「三十一文(みそひとも)字(じ)(短歌)で綴る世界見て歩き」Ⅳ.東欧紀行(2001.12.3~11)


・成田~ドゴール空港(2001.12.3.~4)
○午後の陽を浴びて福岡を出て来しに成田を発つは夜更けの10時
○成田発ち12時間の空の旅 朝星瞬くパリ・ドゴール空港に着く
○免税店すべて灯を消す空港のコーヒーショップで時をるパリ
○寝不足と疲れで食欲おきぬ胃にホットコーヒー沁み渡りゆく
○待ちに待ち6時間過ぎようやくにプラハに向けてパリを発ちたり

・プラハ(2001.12.4)
○パリ発ちて1時間半チェコ プラハ ルズイニエ空港に着く正午
○唯一とうチェコの国際空港は寂れ荒れたる印象しきり
○福岡を発ちて丁度一昼夜眠気と疲労ピークに達する
○小雨降る丘の上に建つプラハ城の地下レストランで昼食をとる
○宮殿の庭より見下ろす旧市街の家並みも川も小雨に煙る
○王宮の下に広がる旧市街は世界遺産の一つなりしと
○キリストの十二人使徒がゆっくりと現れ消える時計見つめる
○この町の何処かに文豪℉・カフカの旧居あるとう記憶のよぎる
○ザビエルの像もあるとうカレル橋 欄干に建つ三十聖人像の中
○スメタナの曲思いつつモルダウの川面を眺むカレル橋より
○ボヘミアン・グラス工場を見学し記念にルビーの十字架を買う
○チェコビールのグラスを前にす夕食も疲れのしるく食欲もなし
○今日明日のプラハの宿はホテルDUOデュオ 売店のぞき人形求む
○ほの暗き灯りに沈む街の様子さま目抜き通りの華やぎ見えず

・ドレスデン ・マイセン(2001.12.5)
○プラハからドレスデンへのバスの旅 雪山を超え国境を越え
○大型のバスがスリップ ヒヤリとす牡丹雪舞う峠道で
○どこまでも左右に白き森続き樹氷を堪能4時間の旅
○有田にて名前なじみのドレスデンはかくなる街かオペラ座の前
○欧州の中都市の一つドレスデン 古都のたたずまいを色濃く残す
○楽しみの「有田の部屋」の見学は王宮修復中で叶わず
○ツインガー宮殿第二次大戦で瓦礫となるを復元せしとぞ
○城壁の「君主の行列」とう壁画 マイセン陶磁のタイルで造ると
○エルベ川に注ぐ小川に沿いて建つマイセン磁器の工場見学
○有田焼の高級品に比べればキズ歪み見ゆマイセン陶磁器
○有田焼のほぼ百倍の値札見てただ驚きぬ何ゆえにとぞ
○マイセンの陶磁器高値の理由わけ問えば胸反らし言うハンドメイドと
○マイセンはドイツ国立工場で従業員は公務員とぞ

・ウイーン
○クリスマス近ずくウイーンの繁華街に星と雪との電飾溢れる
○小雪舞うシェーンブルグ宮殿でシュトラウス聴くウイーンの一夜
○今日明日の宿はラジソンSASパレス リンクに面する貴族の館
○朝もやの街路樹透かしトラム行く向かいは公園窓辺に寄れば
○同行の友が迷いて戻らぬを捜し歩けりケルントナー通り
○オペラ座の天井桟敷で「サロメ」観るも席わろくして歌姫見えず
○上りくるの素晴らしさに酔い痴れてひたすらに聞く美しき楽を
・ウイーンの森(2001.12.6)
○牡丹雪静かに落ちるウイーンの森に風渡る音遠くに聞けり
○「うたかたの恋」の舞台の山荘は僧院となりて森に静まる
○皇太子ルドルフの写真や遺品をば今も飾ざれるマイヤーリンク
○永平寺を包む空気に似かようはウイーンの森のシトー派僧院(ハイリンゲンクロイツ僧院)
○絶え間なく落ち来る雪を一瞬の風が吹き上ぐ僧院の庭
山峡やまかいに白く静まるレストランでウイーンターキー料理を食ぶ

・ブタベスト(2001.12.8~10)
○ウイーンよりヘレンド経由ブタベストへバスはひたすら田舎道行く
○道の左右さう取り入れ済みし畑や野がどこまでも続くハンガリー平原
○今宵より三夜はグランドハンガリヤ目抜き通りのホテルに泊まる
○ブダの街の王宮や教会を見学し展望台よりペストの街見る
○数十年荒れたるままの王宮は近年ようやく修復始む
○ハンガリーの動乱に話し及ぼすとガイドは激すか言葉詰まらす
○ブタベストはドナウ挟みて両岸のブタとベストの街で成り立つ
○源をドイツに発すドナウ河八つの国経て黒海に注ぐと
○青空を映すごとくに河面り細さ波も見せずドナウ流るる
○河沿いの白き尖塔 回廊をもつ展望台は漁夫の砦とう
○ドナウ河に架かるし橋クサリ橋ブタとベストを結ぶ大橋
○王宮の下なる町で食料品の店を見つけてキャビア買いたり
・ドナウベント(2001.12.9)
○セルビアの文化を色濃く残すとうセンテンドレの街を散策
○黒髪に黒きの人が行き交えり東洋の血を遺すかマジャール
○起伏する石畳道を上り行き丘より見下ろすドナウの流れ
○土産屋のひしめく小路を歩きつつ買い物するは旅の楽しみ
○ハンガリアンレースで縁どる食卓布や刺繡のコースターをまとめ買いする
○腕組みて不振顔せる女主人 たちまち笑顔に変わる応対

あとがき(2024.10)
・平成13年暮、ウイーンに行く必要ができ、ついでに前から興味を持つ欧州の焼物の聖地マイセンやドレスデンも見てこようと、欲張った旅の記録である。
・ドレスデンは思いが叶わず残念だったが、マイセンやヘレンドでは有田焼の素晴らしさを再認識させられ、日本人として誇らしく思った。
・今回の旅は計らずも旧共産圏を廻った訳だが全体的印象は暗く荒れていた。しかし長年にわたる旧ソビエトの圧政から解放され、さあ今からという気概のようなものは随所に感じられた。しかしプラハは翌年の大水害で、私も歩いた世界遺産の旧市街が壊滅したと聞き胸を痛めている。 (終了)

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