「三十一文(みそひとも)字(じ)(短歌)で綴る世界見て歩き」Ⅴ.カナダ紀行(2002.3.3~6)


・バンクーバー~カルガリー(2002.3.3)
○成田よりバンクーバーまで7時間エアーカナダの機中にくつろぐ
○ゆったりの大きめシートに空席も其処ここに見ゆ快適な機内
○メイプルのリーフブローチ シルバーのタイピンを買う機内のつれづれ
○春さむのバンクーバーに降り立つもすぐに乗り換えカルガリーへ
○カナデアンロッキー山麓カルガリーは冬季オリンピックでその名知るのみ
○氷雨降るオリンピックの競技場をバスは一周バンフへ向かう

バンフ(2002.3.4)
○ロッキーの山懐に抱かれるボウ河沿いのリゾートバンフ
○岩山のカスケード山とランドル山を前にすバンフは著名な保養地
○ゴンドラでサルファー山に登り行き雪のロッキー四囲を眺めり
○昨日より3泊するは五つ星のバンフスプリングスホテルと言へる
○イギリスの古城思はす石造の豪華ホテルは山を背にたつ
○赤や黄のヤッケ姿でスキー担ぎ若者闊歩すバンフの街中
○カモシカのステーキを食ぶ街中の変哲もなきレストランにて
○日本人が数多出入りす土産屋は大橋巨泉の店と記せり
○冬物のバーゲンセールする店でセーター2枚記念に買いたり
○七色に煌めく貝のアクセサリーはアンモナイトとう古生代の化石なりしと
○バンフにてガイドし呉れるお嬢さん名古屋の人で仕事は楽しと
○サルファー山のゴンドラで席隣り合うガイドの青年久留米の人と

・ロッキー(2002.3.4)
○ロッキーの山脈やまなみいま雪冠り冬の眠りのままの三月
○ノコギリの歯のごとき山続きしを見つつドライブ氷河ハイウエー
○山肌に白雪散らし聳え立つキャッスル山は青空を背に
○エメラルド色の湖とうルイーズ湖は雪に覆われ静謐の世界
○湖畔にはシャトー・レイク・ルイーズとう夢のごとせるしホテルあり
○弥生のを浴びて煌めき建つものはルイーズ湖上の氷の宮殿
○ボウ湖畔のロッジは灯もなくされいて雪の吹き積む裏口の脇
○ボウ河の源なりとうボウ湖では雪に膝埋め湖上を歩く
○夏になれば辺りは野草の花に満ち散策の人絶えるなきとう
○モンローの「帰らざる河」の舞台とうボウ滝凍りて小さくせせらぐ

・ビクトリア(2002.3.6)
○カルガリー バンクーバー に戻り来て入り江を超えてビクトリアに着く
○イギリスの城を模せしかエムプレスとう豪華ホテルが今宵の宿り
○町並みは整然として手入れよく清潔に見ゆビクトリアの街
○入念の都市計画で造らるか美しけれど惹かれぬこの町
○自然をば克服したる力をば見せしごと町われは疲れり
○ビクトリア州議事堂を見学すライトアップで照らされし夜に
○満開の桜に似し木を見つけたり海岸どうりの朝の散歩で
淡々あわあわとしたるピンクの花優しひと時見上げ心安らぐ
○碑の有りぬカナダ大陸横断の道路の起点は此処なりしとう

・ブチャートガーデン(2002.3.6)
○セメントの採掘場跡を整備して庭園になすブチャートガーデン
○セメントの会社のオーナー夫人とうブチャートが作りし庭とう
○樹木茂り石垣古びてバラ園はしっくり落ち着く百年を経て
○明治期の日本の庭も有りたるも手入れ届かず荒れ寂びて見ゆ
○庭内のレストランにてイギリス式「午後のお茶」してしばし寛ぐ
○様々な一口サイズのサンドイッチやクッキーを紅茶に添えて

・バンクーバー(2002.3.7~8)
○エリザベス女王の名を持つ公園は手入れ届きて花々は
○バンクーバーは木材の積出港とカナダ太平洋鉄道cpr起点の町とぞ
○バンクーバーの地名の由来は航路開くジャック・バンクーバー船長によると
○下町のガスタウンの名の由来は港の酒場の主人あるじガスからと
○溜まり来し疲れの故かバスに眠るガイドの話夢幻うつつに聞きつつ
○頭痛して気分悪しまま夕食をパスして早寝す旅の最後は

あとがき(2024.10)
・平成14年3月、友人を誘いカナダに出かけた。旅行社の広告「春のカナダ」の言葉につられて申し込んだが早過ぎてロッキーまだ冬、幸いにも天候に恵まれて寒さはたいしたことないが白銀の世界、スキー客が闊歩していた。思惑は外れたが大小の岩山が雪をまとって連なる姿は美しく心に残った。
・私にとって旅の醍醐味は自然と歴史と人間の営みがミックスして醸すものに触れる感動、もう一つは「百聞は一見に如かず」という言葉があるが、自分の中に培って来た活字による知識が原点や本物に触れたときに感じる、突如知識に血が通うような心地は何物にも代えがたい大きな喜びである。これは今回、少々物足りなかったが、自然が持つ美しさ雄大さ力強さは十分満喫できた。
・「百聞は一見に如かず」ではボウ川が心に残った。若い頃に「帰らざる河」という映画を見た。ガイドの説明で、このボウ滝で撮影したと聞いたときに、マリリンモンローの眠そうな歌声♪ノウリターン♪のメロディーと共に川船に繋いだロープに縋りながら主人公が激流を下るシーンが甦った。あの雪解け水の川はどんなに冷たかったか、次の停泊地まで何時間も冷たい激流に身を曝すドラマの主人公はどれほどの体力の持ち主か、また名前も忘れたが演じた俳優もどんなに大変だったか、半世紀も経てからその地を訪れた私には見落としていた種々なことが理解できてよかった。
・今回ほど体が辛かった旅は珍しい。日頃から仕事と入退院を繰返す母の介護の二足のワラジに疲れ果てていた私は、行く前から体調最悪で、途中でダウンしないか危惧しながら参加した。でもパーッとストレスを発散できる魅力も断ち難くて‥。やはり参加してよかった。      《了》2024.10.27

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