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#小説
カクウホンヤメグリ3 ヒカリとカゼとユメ
その書店があるのは、島だった。といっても人口は一万人ほど。島としては大きな方だ。本土と行き来するフェリーが止まる船着き場、そこから十分ほど歩いたところに書店、《ヒカリとカゼとユメ》はあった。
昨年オープンしたばかりのこの店、名前の由来は中島敦の小説、『光と風と夢』だ。
「主人公のスティーヴンソンが南の島に移住したことになぞらえて、この名前にしました。この島は、南の島ってほど南にはありません
カクウホンヤメグリ1 ブックカフェ センキ堂
どこにでもあるような、昔ながらの住宅街。ふと通り過ぎてしまいそうなその片隅に、《ブックカフェ センキ堂》はある。もともとは三十年以上続いた魔法書専門古書店《仙鬼堂》だったが、オーナーの高井登美次さんが高齢のため、その歴史に幕を下ろすことになった。
古びた外観はそのままに、店内はカフェスタイルに大改装。木目を生かした壁とテラコッタタイルを敷いた床がかわいらしい、落ち着いたデザインに生まれ変わる
カクウホンヤメグリ2 薄明書房
駅のほど近く、メイン通りから細い路地へ一本入ると雑居ビルが立ち並んでいる。その中の一棟、薄暗い二階に本屋がある。《薄明書房》の目印は、《Twilight》と書かれた小さな木の看板のみ。金曜日と土曜日の夜の数時間という、短いだけ間営業しているという薄明書房の店長は、オブライエン桜子ジェニファーさんという。
店内は、ヴィクトリアン調のインテリアで統一され、店長の桜子さんもロングスカートのクラシッ