私は漫画を描いている
2019年から漫画を描いている。
漫画家になりたいわけではなかったのだけど、気がつくと漫画を描いていて、それでお金をもらうようになっていた。
漫画は楽しい。工程が多くて大変だし、一つ終わればすぐに次の締め切りが見えてきて、常に時間に追われるけれど、脱稿した時の達成感は得難いものがあるし、難しい表現はチャレンジのしがいがある。
これは飽きない。飽きる暇がない。人生がとても楽しいものになったと思う。
もし私が独身だったら、漫画を描いて食べて寝るだけの生活を送っていただろう。
きっとそれも楽しく送っていたに違いない。
時々「好きなだけ漫画を描き続けられたら」と想像してしまうこともある。
私には家族がいる。
夫と小学生の娘がいる。
ネームを考えていると
「お母さん、あーそーぼっ」
と8歳が声をかけてくる。
土日は朝8時からペン入れを始めて筆がのり始めた11時半には
「今日のお昼はどうしようかな?」
と考え始めなければいけない。
終わりが見えないまま締め切りを3日後に控えた状態で家族で海に行ったりもした。
晩御飯の後、漫画を描いていると
「お母さん、今日仕事?」
とお風呂から上がった娘がきく。
「うん、今日はちょっとお母さん頑張らないといけないかも…」
「一緒に寝たかったのに」
「ごめんね」
漫画の工程と同様に家事育児もやろうと思えばどれだけでも手間をかけられる。
でもその手間をとことん省いて、夫にも娘にも協力してもらって、私は漫画を描いている。
娘の「今」にももっと向き合いたい。
栄養バランスの取れた献立を食卓に並べたいし、宿題にも付き合って学校の勉強のわからないところをおさらいさせたい。友達と何をしたとか、今度のお休みに何をしたいとか、そんな会話をして「今」の娘の満足度を上げたいが、現実は、週2でレトルトパスタや、カレーだし、勉強に関しては夫に任せっきり。私が対応できないという理由で、習い事も二つ辞めさせてしまった。
毎日は、整頓されないまま一塊になって転がりながら「明日」に向かう。
これからどうなるかは分からない。
でも今、必死に生活を回しながらも漫画を描くこと。
それがいつか、娘が大きくなったとき、背中を押したり、さすってやれたりするかもしれない。
そのために、私は今日も胸を張って漫画を描き続ける。
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