番もあるのに、これからどうしよう…というザワザワと、急に亡くなってしまったことへの驚きで、少しばかり涙が出る。つい、この前まで「ハルカさーん」とよく電話を掛けてきた人が、もうこの世にいないことが信じられなかったのだ。

悲しいけれど、サーのお葬式に行けるのなら行きたい。しかし、お葬式をいつやるのかも分からない。そこで、明日は普通に出勤して、もし必要なら白い服に着替えてお葬式に参加しよう思った。

次の日に職場に出勤すると、サーはやはり大きいポジションの人だったこともあり、入り口にサーへのお悔やみの言葉が書かれた垂れ幕が掛かっていた。その上、出会う講師やスタッフの人は殆ど白い服を着ている。これだけでも、自分の職場でのサーの影響力は凄いものだった事が分かる。

自分のオフィスに到着すると、同僚もみんな白いサリーを着ていた。ああ、これは完全にお悔やみモードだなぁと感じて、近くの同僚に「今日サーのお葬式はあるの?」と聞いた。すると「あるわよ。皆で車に乗ってサーの家に行くよ」と言われた。

聞く話によると、職場のほとんどの人が今日サーのお葬式に行くらしい。これは完全に見誤ってしまったなぁ…と普通のサリーで来てしまったことを後悔する。(スリランカではお葬式の時に白い服を着るため)
同僚に「それなら、白い服を着るために一旦家に戻ったほうがいいかな?」と聞くと「別にそのままでも大丈夫だよ」と言われた。周りを見ると、時々白い服を着てない人もいたので、今回のお葬式は本当に急だったのかもしれない。

午前中に同じ部署の講師の人たちと車に乗って、サーのお葬式会場に向う。にしても、お葬式に職場の人間が就業時間中に一斉に来るって中々日本では見られない光景だ。その上、職場にあるバンがフル稼働でサーの家と職場を行き来してるものだから、スリランカのお葬式文化とは中々興味深い。

お葬式会場であるサーのお家には、職場同様にサーへのお悔やみの言葉が書かれた垂れ幕がいっぱい掛かっている。銀行に大学、職場と…たぶんもっと増えていくのだろう。

家の中にも外にも、白い服を着た人が沢山いる。その間を一緒に来た講師たちとかき分けて、ベッドの上で眠っているサーに手を合わせた。
日本だと棺桶があって、その中に遺体があるのだが、スリランカの場合はベッドの上にそのまま寝かせている状態なので、血の気が引いたサーの表情もよく見える。

そんなサーの様子を見て、本当に亡くなってしまったのだと思うと、涙が出てきた。ここ最近のやり取りもあったが、それ以前から「僕は日本に行ったことがあるんだよー」と言って、よくお話してくれる人だった。こんなピヨピヨ外国人にも親切にしてくれた人だっただけに、悲しみも大きいし、こういう時に限ってサーの声を思い出して、また涙が出てきてしまう。

しかし、泣いているのは私だけで周りの講師は淡々と手を合わせていた。皆から「ドゥカ ヒトゥナーダ?(悲しくなったの?)」と聞かれたが、私からしたら、何で皆はそんなに淡々としてるのかが不思議なぐらいだ。

サーに手を合わせた後は、ネスティーを頂いた。スリランカのお葬式では家族だけにしないように、四六時中お客さんが来るらしく、お客さん用にご飯を振る舞うこともあるらしい。

にしても、まぁ一軒家にどんだけの人が集まってるんだと思うぐらい、大勢の人が来ていた。日頃から誰かといる時間の方が長いスリランカらしく、最後の時には本当に沢山の人が集まるみたいだ。

ネスティーを飲みながら、しばし周りの人とお話をする時間があった。その時も私は少しサーのことを思い出しては、泣いてしまった。そんな私を隣にいたグラフィックのミスは「彼女はセンシティブだから」と周りに説明していた。いや、ティーチャーズdayで学生からプレゼント貰って泣いてるグラフィックのミスに言われたくないわと思い、つい「センシティブではない」と言ってしまう。

一応、就業時間中にお葬式に来てることもあり、お話もそこそこに皆で職場に戻った。職場に帰ってからは至って普通の日常で、いつものように通常業務を進めていった。
そういえば、今日予定してた新しいチェアマンへの挨拶は、サーのお葬式でぶっ飛んだみたいだ。(これがスリランカスタイル)

スリランカにいると色んなことが次々に起こる。亡くなったサーのことは勿論悲しいが、サーが担当窓口となっていたコラボイベントをどうにかして進めなくてはいけないのも事実。早く涙を拭いて、次の後任サーについての相談するためにも、私は立ち上がらなくては。

それにしても、今日は本当によく雨が降るもんだ。

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