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対岸の彼女

2人の主人公 専業主婦の小夜子と旅行事務所を経営する葵。ともに35歳で、出会った頃は『対岸』にいた2人。

お互い、相手に対して既視感を覚えます。実は同じ大学に通っていたのです。

葵の元で働き始めた小夜子は、仕事を通じて自信を取り戻し

葵は小夜子とのふれ合いの中で、高校時代の自分や無二の親友のことを思い出します。


葛藤の中で、一度は離れた二人が今一度手を取り直して、明日に向かっていこう・・・途中辛い叙述もありました。それでもなお生きていく道を示してくれるような爽やかなエンディングでした。


角田光代さんの小説を初めて読みました。 しかも第132回直木賞受賞作品ということで、じっくり読み進めていきました。

石田ゆり子さんのエッセイ『Lily』の中に、『誰もの心の中に住む狂気の一面、闇と光。何度、彼女の描く世界の人物を演じたいと思ったかわかりません』と、角田さんの小説についての記述がありました。 

同じく角田さんの小説に『八日目の蝉』があり、ドラマ、映画ともに観て衝撃を受けました。まさにゆり子さんが仰る世界がそこにあったような気がします。


『自分にできることは何か?できないことは何か?できないことは圧倒的に多かった。私ができないのなら、できる人に頼めばいい。彼らの出来ないことで私にできることだってあるはずなのだから』(p293)

対岸の彼女

会社を経営する葵の苦悩に、寄り添うような気持ちで読ませて頂きました。


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